第398話【プロフェッサーゼロス3】

<<????視点>>


「カーチス、モーリスの件はどうなったのだ?」


「はっ、前回の襲撃後、内通者に対する摘発が厳しくなり、こちらから連絡が取れない状況になっております。


また、軍におきましても前回の戦闘における被害が大きく、立て直しに尽力させているところです。」


「はー、まったく。

あれだけの戦力を注ぎ込んだのに、失ったものの方が甚大だとわな。


わしが授けた戦術には問題無かったはずじゃ。

それにマサルの奴もまんまと罠に嵌めてやったのに。


それでも駄目だったのは、カーチス、お前の指揮に問題があったのではなかったのか!!!」


「はっ、か、返す言葉もございません。」


いつものふてぶてしい顔も流石に今日は色を失くしておるわ。


「まあ良いわ。今度はわしがじきじきに指揮をとってくれよう。」


「閣下自らでございますか!」


「そうじゃ、何か問題があるか?」


「そ、そんな、問題などと…」


ふふふ、カーチスの奴、怯えておるのお。


肩が小刻みに震えておるわ。


「し、しかし、い、いや「何か問題があるのかと聞いておる!」も、申し訳ありません。」


もう震えを隠そうともしておらんわ。


「戦術が決まり次第、連絡する。


今度は失敗を許さぬぞ。

しっかり鍛えておけ!」


「はっ、はーー。」


「下がれ!」


バタバタバタ…


ガチャ


カーチスの奴、昔を思い出したのかの。


もう1度地獄を見せてやろうか。ハハハハーー。



<<カーチス視点>>


なんてことだ。俺はなんてことをしてしまったのだ。


まさか『プロフェッサーゼロス』を復活させてしまうとは。


プロフェッサーゼロス。


それは今からさかのぼること30年前。

俺がようやく100人隊長に昇格した頃の話だ。


人並み外れた体格に恵まれた俺は学生時代から愚連隊と称して、いっぱしの大将気取りでいた。


何度も警察の包囲網を突破するような荒れた生活を送っていたのだが、ある日とうとう軍に捕まってしまう。


軍人と言えども、俺を取り押さえるのは至難の業であり、何10人という軍人を前に無双したの俺だが、ひとりの男に瞬殺されてしまった。


俺を瞬殺した男、外見は優男でとても強くは見えない。

しかし細面で金縁の細い眼鏡をかけたその男の顔を見た瞬間、俺を戦慄が襲った。


『殺される!』そう思った俺は反転して一直線に逃げようとする。


そして後ろを向いたところで記憶は途絶えた。


そして気が付いた独房の中で、檻の前から優し気な眼差しを向けるその男に再会するのであった。


暴力とは無縁の優しい顔をしているにも関わらずこの俺に戦慄を感じさせる男。


笑っている目に狂気を感じるのは俺ほどの強者だけではないだろうか。


それが俺とゼロス隊長の出会いであった。


『プロフェッサーゼロス』


これは後に知ったことだが、彼は、この世界の最高学府を断トツの首席卒業、国家A級採用試験を軽々と突破した彼は、学生時代には既に”プロフェッサー”の称号を与えられあらゆる学会で異彩を放つ存在であったという。


特に時空に関する理論を確立したと言われるほど時空論に関する第一人者であったのだ。


そんな彼が全ての学会から姿を消し、国軍に席を移したのはその1年後のこと。


その理由を知る者は誰もいない、いや上層部では知っている者もいるかもしれないが、緘口令でも敷かれているかのように、誰の口端にも上がらないのだった。


軍に参加した彼は特別将校という幹部候補生として登用されたにもかかわらず、いかなる小隊の指揮を執ることなく、その行動は軍内部でもシークレットとなっていた。


そしてカーチスが入隊する少し前、新設されたばかりの新しい特別小隊の隊長としてゼロスは皆の前に現れたのだ。


そして半年の新人訓練を優秀すぎる成績でクリアしたカーチスはゼロスの指揮する特別小隊へと配属されたのだった。


意気揚々と自らの配属先となった特別小隊へと入ったカーチスはその後、自らの入隊を心底後悔するのであった。






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時間軸がややこしいので補足です


カーチスの回想にある30年前は、ラスク星時間でいうところの60億年くらいに相当します。


この世界は時間軸が無数にあって自在に時間軸を渡ることが出来るため、時間軸はあって無いようなものですが、一応基本時間軸となるモノが存在していて、通常はその時間軸を使用して生活しているようです。


異世界管理局の職員ではないカーチスはこの基本時間軸で30年と言っています。


異世界管理局の職員は、各それぞれが管理する世界の時間軸を使うのが一般的です。(管理者が同じだと時間軸も同じにするのが普通。)


ちなみに地球時間では40億年に相当します。


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