第391話【モーリス教授奪還作戦6】

<<マサル視点>>


「はーーー、やっぱりいるじゃないか。」


壇上から見下ろした先には、満面の笑顔で”したり顔”のイリヤの顔があったのだ。


どうもさっき廊下ですれ違ったマリスさんの楽しそうな顔に嫌な気がしてたんだよな。


「はーい、皆さーん、壇上にちゅうもーーーく!


今回の事案における全体責任者のマサルさんでーーす。知ってる人もたくさんいると思うけど、あなた達の上司にあたる人なのでよーーく覚えておいてねーー。


じゃあ、マサルさん、あいさつをお願い。」


「えーー、今回の事案を担当します、異世界管理局のマサルです。」


「「「「パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!」」」」


「えーー、ここに集まってくれた皆さんは審査をクリアした優秀な人達ばかりだと聞いています。


今回の事案は、皆さんが『神の国』と呼ぶこの世界で発生していますが、実際の被害は各皆さんの世界で発生しているのです。


判明しているだけで既に3件の誘拐が確認されており、このまま放っておけば皆さんを含めた各世界の人達の犠牲がますます増えることでしょう。


ここにいる精鋭の皆さんでこの事案を早急に解決し、安心して生活できる世界を取り戻しましょう。」



「「「「パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!」」」」



「はい、マサルさん、ありがとうございました。


それでは、今回招集されたメンバーから選出された8名のリーダーと全体指令リーダー、前に出てきて下さい。」


「「「はいっ!」」」


名前を呼ばれた9人が前に出てくる。そして俺に一礼した後、それぞれのメンバーの前に立った。


「では、代表して全体指令リーダーのイリヤさん、皆さんに激励をお願いします。」


司会のユウコさんとイリヤが目を合わせて笑顔でしたり顔をこちらに向けてきた。


くそっ、図りやがったな。


「皆さん、今回全体指令リーダーに指名された、ラスク星のイリヤです。

わたし達は800名以上の中から選ばれました。


今回の事案については、全体講習で説明を受けたばかりですが、こんな理不尽な犯罪行為を許すことは出来ません。


先程マサル様からもお言葉を頂きましたが、わたし達の住む世界を守るためにも一生懸命職務を全うしましょう。


頑張るぞーーーー!」


「「「「おーーーーーーー!!!」」」」


イリヤめ、全然乗り気じゃねーかよ。


「はーい、イリヤさん、決起集会に喝を入れる挨拶、ありがとうございました。


では、これで決起集会は終わります。


各チームはそれぞれ与えられた部屋に戻って資料を読みながら待機願います。


各リーダーとイリヤさんはわたしについて来て下さい。


マサルさん、お疲れ様、さあ行きましょ。」


何だか釈然としないが、俺はイリヤと8人のリーダー達を引き連れてに別の会議室に向かったのだ。




「さて、ユウコさんから話しは聞いていると思うが、今回皆んなには、我々異世界人を誘拐し禁忌の術を行おうとする奴らを捕まえるために集まってもらったわけだが、実はもう一つ目的がある。


これは他のメンバーには言わないで頂きたいのだが、君達を守る為でもあるのだ。


ここ「神の国」では基本的に魔法は使われない。魔法は遠い昔に廃れて今は魔道具が非常に発達しているのだ。


これは、魔法よりも魔道具の方が管理し易く、秩序を保ちやすくなるためだ。


では異世界で魔法が使われるのはなぜか?


有用な魔道具を広く与えてしまった場合、誰もがその魔道具の恩恵を受けてしまい、文明を創ったり、文化を広げる妨げになってしまうため、あえて限られた者達に魔法を授け、文化向上の妨げにならないレベルで効率化を図るためであるんだ。


だから召喚者にのみチートな能力を与えて文化文明の促進を促すようにしている。


ただ、皆も分かっているように時として魔法はその使用者を暴走させる恐れがある。


こちらの世界で魔法を衰退させ魔道具にシフトしたのもそういった管理を徹底するためだったと聞いている。


これまでは異世界人がこの世界に来ることが無かったため、この世界で魔法による脅威は特に問題になることは無かった。


だが、異世界人の、それもチートな能力を持った召喚者が悪の手先にいるとしたらどうだろう。


実際、犯罪組織の一味として異世界人をひとり捕まえてある。


こちらの世界にとって大きな脅威であると共に、俺達異世界人に対するこちらの世界の人々の非難が強まるに違いない。


そして、今回集まったメンバーは優れた魔法の使い手ばかりなのだ。


もしかすると、今後何らかの事情で犯罪組織に係わる可能性が無いとも言えないだろう。


直接的な誘拐や身内を誘拐しての脅迫、金銭の誘惑に負けてしまう者もいるかもしれない。


そういったことが無いようにリーダーとして目を光らせて欲しいのだ。」


皆息をのんで神妙な顔でこちらを見ている。


「イリヤさん、あなたの役割はリーダーの相談役よ。この役割はあなたにしか出来ないと思うの。


お父さんと完璧に意思疎通できるあなたにしかね。」


ユウコさんがウインクしながらイリヤに話しかける。


「そうだ、皆んなは未だ知らなかったわね。実はイリヤさんはマサルさんの娘さんなのよ。


そして、神になる許可も出ている特別な存在なのよ。

だからなんでもイリヤさんに相談するようにね。」


ユウコさんの言葉にリーダー一同顔を見合わせるのだった。









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