第271話 【砂漠の調査1】

<<マライ視点>>

砂漠で衝撃の瞬間にあったその日、俺達は大急ぎでイラガーに戻り、連隊長に報告した。


報告後そのまま連隊長に引き連れられ、夜を徹して王都まで馬を走らせたのだった。


一睡もしないまま到着した翌朝、すぐに通された謁見室ではモーグル王と宰相様が既に待っておられた。


「昨日トランシーバーにて、第12連隊長カリーム連隊長より報告は聞いておる。


3人とも夜通しの移動ご苦労であった。


聞いた範囲では国難どころか世界の危機もありうると判断し、緊急で来てもらうことにしたのだ。


詳しい話しを教えて欲しい。」


宰相様に促され、俺達は昨日砂漠のオアシスであったことを説明することとなった。




「ふむふむ、なるほどな。


第15連隊の話しが気になって調べたと。


それで偶然その場に居合わせたわけか。実際に聞き込みをした内容と遭遇した内容は被っていたのか?」


モーグル王の言葉にライズが答える。


「ほぼ同じでした。マライと別々に聞き取りをして、その内容を擦り合わせしておりましたが、内容的にはほぼ同じでした。


また、その内容と実際に遭遇した体験も一致するところが多く、先の聞き取りで不明であったところも繋がったような気がします。」


「そうか、それであれば我が国だけでなく、全世界的な脅威となるやもしれぬ。


カッパ宰相、すぐに国際連合事務局に連絡してくれるか。」


次の日の早朝、俺とライズの姿はマサル共和国にある国際連合事務局にあった。


王都から国際連合事務局までは、普通に移動すれば1ヶ月以上かかるのだが、転移門があるため王城の謁見室から1時間もあればマサル共和国の転移門経由で国際連合事務局に到着した。


これも驚くべきことなのだが、明日午前中から全世界の為政者が集まる会議が行われるというのだ。


テレビ会議というものを使うらしい。


いくら転移門があったとしても、各国の為政者が集まるとなれば護衛の問題やスケジュールの調整等、最低でも数週間は必要となるだろう。


まして、全世界の為政者のスケジュールを調整するとなれば、数ヶ月は必要となるはずだ。


それが招集をかけて翌日の午前中に実現できるとは、国際連合の権威の大きさに愕然とする。


実際に会議室に入ってみると、国際連合事務局の関係者が数名いるだけのこじんまりとしていた。


「おふたり共、ご苦労様です。お疲れでしょうが、もう少しお願いしますね。」


あっ、マサル様だ。救国の英雄、モーグルの救世主としてお名前やお姿はよく知っているが、ご本人にお会いするのは初めてだ。


「マ、マサル様、初めてご尊顔を拝見いたします。モーグル王国騎士団第12連隊に所属マライと申します。

お会いできて光栄でご、ございます。」


「まあ、肩の力を抜いてリラックスして下さいね。」


ニコニコ笑いながら気遣って下さるマサル様は、その気安さの中に本当の神様のような神々しさを感じる。


「おっ、マサル殿、久しぶりだな。」


「モーグル王、ご無沙汰しております。」


「マサル様、ご無沙汰しております。」


「カッパ宰相様、こちらこそ、お元気でしたか?」


会議室の壁にモーグル王と、カッパ宰相、シムル15連隊長が映っている。


声も鮮明に聞こえていて、まるで透明の壁の向こう側に3人がおられるように見える。


これがテレビ会議?


唖然としていると、壁の画像が細かく仕切られて行き、他国の画像が増えていった。


全てのマスが画像で埋まった時、事務長のアニスさんが話し始めた。


「お時間が参りましたので、国際連合緊急会議を開催したいと思います。」






開始から3時間後、国際連合軍の結成が決まり、俺達ふたりも参加することになった。


「「えええええっ、今からですか!!」」


早速総大将であるマサル様と一緒に現地調査に向かう。



モーグル王国内で、今回調査に向かうオアシスに一番近い転移門は、オアシスから約2キロメートル離れたムラーク子爵領の関所内に存在する。


事前にムラーク子爵には連絡を入れておいたので、転移門を抜けたところでムラーク子爵の歓迎を受けた。


「これはこれはマサル様、ようこそ我が領地へお越し下さいました。

領民を代表して歓迎いたします。」


「ムラーク子爵殿、歓迎痛み入ります。」


「いえいえ、救世主マサル様がお越しになられるのに、このような質素な歓迎で申し訳ありません。


聞けば、オアシスに出た魔獣の調査に向かわれる最中だとか。


こんなところで足止めしてしまって申し訳ありません。


お帰りの際は是非、我が居城にお立ち寄り下さいませ。」


「ええっ、寄らせて頂きます。」


「有難きお言葉。領民も皆喜ぶことでしょう。


サキリー、サキリー、早速領民に連絡だ。


いつでも歓迎式典を出来るように準備しておけよ。


ここ100年来の大仕事になるぞ!!」



マサル様は少し苦笑いをされているが、さすがは王族というべきか、地方貴族との付き合い方を心得ておられる。


関所からはムラーク子爵が用意しておいて下された馬車に乗ってオアシスまで向かう。


10分ほどでオアシスに到着した。

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