第3話【マサル魔法をもらう】

<<マサル視点>>

アイカ村の宿屋に泊まった翌朝、俺とリズは、宿屋で用意された朝食をとりナーラの街に向けて出発した。今日中に着けばいいので、のんびりとした旅になる。


街道を昨日みたいな速度で移動したら大騒ぎになってしまうしな。


リズも馬から降りて横を歩いている。昨日からこの世界のことを色々教わっている。


どうやら中世のヨーロッパに近いような感じがする。


まだ大航海時代になる前で、近隣の小国同士が、長年小競り合いを繰り返している感じ。


前世の中世との違いは、魔物と魔法か。


魔法については、庶民では使える人の方が少なく、王族や貴族に使える人が多いらしい。


なので魔法の詳細については、秘匿扱いになっている。


庶民が使える魔法の代表的なものに、生活魔法というものがある。


生活魔法とはその名の通り生活がちょっとだけ便利になるレベルのものらしい。


火種やコップ1杯程度の水が出せたり、数秒間ちょっと目が良くなったりする程度だそうだ。


それでもライターや水道、オペラグラスがない世界のこと、魔法を使えるだけで裕福な生活を送れるらしい。


俺もせっかく異世界に来たのだから魔法のひとつも使えるようになりたいものだ。


???????????


その時突然天の声もとい創造神マリス様の声が聞こえた。


「呼んだ?

今魔法が使いたいって言いましたよね。」


この人いや神は暇か!って思ったら、すかさず「そんなことないですわよ。」って返って来た。


やっぱり暇なんだ。


「そんなことないって。マサル君に後3つスキルをあげるって言ってたでしょう。


だからいつ呼ばれても良いようにずっと観てただけですよ。」


やっぱり暇なんだ。


「それで魔法が欲しいんだよねぇ。

そう言えば、付けるのを忘れていたわ。


サービスで全属性上級まで与えましょうね。


あっそうそう魔力量も大きくしておかないと駄目ね。


はい、完了。

魔法を使いたいと思ったら、念じるだけで頭の中にマニュアルが出るから参考にして下さいね。


あと神殿でのお祈りも忘れずにね。じゃ」


なんか慌ただしかったけど、魔法が使えるようになったようだ。


早速何が出来るのかマニュアルを読んでみる。


威力がわからないので、とりあえず生活魔法で水でも出してみよう。


心の中でウォーターと叫んだ。


すると目の前に水の固まりがでできて2秒ほどして下に落ち、大きな水たまりになった。


「いきなりどうしたんですか。ってそれよりマサルさん魔法が使えたんですか。」


リズが突然の事にびっくりして聞いて来た。


まぁと答えるしかなかった。


その後マニュアルのインデックスを斜め読みしながら生活魔法、攻撃魔法、防御魔法、時空魔法等いろいろな魔法を覚えていった。


はっきり言って覚えきれないし、使い方や威力もわからない。


特に威力はうまく調整できないと、コップに水を入れることもできない。


魔力の出力調整を最初に覚えないといけないな。


それから水魔法を繰り返し練習した。


多分イメージが大事なんじゃないかと思い、様々な大きさの水の固まりを思い浮かべ出すようにしてみると、20回目位でようやく思うような大きさになった。


次はそれを動かすことに挑戦する。やはり手の平をイメージし、それで優しく包むようにしてゆっくり移動させると水の固まりも同じようについてきた。


何回か繰り返すうちにコップに入れられる位の精度は確保できた。


あとはスピードと投げる距離だが、これからゆっくり練習しよう。


水以外にも火でも試してみた。


水が火に代わるだけで特に問題はなさそうだ。光も闇も神聖もイメージが付けば使えそうだ。


ただ、時空のようなイメージしにくいものは、うまく使えない。


今後の課題である。


その様子を見ていたリズは、大きなため息をつき、「お父さんが言ってたんですけど魔法属性って1つか2つ位しか使えないらしいよ。


マサルさんいくつ使えるんですか!絶対おかしいでしょう。」


マリス様奮発し過ぎじゃないですか。


人前では、自重しよう。




<<リズ視点>>

朝起きたら、宿屋のベッドの上だった。いつもの馬車と違う感触に、やっぱりお父さんお母さんがいなくなったことを実感して少しセンチになった。


体を起こすと隣のベッドにマサルさんがいてくれた。


これからこの人と一緒に旅をするんだと思うとちょっと心強くなり、なんとか頑張れそうです。


しばらくマサルさんの寝顔を見ていると、マサルさんが目を覚ました。


「おはようございます。マサルさん」

って声をかけると「おはようリズ」と返って来た。


身仕度を整えていると、マサルさんは気を使って後ろを向いてくれている。


そんなに気を使わなくても、と思うがその優しさが嬉しくって後ろから抱きついたら、マサルさんは顔を真っ赤にして可愛いかった。


2人で食堂に行き、朝食を頼む。


黒いパンと少しの肉とサラダ、朝食の定番。

貴族や富豪は白くてふわふわのパンを食べているらしいが、わたしは、ちょっと堅いこのパンで充分。


マサルさんのいた世界では普通に白いふわふわパンを食べてたみたいで、堅さに苦戦していた。


「そろそろナーラに行こうか。」


朝食を済ませて、ナーラの街に向けて出発する。


アイカ村からナーラまでは街道があり、それなりに人や馬が通っているので、昨日みたいな速度で移動したら大変なことになる。


なので馬を引いてマサルさんと並んでて歩く。


この世界のことをマサルさんに説明していく。


大陸と国のこと、王族や貴族など身分階級のことなど。


マサルさんのいた世界の500から600年前に似ているってマサルさんが一人で納得していた。


生活魔法の話しをしていると、マサルさんは、何か考え事をするように黙り込んでしまった。


何か変なことを言ってしまったかと少し不安になっていたら、突然マサルさんの前に大きな水の固まりができて、それが落ちて大きな水たまりになった。


マサルさん魔法使えないって言ってたのに、てかこんなに大きな水魔法見たことないよ。


マサルさんに説明を求めたら「まぁ、今使えるようになったみたい。」って返って来た。


その後、色々な魔法を試している様子を見ていて、マサルさんって本当に規格外だと思う。


ビッグベアを1撃で倒したことといい、こんなに多くの魔法属性を使えることといい、わたしの勇者様は、絶対、伝説の勇者様なのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る