第105話 【結婚式に向けて】
<<マサル視点>>
レイン皇帝陛下から手紙が届いた。
結婚式のスケジュールが書かれていた。
準備期間、6ヶ月、式及び披露宴が2週間、新婚旅行が2ヶ月となっている。
何故?
理由はこうだ。
先の隕石騒動で、俺はカトウ運輸の会頭として名前が知れ渡ってしまった。
大陸全土に広がるカトウ運輸と誼みを持ちたい王族や貴族、大商人は多い。
出来るなら妾の1人にでも娘を輿入れさせたいところだろう。
またリズについても、ひとめ聖女様を見たいとの民衆の大きな声に各国としても応える必要があった。
各国の思惑に拍車を掛けたのが吟遊詩人だった。
『自分の危険も顧みずに隕石に立ち向かう男と、必死に寂しさを堪えながら、男を優しく見送る女。
死地に向かう2人は、結婚を誓う。
やがて無事生還した男は、女を優しく抱いて結婚を申し込む。
女の目に一筋の涙が溢れる。』
こんな唄が民衆の間に流れ、瞬く間に広がった。
こうなったら、もう誰も止められないだろう。
名目が民衆の声であれば、2人は断らないだろうと。
レイン陛下の計画はこんな感じ。
まず、キンコー王国の王都キョウで結婚の儀を執り行う。
それに際して、新規に大聖堂を建設するとのこと。
既存のマリス聖教が、式を取り仕切っては他の宗派との間に軋轢が出てしまうことと、マリス聖教が力を持ち過ぎるのを防ぐため、新たに教団を王家主導で創設し、大聖堂も新規に作るそうだ。
そのために6ヶ月の準備期間が必要とか。
もちろん俺も手伝うことになっているから6ヶ月という短期間なのだが。
結婚式と王都キョウでの披露宴に3日間、街道を移動しながら駅毎にお披露目を行い、ハローマ王国へ。
ハローマ王国の王都で、2日間の披露宴を行ってからお披露目をしつつトカーイ帝国へ。
トカーイ帝国の帝都で2日間の披露宴を行った後は、国際連合事務局に向かい、加盟各国の首脳出席の披露宴を2日間行う。
移動を含めて2週間。
移動は、俺の空中移動とか。
新婚旅行は、国際連合加盟国を全て周り加盟国の名所巡りとなる。
各国3日滞在で移動休息日を加味し、2ヶ月間の予定だそうだ。
トランシーバーを用いてレイン陛下に連絡を取るも、「マサル殿申し訳ない。各地調整したところ、これが精いっぱいなのだ。各地の要望をそのまま飲むとこれの3倍以上の日程になってしまう。」と疲れた声で言われると、あきらめざるを得ない。
しようが無いので移動と宿泊用に移動屋敷を作ることにした。
間取りは俺、リズ、アリスさん、侍女メアリの部屋で4部屋と風呂トイレx2、リビング、キッチン、等合わせて5LDKと結構な広さになってしまった。
俺は2部屋もあれば良いのだが、アリスさんが「旦那様の格から言って最低限でもこれだけ必要です。」と言われてしまうと何も言えない。
とはいえ、こんな大きさのものが移動できるはずもなく、外観は2頭立ての馬車サイズにして、中を亜空間拡張して作ることとした。
これで、快適に計3ヶ月間を過ごすことができると思う。
馬車は3台以上列ねて護衛は20人以上で、……とアリスさんの希望は溢れるが、勘弁してもらおう。
その代わり、馬車は豪華な作りのトラック馬車にした。
亜空間に入るのだから振動なんて関係ないんだけど、トラック馬車自体が、超高級品だからね。
大聖堂の建設は、順調に進んだ。
土魔法で、敷地を整地し、山から切り出した大理石を空間魔法で敷地まで移送。念動力を使い大理石を積んでいく。
細部の彫刻は、水魔法で彫っていき、最後に俺が彫ったマリス様像を設置して完了。
ちょっと待て、全部俺の作業じゃないか。
まあ、中の椅子やテーブルは家具職人の手によるものなので、俺が全部というわけでもないが。
6ヶ月の予定が3ヶ月で完了した。
なお、大聖堂を建立した場合、マリス様の像にマリス様をお迎えする儀式が必要とのこと。
大神官を迎え、1週間程のお祈りを捧げるそうだ。
大神官は.... 俺?
マリス様の像にひざまづき、他の神官共々お祈りを捧げる。
光臨まで通常は早くとも5日はかかるらしい。
俺はマリス様に出てきてもらうようにお願いした。
ひざまづいて直ぐに、マリス様の像に光が差し、マリス様の声が聞こえる。
「聖堂に集まりし我愛しき子らよ。我はここに光臨した。この教会を我全ての子らに慈悲ある場所にするように。」
マリス様の有難い言葉を聞いて一同が感涙している。
光臨を頂くことはあっても、話しかけられることは今まで一度もなかったそうだ。
「マサルさん、今回はお祝いを含めて、おまけよ。大神官の職、頑張ってね。」
多分俺にしか聞こえていない声で話しているのだろう。マリス様の声がうれしそうだ。
こうして、腐敗していたマリス聖教の権威は地に落ち、新たに創設されたマリス教マサル派が、のちに最大勢力へとなっていくのだった。
移動馬車も無事完成し、リズのウエディングドレスや、各地の披露宴、お披露目で着用する大量のドレスも次々と納品され、俺の大神官就任の行事も全て完了し、ついに結婚式の当日を迎えるだけとなったのだった。
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