第396話【プロフェッサーゼロス1】
<<マサル視点>>
反省の多い戦いだった。
400名を超える戦力を持ちながら敵の仕掛けた作戦に翻弄され、危うくモーリス教授とユウキを奪還されるところだった。
スマット星とワットル星の戦いでは敵戦力を大きく削いだ筈だが、未だ敵の全体戦力が見えない以上、安心はできない。
こちらに大きな被害が出なかったことが唯一の救いか。
しかし、今回はイリヤと指令チームに助けられた。
まさかイリヤが連れてきた奥様方があれ程の活躍を見せるとは予想もつかなかったな。
陽動にはまんまと引っかかってしまったが、それを加味してもあの的確な指令機能は合格点だろう。
そして遊撃隊として配置されていたウルティムさん。
偶然居合わせたって言ってたけど、あのタイミングで偶然独房にいたとは思えない。
恐らく、最悪の状況を想定して準備していたに違いない。
そうでなければあれだけの武闘派3人を連れているはずが無いだろう。
まったく、頼りになるメンバーだな。
<<イリヤ視点>>
「さあ反省会をするわよ。」
アリスレートさん、イスレムさん、ウルティムさんの3人とテーブルを囲んでいるの。
机の上には美味しそうなケーキが積まれたアフタヌーンティスタンドと、色鮮やかなお皿やカトラリーが3人分。
真ん中に置かれた華やかな花瓶の花を見ただけだったら、優雅なお茶会にしか見えないわね。
でもここはお屋敷の庭でも何でもなくって、指令室の会議室だから、ちょっと風情に欠けるわね。ってそんなことを言ってる場合じゃないわ。
私達4人は反省会をしているのよ。
決して優雅にお茶会をしているんじゃないのよ。
侍女のマリアが勝手に仕度しちゃったんだからね。
「あら、このお茶美味しいわ。どこの産かしらね。」
「イリヤさん、このケーキも美味しいわ。」
「このお皿、ビーグリー工房の新作じゃない!」
3人共すっかりお茶モードだわ。
皆さん、今は反省会の最中ですよ。
少しは…
あら、このケーキほんとに美味しいわね。
結局、反省会という名のお茶会は気の置けない女4人の姦しい時間となりそうです。
2時間程お茶会を楽しんだ頃、イスレムさんが唐突に話し出しました。
「イリヤ様、今回の作戦を振り返ってみましたが、やはり私達に侮りがあったようです。
わたしの判断ミスで、隊全体を窮地に追いやったことお詫びします。
そしてウルティム様、ありがとうございました。
ウルティム様のお陰で窮地を脱することが出来ました。」
「あら、あなたの責任じゃないわよ。イスレムさん。」
「そうよ、私達全員の慢心がこの結果になったの。
もっと相手のことを知らなきゃいけないわね。」
「それと実動班の事もね。
もっとコミュニケーションをとって考え方を共有化しなきゃね。」
「そうだ、お花見をしません!
ほら、もうそろそろ季節ですよね。」
「そうね、バタバタしてて忘れてたわ。
家でセラフちゃんが騒いでいるかも。」
「そうでしたね、セラフさんはお花見大好きですものね。」
イスレムさんはお茶会で楽しそうに振る舞っていたのですけど、やっぱり気にしてたのね。
でも流石はウルティムさん、上手く彼女をフォローして場を和ませてくれるわ。
アリスレートさんのアシストも絶妙よね。
この雰囲気を壊さない内に手を打たなきゃ。
『お兄ちゃん、セラフちゃんはお花見の準備してる?』
『イリヤか、もういつでも出来るようにあの桜の下にスタンバってるはずだよ。』
お兄ちゃんとセラフちゃんが初めて出会った旧庁舎の桜の木。
今は庁舎自体が移転して公園になっているその場所に咲いているこの桜の木は300年経った今も綺麗な花を咲かしてくれている。
「さあ、皆さん。
セラフちゃんがいつも通り花見の仕度を済ませているみたいよ。
指令チーム全員と、実動班リーダー全員で親睦の花見をしましょうよ」
「ナイスアイデアよイリヤさん。
さあ、急いで連絡よ。」
「「はい!」」
こうして唐突に決まった親睦会に突入したのでした。
<<ユウコ視点>>
マサルさんを連れて桜の木の下にいます。
イリヤさんから連絡が来た時、ちょうどマサルさんと今後の体制について話してたところだったのよね。
深刻そうなマサルさんの顔を見るのってなかなか無いから、ちょうど良いタイミングだったわ。
そばに居たジーク室長とジオンさんに後をお願いして、直ぐに連れて行ったわけ。
あっちでもセラフさんに無理矢理連れ出されたランスさんがいて、2人ともリザベートさんに連れられて、ため息を吐きながら盃を交わしているわ。
わたしは当然イリヤさんと合流して、親睦会に絶賛参加中よ。
本当に桜の木があるのね。
こっちに来て初めての花見よ。
今日くらいは存分に楽しまなくちゃね。
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