第2話 少女



 少年は、少女の家に行くことにした。

 凄く楽しみだと思った。



 少女と歩く道は、いつも通りの見慣れた道だったけれども、とても新鮮だった。



 しばらく歩いて、少女が、

「ここだよ」

 と言って立ち止まった。


 赤レンガ造りの家だった。


「とてもお洒落だね」

 と少年は言う。


「そうでしょう」

 と、少女は無邪気な笑みを浮かべた。


 家の中は広かった。少年は少女に案内されて、彼女の部屋まで来た。


 そうして、部屋のドアを開いた彼女は、一瞬、何かに怯えるような表情をした。



「いない」


 と、彼女は言う。


「虫が、居なくなってる」


 その彼女の不安と焦りに満ちた表情を見ているうちに、少年はどうやら彼女が嘘をついている訳では無さそうだ。という事に気がついた。



「大丈夫?」

 少年は心配した。



 少女は急いで、ベランダの方に駆け寄った。窓を開けて、飛び出した。



「あの子、きっと隣の部屋に行ったんだと思うの!」


 と、彼女は言った。

 少年は、少女を追いかけた。



 少女を追いかけてベランダにまで行った時、彼女が虫を抱いて、


「よかったぁ」

 と安心している声を聞いた。



 少年は、少女が抱いている虫を見た。


 大きい虫だ思った。

 胴体は五つほどの、まるでビー玉のような球体で出来ていた。



 そのどれもが透き通るような綺麗な色をしていた。



 先ほど少女から聞いたように、計十本のピンク色の脚と、黄色いキバのようなものを持っていた。



「なんだこれ」

 少年は、呆然とその虫を眺めた。



「私にもわからない。ある日、突然やって来たの」

 と彼女は言う。




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