第387話【モーリス教授奪還作戦2】
<<マサル視点>>
今、調査室と刑務課でユウキとモーリス教授の扱いについて合同会議を行っている。
これまで異世界管理局の独房が破られることなど無かったそうだが、今回モーリス教授が易々と忍び込んできたことに一同大きな衝撃を受けているようなのだ。
同時に独房係でも全員が集められ、今回の事案について詳しく説明を受けているらしい。
まあ、モーリス教授が現れ俺が捕まえたところを見ていた独房の担当者の顔を思い出せば、どの程度の衝撃を受けたのか判断できるが。
とにかく何らかの対策が早急に必要となるだろう。
それと俺が危惧するのはもう一つ。
あれほどの事件を起こす組織のこと、その規模もずいぶん大きなものだと推測できる。
その上モーリス教授はその組織内でも重要人物であったはず。そうなれば全力で取り返しに来る恐れも大きい。
武力による襲撃や、内部かく乱、テロ活動等々、考えられる手段はいくつもあるだろうし、現に今、会議ではそれらの可能性について喧々諤々の議論がなされてるわけではあるのだが。
「マサル君、君の意見はどうかね?」
「局長、未だ相手の組織や規模、武装等分からないことが多すぎてこれといった対策を採ることは難しいと思います。
ただ、こちらの世界では魔法自体は廃れてあまり使われていないので、魔法を使える異世界人のユウキが先兵として使われていたのだと思います。
異世界人の中でも特にわたし達召喚者は優れた魔法力を頂いているため、敵方に利用されやすいのではないでしょうか。
そこで私からの提案です。
運営課と連携して召喚者を集め、こちらで召喚者による対策チームを作るのです。
もちろん、召喚者が誘拐されて悪用されないための措置ではありますが、強力な魔法を使える召喚者を警備に当らせることで警備強化を図れると思います。
また、これまで以上の警備方法も見出せるのではないでしょうか?」
「うむ、君の言っていることはよくわかるのだが....
わたしの方から運営課に手配することは可能だ。だが、召喚者についてはそれぞれの役割を既に持っていたり、運営課の担当であってもなかなか自由に使うのが難しいものも多いと聞くが。」
「そうですね、そういう話しも運営課の方々から伺っています。
ただ幸いにしてわたしは召喚者向けのセミナー講師をやっておりましたので、わたしのセミナーに参加してくれている多くの召喚者と知己があります。
その伝手を使って集めることも可能です。」
「そうか、その手があったな。全く何が幸いするかわからんが、マサル君よろしく頼むよ。
君には負担を掛けるが警備課と協力して上手く調整して欲しい。」
「承知しました。」
この後詳細を詰めて会議は無事終了した。
翌日、早速ジーク室長からの連絡で大会議室に向かうと、そこには運営課のメンバーと調査室のメンバー、警備課のメンバーの姿があった。
「マサル君、昨日のうちに運営課の課長と話しを付けておいたよ。
アキラ君の件もあるからね。今回の君の提案にはあちらも非常に乗り気でね、早速運営課の選抜メンバーも集まってくれたよ。」
「マサルさん、久しぶりね。元気にしてたー?ランス君やイリヤちゃんもチームに参加したいって言ってたわよ。」
「この前はアキラ君救出有難うございました。アキラ君もチームに入るんだって意気込んでましたよ。」
「マサルさん、ご無沙汰してまーす。弥生ちゃん達も頑張ってくれてて、今回のチームへの参加に諸手を挙げているわ。」
マリス様、ミリア様、シール様がそれぞれ声を掛けてくれる。
その他にも見知った顔がいくつかあるな。
「さあ、挨拶はその位にしてマサル君も席についてくれたまえ。」
ジーク室長に促され席に座る。
会議開始時刻の少し前に局長が席に着席され、会議が始まった。
「マサルさん、思った以上に皆んな乗り気になってくれていて良かったわね。」
会議終了後ユウコさんと自動販売機の前でコーヒー片手に雑談中。
「そうだね。特に警備課が気合入ってたな。警備課でも召喚者を入れようかって話しになってたね。」
「そうよね。魔法よりも魔道具の方が誰にでも安定して使えるし、いざって時の安全装置もあるから便利なんだけど、やっぱり小回りを効かそうとすると魔法の方が便利だし。
これからはわたし達みたいな管理側の召喚者も必要かもね。」
「でもそうなったら、よっぽど上手く人選しないと危険だよなあ。」
「そうーねーー。」
なかなか難しいもんだな。
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