第201話【ユーリスタ奮闘記】
<<ユーリスタ視点>>
山しか無いシークニ島にマサルさんが国を作るなんて、何の罰ゲーム?って思いました。
そりゃ陸地に国を作るとトラブルが多発する可能性は充分に理解できます。
島であればおいそれとは近付けませんし、キンコー王国かハローマ王国以外からは行くのが困難なので、そういう意味では地理的には最適でしょう。
ただあの地形ですよね。
以前、ワーカ領で、調査を出したことがあります。
海からは高い崖に阻まれ近付けません。
冒険者の一部がなんとか壁をよじ登り、島を調査したのですが、どこまで行っても山ばかりで、反対側の壁に行き着いたそうです。
こんな島をもらったって……
わたしは、国際連合総会で決議された翌日、ヘンリー様に抗議しましたが、笑われてしまいました。
「ユーリ、相手はマサル殿だぞ。
その程度を気にすると思うか。
早速今日くらいから作業に入っていると思うから、屋敷に行って聞いてごらん。」
まぁそう言われると否定は出来ませんが。
まぁいいでしょう。明日でも行ってみましょう。
翌日、マサルさんの屋敷に行きました。
屋敷にはリズちゃんしか居ませんでした。
「リズちゃん、マサルさんと子供達は?」
「お義母様、あの3人ならシーク二島に行ってますよ。」
「そうなのね。ねえ、マサルさん怒ってない?」
「怒ってませんよ。どうしてですか?」
「いやね、ヘンリー様があんな辺境のどうしようもない島を渡したでしょう。
一目見て怒ってないかなって。」
「それがね、早速、一昨日見てきたみたいなんだけど、すごく興奮して帰ってきたわ。
『無茶苦茶やりがいがあるところだ』って。楽しそうだったわよ。
昨日からランスやイリヤを連れて行っているわ。
昨日もね、子供達がすごく楽しそうだったわ。
明日で挨拶廻りも終わるから、明後日にでも一緒に行ってみます?」
「ええ、そうするわ。」
翌日、皆んなと一緒に転移魔方陣を使ってシークニ島に行きました。
着いたのは大きな砂浜でした。
海からは、なだらかな坂になっています。
出来たばかりの立派な港も近くにありました。
こんな綺麗な砂浜なんてあったかしら?
海辺は険峻な崖ばかりだったはずだけど。
「ユーリスタさん、この砂浜は僕達が作ったんだよ。あそこにあった山を砕いてね。」
ランス君が自慢げに話してくれました。
山を崩して?
わたしは急いで坂を登って行きました。
そこには……… 広大な平地に綺麗な道がありました。
既に国際連合事務局やカトウ運輸本社は移設されており、活動を再開しているようです。
次の日も作業は続き、政務庁舎や大きな時計台、大規模な運動場等が続々と出来ていきます。
「ふうー、やっと出来たな。
ユーリスタさん、リズ、イリヤ、内装頼めるかな。」
マサルさんがわたし達を見つけると、内装を頼んできました。
内装については女性の感覚に任せたいということなのでしょう。
イリヤちゃんがやりたそうな顔をしていたことも理由でしょう。
「「「分かりました(わ)」」」
庁舎の外装は完成しており、内装が終われば全体的に完成します。
わたし達は、ロンドーやヤコブとシークニ島を何度か行き来し、家具やその他調度品を選定しては、それに合った内装に仕上げて行くことにしました。
ヤコブのルソンさんは旧知の仲ですし、ロンドーの族長夫人のデカさんはマサルさんの屋敷で何度もお会いしていて、既に仲良しです。
既にマサルさんから話しがいっていたこともあり、選りすぐりの商品を大量に見せて頂きました。
最初は気に入る物が揃うか心配でしたが、むしろ気に入ったものから厳選する方が大変でした。
部屋毎にどの家具や調度品を置くか考えながら部屋の内装を考えます。
時間はかかりましたが、納得出来る案が出来ました。
そのイメージをイリヤちゃんに伝えると、あっという間に内装が完成しました。
出来上がりで気になったところをイリヤちゃんに伝えると、すぐに修正してくれます。
イリヤちゃんの土魔法って、話しには聞いていましたが、『すごい』の一言です。
「ユーリスタさん、お母様、こんな感じで大丈夫?」
「「イリヤ(ちゃん)完璧よ。ありがとう。」」
そして続々と納品される家具や調度品を並べていき、1ヶ月くらいで内装は納得出来るレベルで完成しました。
街の方も順調に開発が進んでいます。
ここに来た当時は、国際連合事務局とカトウ運輸本社しかありませんでしたが、この3ヶ月くらいで、たくさんの建物が建ちました。
移住して来た住民が住むための集合住宅が大半のようです。
サイズも、1人暮らし用の1部屋トイレ付きから、家族向けの少し広い3部屋トイレ付き、高級な5部屋トイレ風呂付きと、3種類用意されているみたいです。
基本的に、この国には貴族は居ないはずですから、豪華なお屋敷は要らないはずですものね。
その他には商店が軒を連ねる商店街や、小さな商店が安い家賃で借りられる集合住宅型の商店も用意されていました。
この商店を集めた集合住宅は『デパート』というらしいです。
お店を持たなくても商売を始められるので、旅の商人や各国の工房の直営店等ニーズは多いと思います。
これらの建物は全て国営なので、家賃は全て国に入ります。
上手く考えたものですね。
未だ大きな敷地がたくさん空いていますが、各国の大使館向けの用地だそうです。
官僚用には庁舎敷地内に官僚用の集合住宅があります。
マサルさん達もここに入ると言ったらしいのですが、皆んなに反対されたそうです。
『救国の英雄と聖女様をこんなところに住ませるなんて恐れ多い』ということらしいですね。
結局マサルさん達は、街から少し離れたところに宮殿を建てる羽目になったみたいです。
ちなみに、その宮殿と我が家は転移魔方陣で結んであるので、いつでも出入り自由にして貰いましたとも。
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