第392話【モーリス教授奪還作戦7】

<<イリヤ視点>>


ユウコさんったら、あんなところでお父様の娘なんて言わなくてもいいじゃないの。

それに神認定されているなんて。


あれからリーダーの皆んなに質問攻めに遇って大変だったんだからね。


そうでなくても魔法審査の時にやり過ぎちゃったのを見ていた人がリーダーの中にいて、さんざん質問されていたのに。


それぞれのチームに戻った後も、ラスク星出身者にわたしのことを聞いた人もいて、ますます大変なことになったのよね。


全くもう!


と、愚痴はこのくらいにして、これは大変なことになってるわね。


お父様はわたしがいてちょっとビックリしてたけど、力になれるように頑張らなきゃね。


その晩、夕食後お父様とユウコさんに詳細を確認したの。


思っていたよりもかなり深刻な状況ね。指令担当として警備班や調査班からの情報を収集分析して早く解決に導かなきゃって再認識したわ。


全員の顔合わせも兼ねた決起集会を終えた翌日、早速活動開始となった。


わたしが担当する全体指令チームは女の子を中心とした30名からなる頭脳派チーム。


8組の実動班から集まる情報を整理・分析して実動班に的確な指示を出していく司令塔の役割ね。


もちろん総責任者のお父様の考えを取り込んで、その遂行を最優先に作戦を練っていく必要があるわ。


このチームは魔法力よりも知力とコミュニケーション、そして包容力が必要。


現場を使うのではなく、飼い慣らさなきゃ。相手の意見を尊重しながらも上手くこちらの思惑に嵌めていくなんて、包容力のある女性ならではの仕事じゃない。


だから、この全体指令チームは年齢層も比較的高い肝っ玉お母さんが中心よ。


その中でもわたしがラスク星から選抜した3人のお母さん達を紹介するわね。


1人目はアリスレートさん。星都の政務庁舎内にある食堂のいわゆる”おばちゃん”ね。


ラスク星各地から集まった癖の強い政務官達の胃袋をがっちりと掴みつつ食堂のコストをこれでもかって最小限に抑えている戦略的カリスマ調理人なの。


各実動チームとの接点として頑張ってもらうわ。



2人目はイスレムさん。ランスお兄様の秘書官として緻密なスケジュール調整をこなす才女よ。


もう秘書官になって30年は立つかしらね。あまりに真面目過ぎて婚期を逃しちゃってからは、ますます職務に邁進してしまっているレディね。


今回のために、お兄様から掻っ攫ってきたわ。


『マリス様の頼みじゃしようがない』ってお兄様涙目だったけどね。


イスレムさんには実動チームの全体的な配置と行動シュミレーションをお願いするわ。



3人目はウルティムさん。トカーイ自治区の元自治官夫人。

つまり、旧トカーイ帝国時代で言えば皇太后になるのかな。


わたしのお茶友達なんだけど、このウルティムさん、企画させたら天下一品なの。


とにかくイベント大好きで、どんなイベントでも彼女に企画させれば人選から設営、司会進行迄なんでもござれ。


とにかく人心掌握と行動力が素晴らしいわ。


本当は実動部隊にって考えてたんだけど、イスレムさんから『指令チームにもアクティブな人は必要よ』って助言をもらったから、臨機応変に動ける遊撃隊として指令チームに入ってもらったの。


この3人がそれぞれ8人づつ率いて各役割を受け持ってもらうつもり。


わたしは上層部との調整と全体指揮が職務かな。





わたし達4人が並んで座る席の前には大型スクリーンを中心に20個のモニタが並んでいて、そこには各実動部隊の様子と、ユウキ、モールス教授が収監されているそれぞれの牢が映っている。


その他にもこの異世界管理局の俯瞰映像や、牢迄の廊下など、あらゆる場所に仕掛けられたカメラの映像が映し出されているのよ。


こちらの操作で自在に映像を映す場所を変更出来る優れもの。


モニタを見ていると大型スクリーンにワースド星を調査している、第3実動班が映し出されたの。


向こうから連絡が入ると大型スクリーンに映像が切り替わるみたいね。


「指令部、司令部、応答願います。」


「はい、こちら指令チーム、応答どうぞ。」


第3実動班は、ワースド星に召喚されたレイトさんね。たしかアメリカ出身の元警察官だったとか言ってたっけ。


「司令部、こちら第3実動班、レイトです。ただいまモーリス教授とユウキが拘束された現場周辺を捜索中。


そちらから指示のあった地下室の痕跡を探索中に遺留品と思われるいくつかの物品を確保。そちらに転送しました。


届いておりますでしょうか?どうぞ。」


「こちら司令チーム、イスレム。計7点確かに受け取りました。直ちに検証に掛かります。どうぞ。」


「こちらレイト。よろしくっ。通話終了。」


「ウルティムさん、これ鑑識に回して。それとこの品については所持者の特定もお願いね。」


「了解でーっす。さあ、皆んな動くわよ。イリヤさーーーん、行ってくるわねーー。」


自分のチームの内3人を率いて颯爽と事務所を出ていったウルティムさん。


ほんと行動力があるんだから。


「イリヤ嬢、さっき指示を出してた第2実動班のマイクさんから連絡がきたよ。

時空間波動測定機に変化があったって。場所が特定できそうだってんで、そっちに向かうように指示しといたよ。」


「アリスレートさん、ありがとね。助かるわ。

それでどこに向かったって?」


「ワースド星から1光年ほど離れたスマット星だね。あそこはまだ開発途中だからマサル様から要注意地域だって指定されていたよね。注意して捜査するように言っといたよ。」


「そうね、まだ開発されていない世界は敵のアジトが存在する可能性が多いわ。

他に1班向かわせた方が良いんじゃない。」


「それなら第4班を向かわせましょう。アリスレートさん連絡お願い。」


「あいよイスレムさん。第4実動班すまないけど、スマット星に向かった第2班の援護に回ってくれるかい。」


「第4実動班、ムラマサ。承知した。スマット星に向かいマイク達に合流する。」


「敵のアジトがあるかもしれないからね。十分注意していくんだよ。」


「承知。通話終了。」


スマット星か、大事が起こらなきゃいいんだけどなあ。



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