第390話【モーリス教授奪還作戦5】
<<イリヤ視点>>
イリヤです。皆さんご無沙汰しております。
星王になったランス兄さんと一緒にラスク星の政務に忙しい今日この頃です。
とは言っても、わたしの公務というのは様々なイベントに来賓として出席するくらいで、忙しいとはいえ毎日楽しく過ごしています。
ラスク星各地で行われるイベントに移動するだけでも大変じゃないのって思われるかもしれませんが、転移魔方陣を使えばアッという間なんです。
お父様が開発し加藤運輸で長年ベストセラーになっている『ファックス』が更なる進化を遂げて、魔方陣も転送できるようになってるんです。
もちろん、販売先は公的機関に限定していますし、特殊な暗号を使わないと起動しないように安全面での配慮はしてありますよ。
悪用されたら大変ですもの。
話しは逸れましたが、イベント近くの公的機関に設置してあるファックスに魔方陣を送信し、向こうの担当者に現地まで持って行ってもらえば、直ぐに転移できるようになるんですね。
だからいくら遠くっても大丈夫。お母様達とのお茶会の合間に参加することも可能なんです。
そんなある日、久しぶりにマリス様がお顔をお見せになりました。
「はーあい、リザベートちゃーん、イリヤちゃーん、セラフ~、久しぶり~~」
相変わらずフレンドリーな女神様です。
「マリス様、ご無沙汰しております。主人がいつもお世話になっております。」
「リザベートちゃん、ほんと久しぶりねえ。マサルさんが正職員になってからわたしも忙しくってさーーー。」
「マリス様は今まで義父様に頼りすぎだっただけじゃないですか。」
セラフさん辛辣すぎて容赦なしね。
「セラフ~、あんたがランス君と結婚して地上に降りた責任もあるんだからね。」
「その分わたしが仕事してたんですよ。元に戻っただけです。」
「ほーーーんと言うようになったわね!」
マリス様とセラフさんの口撃が物理的な攻撃に変わらないうちにそろそろ止めなきゃね。
「マリス様、ところで今日は御用があったのでは?」
「えっ、あっ、そうそう、忘れるとこだったわ。今日はイリヤちゃんにお願いがあってきたのよね。
実はね、召還者と異世界人の中でも特に魔法力の高い人達を集めて、仕事をお願いしたいのよ。
ここだけの話しなんだけど、この前のナタリーさんの誘拐事件覚えてる?
あの誘拐犯の主犯格を捕まえたんだけど、そいつを取り返しに仲間達が来そうなのよね。
でもね、あいつらの仲間の中に召喚者がいる可能性が高くて、それに対抗するために優秀な魔法使いを集めたいのよ。
それでね、ラスク星からも集めたいんだけど、イリヤちゃんに人選をお願いしようかなあって。
あー、もし時間があったらイリヤちゃんも参加してもらえたら助かるかなあ。
だってさあ、イリヤちゃんとランス君ってラスク星でも一番の魔法使いでしょ。」
「うーーーん、分かりました、何人くらい必要ですか?」
「そうねえ、あっちこっちの異世界から集める予定なんだけど、ラスク星は特に優秀だから多い方が良いわね。
あっ、期間については気にしなくて大丈夫よ。わたしの方で時間操作するから向こうで何日いたって、こっちでは数時間にしておくからね。」
「それだったらわたしも参加しようかな。お兄ちゃんは無理そうだけどね。
お母さん、ちょっと参加して来るね。」
「りょうかーーい。マリス様宜しくお願いします。」
「こちらこそ、無理を言っちゃってごめんね。じゃあイリヤちゃん、10日後にまた迎えに来るわね。」
それだけ言うとマリスさんはテーブルの上に置いてあったケーキを3つだけ持って帰っていった。
10日後、魔法学院の成績優秀者10人を連れて、神の国に向かったの。
<<マサル視点>>
ユウコさんがオーディション?していた召喚者・異世界人チームが決まったみたいで、今日初顔合わせすることになった。
始め100人くらいだって聞いていたんだけど、どうやら400人以上になったみたいだな。
50人づつ8チーム作ってローテーションで警備と捜査を担当するそうだ。
その400人が待つ大会議室に入ると、会議室の中は大熱気に包まれていた。
「先生、ご無沙汰しております。」
「ああ、君はヒューマ君だったね。その後、街は上手くいってるかい?」
「ええ、先生に紹介してもらったケンジさんにいろいろ教えて頂いた結果、皆んなに満足してもらえる街作りが出来るようになりました。」
「そうか、頑張ってね。」
「はいっ!」
ヒューマ君は日本からの召喚者で『創造』魔法を貰った少年だ。
来た当時はチートを貰ったのが嬉しくて、手当たり次第にビルを作ったり、街を作ったりして多くの現地の住民に提供していた。
だが、建築の知識も持たず、現地の人達とのコミュニケーションも不十分なところもあって街を無作為に拡張した結果、地震により全てを失ってしまって自信喪失になっていた。
それで同じ悩みを克服したケンジ君に、指導を頼んでおいたのだ。
どうやらケンジ君の指導を受けて上手くいっているようだな。
創造魔法は人気が高いって言ってたから、これからもケンジ君にお願いすることが多くなるかもしれない。
その他にもセミナー参加者50人くらい声を掛けられて、30分以上かかって、ようやく壇上に上がることができたのだ。
「はーーー、やっぱりいるじゃないか。」
そして壇上から見下ろして見つけた顔に深いため息をつくのだった。
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