第270話 【国際連合軍の結成】

<<マサル視点>>

国際連合緊急会議の席上で、証言するライズ騎士の言葉は、出席者一同に動揺を与えた。


幻の魔物と言われ、1体で国が滅ぶとまで言われているギガントの目撃もそうだが、そのギガントですら1薙ぎにする魔獣キメラの存在が大き過ぎる。


俺は魔獣が現れたことに疑問を持った。


ギガントについては、過去に目撃情報は少ないが、過去の歴史書を紐解くと何回か現れて、そのたびに国や街が亡びたと書かれている。


だが魔獣に関してはお伽噺に出てくるのが関の山で、キチンとした歴史書や各国の古文書を探しても出てこないらしい。


久しぶりにタブレットを出して確認してみたら、魔獣についての説明はあるが、出現記録は無かった。


「ライズさん、キメラと思われる魔獣は、魔物を喰い散らして、すぐに地面の中に消えてしまったのですね。」



「そうです。わたし達の方をチラッと見たのち、全く興味無さげに砂に潜ってしまいました。」


「皆さん、ライズさんの証言は、カトウ運輸写真館の職員のそれと、ほぼ一致しております。


まぁ、写真にも写っているので、間違い無いとは思うのですが。」


「そうだな、信じたくは無いが、こうも証拠や証言が揃ってしまうとな。」


「そうですね。とにかく対策を考え無いと。」


ネクター王とレイン皇帝がそれぞれ悲壮感たっぷりに口を揃える。


特にレイン皇帝のトカーイ帝国は砂漠を挟んだ対面になるわけだし、すでに自らの問題だと言ってもおかしくない。


「レイン皇帝、今回の問題は、貴国と我が国が最前線にあると言えます。


連携をとって警備を強化していきたいと思っています。」


モーグル王がレイン皇帝に向かって対魔獣の協力要請を行う。


「こちらこそ、モーグル王。

詳細な話しはこの後つけましょう。」


「国際連合としても全面協力は惜しみません。


そこで、国際連合規約第13章『連合国外の敵に対する処置』第5条『連合各国による国際連合軍の設置』を発動させ、国際連合軍を組織したいと思います。


ご賛同の方は挙手願います。」


アニスさんの張り詰めた声に一同沈黙するも、満場一致で国際連合軍が結成されることとなった。



「では、早速国際連合軍の分担について決めていきたいと思います。


第6条「国際連合軍負担について」に則ると、直近の対象国であるモーグル王国とトカーイ帝国が全体の4割を負担、それ以外の国が残りの6割を経済ランクの順位に基づいて負担することになります。


各国の負担金は作戦が決まり次第、別途算出することとなります。


なお、兵についても作戦次第となりますが、15銀貨・人/日で兵士を負担金として拠出することも可能です。


足りない兵数については拠出金より、冒険者や傭兵を雇い入れることとなります。


なお、総大将は国際連合事務総長のマサル様にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか?」


アニスさんの説明に一同頷き、俺が総大将として指揮することになった。



「総大将に指名されたマサルです。皆さんご協力有難うございます。


では早速ですが、調査隊を組織して現状調査から始めていきたいと思います。


モーグル王、ライズ騎士とマライ騎士には今回の作戦のお手伝いをお願いしたいと思うのですが構いませんか?」


「ああ、それは大丈夫です。存分に使って頂きたい。」


「ありがとうございます。ではライズさん、マライさん、宜しくお願いしますね。」


「「はっ、マ、マサル様、精いっぱい頑張らせて頂きます。よろしくお願いも、申し上げます。」」


「各国の皆様には拠出頂く内容を別途お伝えしたく思いますが、現状判明している範囲でもかなり大規模な作戦になると思います。


各国での調整と準備をお願いできますでしょうか。


それと、各国から1名作戦本部に派遣頂きたいのですが。」


「マサル殿、了解じゃ、我が国からは王国騎士団長のダシルを参加せよう。


戦闘力も統制力も一品じゃぞ。参謀は難しいがな。ハハハハハハ。」


「では我が国は、宰相のカイヤを出そう。マサル殿はカイヤと仲が良いからな。」


「「「では我が国は...」」」


ハローマ王国のガード王が先頭を切って人員を出してくれると、ナーカ教国のシン教皇が負けじと宰相のカイヤを出してくれることとなった。


その後次々と全ての国がそれぞれの国で影響力を有する者を出してくれることとなった。




「皆様、国際連合軍へのご協力ありがとうございます。


今回は初めての試みであると共に、全世界団結してこの危機に備える必要があります。


作戦計画が出来ましたら速やかに連絡させて頂きますので、さらなるご協力をお願いしたいと思います。


それでは一旦本日の会議は閉会させて頂きます。ご参集有難うございました。」


アニスさんの閉会の挨拶で、テレビ会議は終了した。


「ライズさん、マライさん。」


俺は振り返ってふたりの方を見る。


ふたりともテレビ会議が終わってホッとしているみたいだ。


そりゃそうだな、あれだけ世界中の重鎮が集まる場もないしな。緊張もするか。


「さあ、ふたりとも現場調査に行きますよ。」


「「えええええ、今からですか!!」」

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