魔獣と古代人

第269話 【国際連合は大騒ぎ】

<<国際連合事務局長アニス視点>>

昨日モーグル王国よりもたらされた魔獣『キメラ』の目撃情報は、国際連合に大きな衝撃を与えました。


既に各国首脳とはテレビ会議にて通知が終わっており、本日15:00より緊急会議が開催されます。


ここ国際連合事務局では、モーグル王国から来られたライズ騎士とマライ騎士が緊張の面持ちで待機しておられます。


事務局員の皆んなは、ギガントやキメラについての情報を片っ端から集めています。


情報と言っても神話や伝説レベルのもの、おとぎ話等、その出典すら疑われるような資料しか集められないのですが、そもそも、ギガントやキメラなんて物は、現実に存在しないと言われてきたものですから、しようがありません。


偶然にも、当時ライズ騎士の近くにいたカトウ運輸写真館の職員が写真を撮っていたのが幸いでした。


これが無かったら、話自体が荒唐無稽状態で、会議も何もあったものじゃあなかったでしょう。


14:30を過ぎて、モーグル王国がテレビ会議に参加して来られました。


モーグル王国からは国王とカッパ宰相、王国騎士団第15連隊長のシムル様のが出席されています。


画面の向こうには山積みになった資料の束が並べられており、今もなお、資料の読み込みに余念がなさそうです。


その後続々と各国からテレビ会議に参加が相次ぎ、開始10分前には全ての出席者が参加されました。


わたしの横にはマサル様とスポック様、アーノルドワーカー様は座っておられます。


15:00になりましたので、わたしは各国に向けられたマイクとスピーカーのスイッチをONにしました。


「お時間が参りましたので、国際連合緊急会議を開催したいと思います。


わたしは議事進行を進めさせて頂きます、事務局長のアニスです。よろしくお願いします。


まず、国際連合総長のマサル様から今回の緊急会議のあらましについて説明頂きたいと思います。」


「マサルです。皆様も既にご存じだと思いますが、先日モーグル王国にて、魔物のスタンピードと魔獣らしき生物が確認されたとの報告は入りました。


今のところ、それらによる被害は無いとのことですが、今後どのような影響が出るのか予想もできないため、情報共有と、国際連合加盟国全体での協力体制について協議したいと思っております。


では、まずはこの写真をご覧ください。」


全ての国の画面に数枚の写真が映し出された。


スピーカーからは、恐怖と畏怖を湛えた声やため息が聞こえてくる。


「これは、偶然にもその場に居合わせたカトウ運輸写真館の職員が撮った写真です。


これが、魔獣「キメラ」と思われる謎の生物とそれに食われる魔物達です。


魔物と魔獣の違いについてですが、魔物は動物が濃い瘴気によって突然変異したもので、魔獣は古代の高度文明を持った先人達が生み出した、人工生命体と言われています。


特に、複数の動物を合成しひとつの生命体として強力にしたものを『キメラ』と呼んでいます。


本日は、この現場に居合わせたモーグル共和国のライズ騎士とマライ騎士のおふたりにもここに来て頂いております。


おふたりは、この時に遡ること2週間前に発生した異常現象に疑問を持ち、今回の発生現場周辺で聞き込みをしておられたそうです。


まずはおふたりの話しを中心に状況の確認をしていきたいと思います。」



「マサル様ありがとうございます。


では、ライズ騎士とマライ騎士のおふたり、宜しくお願い致します。」


「わかりました。では、モーグル王国王国騎士団第12連隊所属のライズと申します。

わたしの方から、これまでの経過を説明させて頂きます。


本日モーグル王国側で会議に参加されておられるシムル様が率いておられる王国騎士団第15連隊が、2週間前に西の砂漠で演習をされておりました。


その際に、大量の魔物の死骸を発見したと聞いております。


わたしはここにいるマライと食事中にこの話が話題になり、揃って非番だった翌日に西の砂漠のオアシスに行ってみたのです。


わたし達は手分けして、2週間前の出来事をオアシスにある商店等に聞いて回りました。


そこで聞いた話しをまとめると、3つの重要な要素が出てきました。


1つ目は、魔物の死骸は1夜のうちに発生したこと。

2つ目は、魔物は何かに追われるかのように走ってきたこと。

3つ目は、数日前から地下から地鳴りのようなものが鳴り響き、魔物の死骸の発見後その音は消えたこと。


わたし達は魔物を恐怖でスタンピードさせるほどの何者かが地下から来て、一瞬で魔物の大軍を喰ってしまったのではないかと考えました。


そろそろわたし達が駐屯するイラガーの街に戻ろうかと話しをしていた時でした。


大きな音が聞こえて来たので、わたし達は音のする方へ走りました。


砂漠の入り口でわたし達が見たものは、そそり立つ砂煙と、そこに見え隠れする数多の魔物達でした。

見えるだけで大型が200匹くらい、距離にして500メートルくらいでしょうか。


その魔物の中には伝説のギガントと思われる巨人も含まれていました。


あの迫り来る勢いに、避難指示は無意味に思えるほどでした。


それがあと200メートルくらいまで迫って来た時でした。


わたし達の立っている地面の下を何かが物凄い速度で通り過ぎて行くのを感じました。


やがてわたし達の前方150メートルほどのところで、砂煙と地下から上がって来たそれはぶち当たったのです。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る