衝撃の館 後編




 その虫の声は、恐ろしいようでもあり、魅力的なようでもあったね。



 何て言うか、すごく不思議な魅力が溢れる鳴き声だったんだよ。



 いったいどこに、虫がいるんだろう。何て事を考えながら、僕は目を閉じて、


 その虫の声を子守唄にでもしながら、眠っちまおうか、って考えたよ。



 絵なんか描く気にならないさ。



 そうして僕は目を閉じた。

 けれどもだよ。



「ダメじゃない!! 知らない人の部屋に来ちゃあ!」


 って女性の声がしたんだ。


 いや、幽霊とかじゃなくってバリバリ生きている人間の声。


 子供を叱るような声さ。



 僕、びっくりしちゃってさ。

 飛び起きたの。




 どうやら僕の部屋の前に、その女の人がいるようでさ。



 気になって、気になって、たまらなくて。

 それで、部屋の扉を開けたんだよ。



 そしたら、そこには高校生くらいの女の子がいて、


「あっ。すみませんっ」

 って僕に謝って来たんだよね。



 で、僕、気がついちゃったんだよ。



 彼女、けっこう大きい虫を抱えてた。

 それが見たこと無い虫でさ。



 かなり巨大な虫。綺麗な色をしていて、黄色いキバみたいなのを生やしてた。



 驚いたよ。

 あんな虫、見たこと無いからね。




 僕が驚いていると、彼女はハッとした表情を浮かべて、すぐ逃げてったよ。



 これは絵の題材になると思ってさ。

 でも、彼女の後ろ姿を見ているうちに、




 なんだか追いかけたくなった。虫について、色々、聞きたいと思ったんだ。



 そうして、僕は、部屋を飛び出して、彼女を追いかけた。



「すみません。お伺いしたい事があるんですけど!」



(完)

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