第104話 【宴のあと】
<<ヤング視点>>
マサル様の婚約祝いの宴は、まだまだ続きます。
形式的な挨拶やマサル様やリザベート様の活躍を紹介させて頂いた後は、フリータイムになりました。
マサル様が開発され、社員教育にも使っているプロジェクタを使って体育館の壁やステージに貼ってある白幕に、マサル様やリザベート様のこれまでの軌跡をスライド映像で流しています。
マサル様やリザベート様も皆に混じって会場に降りられています。
マサル様の活躍を聞こうと集まった者達を相手に物流センター構築時の考慮点や交渉の進め方等、マサル様の講義が始まっています。
マサル様のノウハウを聞きだそうと皆必死です。
カトウ運輸があっと言う間に大陸中に物流ネットワークを構築出来たのはマサル様の活躍に依存するところが大きいのは、カトウ運輸では、みんな知っています。
せっかくの機会を逃すわけにはいかないのです。
少し離れたところでは、リザベート様を囲んでいるようですね。
改革の話しや、各地でのヒヤリングやアドバイスをする時のコツ等を聞いているようです。
営業を担当する皆さんには、垂涎もののノウハウなのでしょう。
リザベート様も嫌な顔ひとつしないで、個々の質問に丁寧に答えて下さいます。
おや、少し離れたところでは、ヤリテさんにも人が群がっているようですね。
きっと、婚活パーティーでの成婚ノウハウを聞こうと集まったのでしょうか。
この調子だと、保育所の拡充も検討する必要がありそうです。
いっそのこと、学校も拡充して幹部養成でもしてみましょうか。
まだまだ雇用が必要ですね。
おや、いつの間にか開会から5時間も経っています。
名残りは惜しいですが、明日の仕事に響いてしまうので、一旦お開きにいたしましょう。
後は、個人の責任として場所だけは提供しましょう。
あっユリアさん、片付けは明日でいいですよ。
身体にさわるといけないので、気をつけて帰って下さいね。
警備課の皆さんご苦労様でした。
申し訳ありませんが、退場する皆さんの誘導をお願いします。
総務課の皆さん、会場内に忘れ物や落し物が無いかだけ、確認をお願いします。
あっ、片付けは明日まとめてしましょう。
「ヤングさん、お疲れ様です。
こんなに盛大にお祝いして頂いてありがとうございます。
設営や警備、その他尽力してくれた皆さんによろしく伝えて下さい。
でもヤングさんが1番大変だったと思います。
本当にご苦労様でした。」
マサル様の優しさが目に沁みます。
本当にマサル様について来て良かったです。
「クリーン!」
マサル様の魔法で辺り一面が匂いを含めて綺麗になっていきます。
「それじゃ、お先に失礼しますね。」
頭を下げて仲良く退場するマサル様とリザベート様、さりげなく魔法で掃除して行くなんて、なんて男前なのでしょう。
わたしは、まだ会場内で酒を飲みながらマサル様から聞いたお話しで議論を交わしている人達の輪にコップと新しい酒を持って向かいました。
<<施設設営課シモン視点>>
施設設営課は、物流センターの設計や設営に関する現地との調整作業、センターの構築までを担当する。
カトウ運輸設立当初は、会頭が自らの手でこの作業をされていたと聞く。
実際に研修で会頭が建てられた物流センターを見学したが、それはそれは素晴らしいものだった。
街の中心部にそのセンターはあり、そこから近隣地域へまっすぐに延びる舗装された街道。
街の片隅には、アパートと呼ばれる集合住宅が並び、カトウ運輸の社宅や独身寮もある。
その近くには孤児院や病院、学校まで併設されており、それらは全てカトウ運輸の経営だということだ。
領主様や代官様との交渉や道路の整備、センターを含めた各種建物の建設、上下水道の整備指導まで全て会頭の仕事らしい。
今俺達が担当しているのは、その一部だが、その精度は遠く及ばない。
会頭は、魔法の使い手だと聞く。
だが、それだけではない。
あの斬新で効率的なデザイン、究極を極めた細部の設計、そして何よりも街全体を活性化させるための都市レイアウト。
とてもこの世の発想とは思えなかった。
今日、会頭に初めてお会い出来た。
あの英雄マサル様が会頭だった。
俺は思い切って思いの丈を会頭に伝えた。
マサル様は快く応じて下さり、俺達の周りには黒山の人だかりが出来た。
マサル様は、何が最善かを考え、何に気をつけ、そこに本当に必要なものは何かをよく考えることから始めるのが必要とおっしゃり、具体的な事案を元に詳しく説明して下さった。
今日という日は、俺の宝物になるだろう。
しばらくして、ヤング様から閉会の挨拶があり、一旦お開きになった。
マサル様は帰って行かれたが、俺達の興奮は収まらない。
場を変えずに、そのまま議論は続いた。
知らない内に周りが片付けられていたが気にしない。
そして少し経って、ヤング様が輪に入って来られた。
「盛り上がってますねー。わたしも輪に入れて頂いて宜しいでしょうか。」
自然と参加されたヤング様は、カトウ運輸が設立された経緯やどんな風に大きくなってきたかを、滔々と語り始められた。
その話しを肴に、夜はどんどん更けて行くのであった。
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