第202話【最初の議会】

<<マサル視点>>

国際連合総会で『マサル共和国の建国』が承認されてから3ヶ月、シークニ島の山を切り崩し最初の街も作った。


街を建設して移民の受け入れ態勢もほぼ整い、当初の計画通り、国際連合事務局とカトウ運輸の本社を移設も完了。


各国から派遣された官僚達総勢51人も到着し、とりあえず今後の国家運営を決めていける状態までは持ち込めたと思う。


既に各国からは移住希望者が殺到しており、当初の予定2万人を大きく超える数になっている。


カトウ運輸にも取引先の様々な商会から『支店を出店したいがどうすればよいか?』という打診が多く寄せられているらしい。


まずは1つづつ解決いこうと思う。



まず、官僚51人を会議場に集めた。


リズやユーリスタさんにもオブザーバーとして参加してもらっている。


議事録は、ヤングさんにお願いした。


「皆さん、今日は国の運営の基本方針について決めていきたいと思っています。忌憚なきご意見をお聞かせ下さい。


まず、ここにお集まりの皆さんを建国当初の国会議員や各分野の官僚として任命したいと思います。


この中から、大臣や役職を決めていきたいと思います。


一応任期は4年で考えています。


ここまで、よろしいでしょうか?



『『『パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、』』』



それでは第1議案ですが、国名を『マサル共和国』にする予定です。これについて異議がある方はございますでしょうか?


…………


特に無いようでしたら、国名は『マサル共和国』に決定したいと思います。


『『『パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、』』』



次に、議会についてですが、今回が第1回の議会となります。


今回はわたしが議長をしておりますが、本日の会議で皆さんの役職や担当を決めていきたいと思っています。


次回からの議長もその中で決めたいと思います。」



「…………次回以降もマサル様で良いのではないでしょうか?」


議員の1人から発言が出た。他の者達も頷いている。


「それも1つの案としてアリだと思います。


ただ議長は1人でなくある一定の任期で持ち回りにするのが良いとわたしは考えています。


それは、特定の個人に権力が集中することを避けるためです。


わたしはこの国が『国民が望む議会』の総意で運営されるべきだと思っています。


そのためには、国会議員に権力は必要ありません。常に『国民に目が向く議会』を作るためには、誰もが議員になれ、誰もが真摯に国家運営に取り組めるようにしたいと思っています。


この辺りについては、前回共和制の説明時にさせて頂いたことです。


役職の長期固定は権力固持の温床となる恐れがあります。」


「しかし、この国に移住を希望する者達はマサル様の統治を期待されるのではないでしょうか?」


「そうかも知れません。ただわたしは国の統治に関して権力を持つつもりはありません。


そうですね、『国の象徴』とでもしておきましょうか。


国名の通り、わたしはこの国を建国することを決定しましたから、この国が軌道に乗るまではわたしが全責任を持って国の運営を指揮していきます。


しかし、安定期に入ったら、運営は国会議員の皆さまに任せたいと思っています。


わたしは『国の象徴』として『特別な権限を持たない』オブザーバー的な位置付けになろうと思います。」


「『国の象徴』とはどういった位置付けになるのでしょうか?」


「基本的には『全国民の代弁者』とお考え下さい。


国内における議会の決定事項等は全てチェックさせて頂きます。


その中で国民に対して問題があると判断される場合は、口出しをさせて頂こうとは思っていますが、わたしから先に口出しすることはしないようにしたいと思っています。


その他、国民の選挙で選ばれた国会議員の任命や大臣の任命もわたしが行います。


つまり、国会議員の皆さんにとっては『国民から派遣された監察官』だと思って頂いても構いません。」



「承知いたしました。あくまでも国民に正当に選出された国会議員が国の運営を行い、その方針の決定が国民の総意であるかどうかをチェックされるのがマサル様ということでよろしいですね。」



「そうです。キチンと国の運営が回るようになれば、お飾りみたいなものになると思いますが。

わたしは早期のそうなることを願っていますよ。」


俺の言葉に皆は唖然とするが、端の方から苦笑交じりの笑い声が起きた。


「ハハハハハハ、やはりマサル様はぶれませんね。


昔からそうですものね。カトウ運輸の経営もそうですし。


失礼しました皆さん、わたしはカトウ運輸で番頭をさせて頂いておりますヤングと申します。


今マサル様からお話しのあった『国の象徴』の件ですが、既にカトウ運輸ではこのような経営体制が15年以上続いています。


なにせ商会設立から5年間ほど、従業員のほとんどがマサル様が会頭だということを知らない程徹底されていましたから。


マサル様が経営に口出しすることはほとんどありませんでしたね。

ただ、マサル様という第3者的な監視が常にあったからこそ、これ程に膨れ上がったカトウ運輸が目的を失わず経営出来てきたのだと思っています。


この新しい国もそういった自浄作用のある健全な国になって欲しいとわたしは思っています。


マサル様が建国される国なのですから。」



「「「「パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、」」」」



「ヤングさん、マサル様とのお付き合いの長いあなたの発言は非常に実感がこもっておりましたな。


かなりご苦労されたことだと思います。


その上で、あなたがそうおっしゃるのであれば、これは国家運営の手法として歴史に名を残す偉業になるやもしれませんな。ハハハハ



どうです皆さん、ヤングさんのお知恵や経験もお借りしながら、この国を、新しい国家運営を作っていこうじゃありませんか?」



「「「「パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、」」」」



「皆さん、本日オブザーバーとして参加させて頂いております、キンコー王国行政改革担当大臣のユーリスタ・ナーラでございます。


皆さまのご決意確かに感じさせて頂きました。


キンコー王国を始め、国際連合加盟各国に働きかけ精一杯この国を支援することをお約束いたします。」


「「「「パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、(ユーリスタ様~~~~)」」」」


一部涙声も交じっているがとにもかくにもマサル共和国は第一歩を踏み出せたようだ。

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