第163話 【デカの嫁入り】
<<イリヤ視点>>
わたし達は、春休みを利用して、亜人大陸に来ています。
20日後にデカお姉ちゃんの結婚式がロンドーの首都で行われるのです。
お父様とお兄ちゃんとわたしは、デカお姉ちゃんの警護をしてロンドーまで一緒に行きます。
始めはロンドーの動きを警戒するために行く予定だったんだけど、ちょっと目的が変わってきたの。
だって最近スパニが、デカお姉ちゃんを狙っているみたいなのよね。
冬前に防衛ラインを作ってから、スパニは、3回ほど攻めてきていたんだけど、とうとう諦めたみたい。
カーン叔父様のところに、スパニの使者が来て、無理な要求をしているみたいだけど、適当にあしらっているって言ってた。
向こうから一方的に攻撃してきて、勝てないからって無理な要求をしてくるのは、ちょっとおかしいよね。
でも、デカお姉ちゃんとロンドーの皇太子の結婚については、スパニも焦っているみたい。
そりゃ、協力されたらスパニはこまるよね。
ルソンさんが族長になって、固く結束したヤコブ族も敵になったんだから、スパニは亜人大陸で孤立しちゃうもの。
だからデカお姉ちゃんを殺害しようと、暗殺者を寄越してきたのよ。
まぁ、お父様がいるからみんなすぐに捕まっちゃうんだけどね。
でも、なかなか諦めてくれない。
スパニにとって結婚式に向かう道中が、最後のチャンスだろうから、みんなでデカお姉ちゃんを守っていこうって話しになって、予定通りわたしとお兄ちゃんも行くことになりました。
お父様とお兄ちゃんが護衛で、わたしがデカお姉ちゃんお付きの侍女って設定。
もしかしたら、ロンドーの王宮にも刺客がいるかもわからないからね。
とにかく、用心するにこしたことはないと思うの。
ヤライからロンドーまでは、2週間の旅。
お父様とお母様が新婚旅行で使ったようなすごく立派な馬車で移動しています。
元々はカトウ運輸で作った『トラック馬車』だから、とっても速いの。
この馬車だったら、本当は5日もあれば充分なんだけど、こんな馬車は亜人大陸に無くって目立つから、普通の馬車と同じ速度で進んでいるのよ。
見た目は、ヤライの一般的な馬車に見えるのだけど、お父様が作った空間魔法の魔道具で拡張されているから、中は小さなお屋敷が入っているみたいに広くって快適なんだよ。
兵士さんもたくさん乗っているし、攻撃や守備用の魔道具もたくさん積んであるから、軍隊に襲われても対応できると思う。
もちろん料理人や本当の侍女さん達も乗っているから、凄く快適な旅なのよね。
転移の魔方陣もあるから、学校が始まっても通えるしね。
こんな感じで、ヤライを出発してから1週間が経った。
「ランス、イリヤ、またスパニが襲ってきたぞ。
100騎くらいだから、いつもと同じくらいかな。
ランス、行くぞ。
イリヤ、デカさんを頼んだよ。」
そう言うと、お父様はお兄ちゃんと一緒に行ってしまった。
一応、盗賊に擬装しているけど、スパニの兵士達って丸わかり。
だって、武器もスパニの兵士が使っているモノだし、言葉使いなんかは誤魔化そうとすらしてないもの。
「もお、面倒くさいなぁ。」
お父様とお兄ちゃんは、敵を捕まえて来るから、捕虜にした敵達をどんどん牢屋に送らなきゃいけない。
始めは、馬車の中を拡張して牢屋を作っていたんだけど、200人を越えたくらいから、ナーラの牢屋に送っているの。
これはわたしの仕事なんだけど、そろそろ1000人を越えるから、ナーラの牢屋の番人からも苦情が出始めているの。
本当、いい加減襲撃はやめて欲しいんですけど!!
それからも毎日同じように、スパニの襲撃が続いている。
最近は、向こうもだいぶ焦っているみたい。
1回の襲撃で、多い時は300人以上になる時もあり、1日に3回以上襲われることも珍しくなくなったわ。
捕虜の数も既に5000人は越えているの。
お父様がナーラで新しい大きな牢屋を作ってきたみたい。
捕虜の中には、明らかに高い地位の人達も混じっている。
「俺達を早く解放した方がお前達のためだぞ!
俺を誰だと思っているのだ、スパニの大貴族アマ、あっ…………」
なんか言ってるけど、面倒くさいから電撃で眠ってもらった。
本当、自分から名前を晒すなんてね。
翌日、無事にロンドーの王宮に到着した。
お父様とお兄ちゃんは、王宮内でも警護に就くことになった。
もちろん、3人共擬装の魔法でエルフに化けている。
料理人や兵士の皆さんには、転移の魔道具で、ヤライに返って頂いた。
だって、馬車から30人も降りたら、いくらなんでもおかしいよね。
わたしと侍女さんの2人は、デカお姉ちゃんの侍女として一緒に与えられた部屋に入る。
今日は一日休息日で、明日皇太子に面会する予定になった。
ロンドーの皇太子ってどんな人なんだろう。
デカお姉ちゃんに優しい人だったらいいのにね。
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