第11話 ノーネーム
あのチェス大会から数日。
ムームア様は臨時会議の日に向けて宝についての情報をありったけかき集めろと
従者は運命に選ばれし王の記憶の片鱗を持つが、
前王…ムームア様の父親であるアルヴァに関する記憶を探ってみるが、罵倒される姿や暴力を振るわれる姿しかなく
「こいつは死んで当然の人間ですわね……この手で殺してやりたかったぐらいですわ」
ぎゅっと拳握ると爪が手の平に刺さり血が流れる。
その痛みで少し冷静さを取り戻し、結局優良な情報は得られなかったなと残念に思う。
とぼとぼと廊下を歩いていると、遠くで誰かが角を曲がってくるのが見える。あの黒と紺のロングコートの男は……ルナティスだ。彼がこちらへ向かってこようとするのを見て、ささっと物陰に隠れる。自分は何故隠れてしまったのだろうと思いながらも、彼の行動を観察することにした。
「〜♪〜♪」
何やら鼻歌を歌いながら歩いているルナティス。鼻歌と言ったが正確には頭があった場合の口元がある部分、つまり何も無い空間から聞こえる。前に何故頭がないのに見たり聞いたり出来るのか聞いたことがあったが、「そんなこと考えた事もありませんでした!!ははっ!!」と言う何とも言えない返事を返されて終わった。結局真相は謎のままだ。
彼に、仕事もせずに何を呑気に散歩しているんだと叱ろうかと考えていると、ルナティスが急に立ち止まる。
「……?」
なんだと思っていると彼は掌に拳をポンっとあて、傍にあった壺を手に取り覗いていた。彼の謎の行動に飛び出るタイミングを逃す。そして彼は何をしているんだと観察していると、今度は壺を逆さにしてブンブン振っている。……あの壺がいくらするか分かっているのだろうか?
そこで、ルナティスの謎の行動をやっと理解出来る。
「(そんな所に宝に関する情報はありませんわ!あのおバカ!!)」
そこに無いと分かったルナティスは壺を元の場所に戻してまた歩き出す。彼は彼なりに仕事をしていたのだ。
しかし、ルナティスの行動を観察していると本当にそうなのだろうかと思えてくる。
いきなり普段は使われない空き部屋へ入ったかと思うとそのクローゼットをバンバン開けていって何も無いことが分かるとそれを全部閉じ、今度は自室に行き開けられるものは全部開けて中を漁ったあとそれをそのままにして出ていったり、壁や石柱をコンコンッとノックしてみたり……
「(彼は遊んでいるの……?)」
そう疑いたくなるほどお粗末な詮索。ルナティスは戦闘面では本当に、本当に反則と言えるほどの強者。大鎌を振り回し敵を薙ぎ払うその姿は嵐のようでいて、死を告げるデュラハンとは思えないほど美しい。だが、普段の彼はこの様子。全く、呆れるしかない。
ふと、彼が詮索を止めると先程まで何もしてませんでしたとでも言うかのように廊下を歩き始めた。これ以上何をやらかすんだと
そしてルナティスが角を曲がったのを見て
「わっぷ、な、なんですの……?」
「私の後をつけるとは、何用でしょう?」
「……っ⁉」
そこにはルナティスがいて、今ぶつかった壁というのは彼の体だった。
「貴方がちゃんと仕事をしていらっしゃらないので、観察していたのですわ」
「私が仕事をしていない……?バリバリ働いていますよ?」
確かに色々行動をしてはいたが、それは全部無意味に思える。もっとやるべき事があるのではないか。
「いつからわたくしの尾行に気づいていらしたの?」
「そうですね……壺を覗いている辺りからでしょうか」
最初からじゃないか、と自分の隠密行動の未熟さを少し恥じながらも観察していた彼の行動に対して追求する。
「何故あの空き部屋のクローゼットを開け閉めしていたのですか?」
「そこに宝の手がかりがあるかと……」
「あるわけないでしょう!!」
「えぇ…そうですか?」
おかしいですねぇと首(実際にはないので感だが)を傾げるルナティスにまだ聞きたいことがある。
「では自室を荒らしたのは?」
「そう言えば最近頭を見ていないなと思ったので少々探しました」
「ずっと付けていなさいと言いましたでしょう⁉」
「ですがあれ6キロあるんですよ?重くないですか?」
そんな事は問題ないだろうと思うが、肩こりから頭痛がする事があるので嫌です、とキッパリ断られて
「貴方も頭がない生活をすれば分かりますっ!!これが結構邪魔だと!!」
そう言い彼がバッとマジカルボックスから取り出したのは頭。白に水色のグラデーションがかかった綺麗な髪に、今は閉じられているが青い瞳をしたルナティスの頭だ。
「……ありましたわね」
「そうですね」
そう言いよいしょと頭をしっかり首にはめる彼を見て、やっとまともな会話ができると安心する。
頭をはめた状態を見たのはあのチェス大会以来だ。脇に抱えていたと思ったら
「貴方、あの戦いで死にましたわよね?」
「ええ」
「
「あの時はですね──」
──
ヴィシュヌ女王の従者達がある一点を見ていた。私もつられてそちらを見る。そこには、腹部を抑え苦しそうな表情を見せる私の大切な、大切な主の姿。
「──っ!!」
私お手製の竜人を弱体化させるはずの椅子からヴィシュヌ女王は何故か離れており、私のこの腹に感じる痛みはムームア様が殴られたものだと分かる。私でも動きを止めてしまうほどの激痛をムームア様が感じていると思うと、腸が煮えくり返る程の怒りを感じた。
「貴方達の主人はとんでもないことをしてくれましたねぇ…誰も……誰一人生かして返しませんよぉ!!」
私は怒りに身を任せ、ヴィシュヌ女王の従者達に突進する。私の大鎌が敵を裂き、裂いて、裂きまくる、そう、思っていた。
「そんな雑な攻撃、当たらないわよ!!」
天使の従者は私の鎌の刃を殴りつけ、その衝撃で私は武器から手を離してしまう。
ならばと私は、素手で彼女に殴りかかった。
「ぇっ」
天使の従者の顔に一撃叩き込むと、彼女は吹っ飛び悪魔の従者がそれを受け止める。武器がなくても戦える。それは本当だ。早く、早くこいつらを倒して私は──
「〈ドローレ・リジェクト〉!!アタリルちゃん、大丈夫ですか⁉」
「大丈夫!ありがとう!!」
あのモノクルの従者も邪魔だ、そして仮面の従者。この二人さえ殺せば幾分か戦闘が楽になる。そう思い私はモノクルの従者にまで猛スピードで踏み込む。私の蹴りで頭を吹き飛ばそう、ああ、それが良い。
「──!!」
「死んでください」
私の回し蹴りが彼女頭部に当たると思えば、それは空振りに終る。何故?…そしてあとから感じる痛み。視界に何か棒状のものが吹っ飛んでいるのが見える。
──私の足だ。
私はバランスを崩しそうになるのを飛行魔法で回避して後退する。私の足を切断したのは、赤髪の従者。
彼女は私を睨みつけながら、さらに切りかかってくる。
それを流れるように飛行して避けながら私は考える。どうすればこいつらに勝てるだろう。あんなに余裕だった私は今…追い込まれている?
「死ぬのは貴様だ!!」
「そうですかねぇ」
嗚呼、考えるのは苦手なんだ。怒りに身を任せてしまったことが私を敗北へ導こうとしている。私はただ戦って、戦って、戦えば勝てると思ってた。こんな時、彼女がいてくれたら……私達は二人でノーネームなんだ……!!
「〈ツァイト・ストップ〉!!」
私の動きが止められる。視線を動かすと、またあの仮面の従者だ。あの時殺せていればと後悔するが今更遅い。
このアビリタの効果はどのくらいだろう。彼女がいなければ、それも分からない。人狼の従者が飛び上がったと思えば弓をギリギリという音が響くまでしぼり、そして──
「〈アンセム・モルテ〉ッ──!!」
彼の放った矢が、
私の心臓を直撃する。
「──ガァッ!!」
痛い、痛い──。これが……死の痛み?
矢は私の体を貫き、痛みのあまり飛行魔法を解除してしまう。四つん這いになり床に血をぶちまける私の姿をムームア様には見られたくないなと思いながら、私はだんだんと死に向かっていた。そして遂には体の力が抜け、自分の吐いた血溜まりに倒れ込んだ。
私は慢心しすぎだのだろうか?
「さっきの仕返しですよ…このクソ野郎……死にかけたぞ」
そう言い人狼の従者が見下ろしてくるが、私は何も言えない。言い返してやろうと思えば、咳き込むように血を吐くだけだった。……そろそろ限界のようだ。私は体を仰向けにして、天を見上げた。
「ゲホッ…はぁ……な、何故勝てない、の、でしょう……?」
「貴方は確かに最強です。ですが貴方自身がその能力を存分に使いきれていない。それが敗因でしょうか」
白いフードの従者が私の問いに答えてくれる。
「何より…私達は強い信頼関係で結ばれている。1人の貴方とは違う、そこでしょうね」
1人。ひとり?違う。私にも……頼りになる相方が──
「……おい待て」
「どうしました、エンド?」
仮面の従者が焦るように皆に話しかけている。彼の視線はムームア様達の方を向いている。私もそこへ視線を向けると、ムームア様がヴィシュヌ女王に抱きついて泣いていた。
私の主人は可愛いなぁと場違いなことを思っていると、体が光り出した。
「やはりこれは致命傷でしたか……心臓に直撃でしたしね」
「待て待て、俺達の王は和解したようだぞ!!死ぬな!!」
「貴方同じような台詞2回目ですよ」
仮面の従者の言葉にツッコミを入れる人狼の従者。死ぬなと言われてもなぁと体は徐々に光の粒になり足元から散ってゆく。
「ああっ!どうしましょう⁉このままではレナータ様に叱られてしまいます!!」
「〈グレイト・ヒール〉!……駄目です効きません!!」
「このまま死んでもらっていいんじゃないですか?」
「テゾール!変なことを言うな!言霊とはあるのだぞ、本当に死んでしまう!!」
わたわたと私をどうにか助けようとしているヴィシュヌ女王の従者達を見て、私は笑った。先ほどまで敵対して殺しあっていたというのに……。おそらく彼らは、彼らの主人と似ているのだろう。
「……皆さん、私は凄く楽しかったです。……いつかまた、戦ってくれますか?」
「おい、やめろ!そういうのを死亡フラグと言うんだ!!」
「消えちまうぞっ!!この光かき集めたら大丈夫か?」
「そんなわけ──」
「──」
私は、最後に主人を想いながら、消えていった──。
──
「と、いう感じですかね」
「そう…ですか……」
「結果は残念に終わりましたが、私は貴重な経験を得ました!!」
「貴重な経験?」
「あの様な楽しい戦いはなかった!!それに……私には的確に、正確に指示を出してくれる貴方が居ないと全力が出せないようです。それを知る、良い機会になりました!!」
「!!」
実は、
2人だけの従者。どちらがムームア様の1番になりたいと、どこかで競い合う様な気持ちがありお互いを信頼出来ずにいた。だが今は、彼は
それをとても嬉しく思った。
「そんな事より、早く仕事をしなくてはいけないのでは?」
「そ、そうでございますわねっ!」
「くっ……
「ロリ?…よく分かりませんが命令に従い、詮索を続けましょう。2人で一緒に探すのと分担して探すの、どちらが効率が良いか貴方の知恵を貸してください」
「……わたくしは前王のお墓に向かいます。貴方は、隠し通路などがないか調べていいだけますか?お得意でしょう?」
「勿論、なんでも出来てしまうのが私ですから」
彼の自信満々の笑みに、
──
前王、アルヴァの墓の前に着く。城の裏にある前王とその妃、そしてムームア様の兄アーリア様の墓地。まずはムームア様の母君様とアーリア様に手を合わせたあと、アルヴァの棺の中には財宝が沢山一緒に入っていたはずだと、
「はぁ、はぁ。結構重労働ですわ……」
こっちの方をルナティスに任せた方が良かっただろうかと考えていると、やっと棺が出てくる。黄金でできた棺。余程金に執着があったのだろうなと思ったより重い棺を開けると、中には骨と金銀財宝の数々が。
「必要そうなものは……」
そう漁っていると、骨の手に何か握られていのをみつける。1つの羊皮紙だ。これだけ宝が好きなら普通はそれを手にするのではと思いながら、その羊皮紙を拝借すると骨の手がバラバラと崩れてしまった。
「……見なかったことにしますわ」
そう言い羊皮紙の中を見てみると、何かの場所を示す地図だった。どこかで見た事ある配置だなと思い記憶を探ると……
「これは…城内ですわね」
城の形と合うことから城の地図だと分かる。矢印が書かれた場所にあるのは、宝物庫だ。
──
「本当にここに宝の情報が?」
「恐らく、そうだと思われますわ」
だだっ広い宝物庫を見つめなが、わたくし達は途方に暮れていた。広い。2人だけで探すには広すぎる。
お互いトレジャーハンターが持つようなアビリタも魔法も習得していない。この中から宝に関する重要な物を探すとなると何ヵ月かかるだろうか。もう1度アルヴァの持っていた地図を見るが、宝物庫の何処とは書かれておらず落胆する。
「あ、そう言えばキーパーソンの中にテゾールさんという方がいらっしゃいましたわよね?」
「ええ」
「その方にご協力願うのはどうでしょう?」
「えぇ…私、あの方怖いです……言っときますけど私は彼に殺されたんですよっ⁉」
やだやだ怖いよ〜と顔を手で覆いながらくねくねと妙な動きをするルナティス。絶対にそんな事は思っていないだろう。逆に襲いかかってきたら返り討ちにしてやろうぐらいの意気込みだ。恐らくだが。
「ですがあちらもお忙しいはずですし……やはり止めましょう。それに
「では、私達はでやるしかありませんっ!!」
うおーっと金貨の山にダイブするルナティスをわたくしは思い切り引っぱたく。何考えてるんだこの人は……。ルナティスは1度やってみたかったんですと言うと冷静さを取り戻したようで、整理されていない宝の山や金で出来た床や壁、隠し通路がないかなどを調べ始める。
「どうされました?」
「……今考え事をしていますので静かに」
「りょーかいですっ!!」
口にチャックをするような仕草をした後黙々と作業をし始めたルナティスをどつきたくなる気持ちを我慢して、思考する。
あの強欲そうなアルヴァの考えそうな場所……探る、ムームア様から聞いた話……記憶の片鱗……そして残されていたアルヴァの日記……そのページの中の一行を記憶から引き出した。
「[私は天邪鬼だと言われた]……」
「……?」
確か、142ページ目の3行目、執事長にそう言われたという記述があったはずだと自らの記憶を信じた。
天邪鬼だと言うのなら宝の情報も恐らく逆、ここには絶対にないという事になる。元々他国と同盟を結ぶ気はなかったヤツだ。偽の地図を作っていてもおかしくはない。
「ルナティス!撤収です!!恐らくここに宝の情報はありません!!」
「えぇっ!でも最初にここにあると貴方が……」
「うるさいですわ!行きますわよ!」
それよりこれ格好良くないですかとよく分からない指輪を見せてきた彼の腕を掴み、無理やり
彼が抵抗すれば簡単に振り解けるだろうから、自分も一緒行くことを承知しているのだろう。しかし出たのはいいもののまた振り出しに戻ってしまった事に、
「どうします?」
「どうしましょうか……」
「宝の情報と言っても範囲が広くて…おや?」
ルナティスの持ってきてしまっていた指輪が光り出す。なんだと思いながら二人で見ていると、その指輪からレーザー状の光が出て、どこかを示している。
「これは、マジカルアイテムだったのですか」
「でも何の場所を……行ってみますか?」
ルナティスの問いに
「先程も来ましたわ……」
「リムラール様のお墓ですね」
前王の妃、ムームア様の母君様のお墓を指輪の光は指し
「やはりムームア様にご許可を取らなくては」
「ですがお許しになるでしょうか……というかアルヴァ様のお墓は遠慮なく掘り起こした痕跡があるのですが……?」
お互いどのような記憶の片鱗を持っているかは知らないので、彼はアルヴァに対してのムームア様の記憶は持っていないのだなと思う。簡単に記憶の片鱗の一部を伝えると、ムッとあまり見ない彼の怒りの表情を見た。
「そいつは死んで当然の人間ですね……この手で殺してやりたかったぐらいですよ」
「それ、
話し合い、きちんとムームア様に連絡を取りご許可を得ることにした。流石に墓を荒らす行為は失礼過ぎると。
「ムームア様、宝の情報が手に入るかもしれないのですが……」
『本当⁉ボクの方は全然収穫がなかったのに……。それで、どこにあるの?』
「その…恐らくリムラール様のお墓の中に」
『……』
やはり、沈黙が続く。自分の母親の墓だ、普通は怒ってもおかしくないはず。わたくしは怒鳴られるのを覚悟して返事を待った。
元々どんなものかも分からないマジカルアイテムの示す場所だ。本当は無いかもしれない。やはり勘違いかもしれませんと告げようとするとムームア様はため息をつき、許可を出す。
「……よろしいのでしょうか?」
『でも丁寧に扱ってよね!ボロボロになってたらお仕置きだからねっ!!』
そう言ってメサージュを切るムームア様の気持ちはどんなものなのだろうと考えていると、ルナティスがどうでしたと声をかけてくる。
「許可がおりました。丁寧に扱えとの事です」
「それは当然ですっ!では始めましょうか」
ルナティスがマジカルボックスからあの化石を掘り出す時に使うようなハケを取り出したのを見て、「そんなのではいつまで経っても終わりませんわ!!」と流石にツッコんだ。先程使っていたシャベルをメイドに持って来させて二人で掘り進める……と思われたがルナティスの脅威のスピードで直ぐにその作業は終わった。やはりこの作業はルナティスに任せるべきだったと思いながら棺の蓋を開ける。
「どうだったの」
背後から声が聞こえビクッと体を震わすと、図書室にこもっていたはずのムームア様がいて驚き、
今それはいいからと言いながら手を合わせた後に棺を覗くムームア様に続き、
胸の前で腕を重ねるように置かれているその腕の中には、1冊の本があった。
「【テゾーロ・オブ・ヴェリタ[下巻]】……下巻?でも、ボクが探してたのはこれだ!でかしたぞ二人とも!!」
「有り難きお言葉にございます」
リムラール様の手からそれを丁寧に取ると、ムームア様は少し寂しそうな顔をしながら自らの手でその棺を閉じた。そして本についていた汚れを払い、それをマジカルボックスにしまう。
「お前らどうやってこれを見つけたんだ?ボクは絶対図書室にあると思ったのに……」
「これでございます。宝物庫を探している際にルナティスが盗んでいたので」
「盗んでいたなどっ!誤解でございます、ムームア様!!」
「いーから見せてっ!」
ムームア様はルナティスの手からその指輪を奪うと、マジカルボックスから黒い縁のモノクルを取り出してそれをかける。それ越しに指輪を見て、ふーんと声をあげた。
「【ルック・ザ・ロスト】失くしたものを探すアイテムだ。しかもLank5。効果は1回」
「──っ!!」
「も、申し訳ございません!!そのような貴重な物と知らずに私は勝手に──」
「別にいいよ。さっきの本の方が大事だから」
もう要らないからこれあげるよと、ルナティスに指輪を投げ渡すムームア様。ルナティスはそれをおおっと掲げとても喜んで「部屋に飾りますっ!!」とはしゃいでいる。
「……スターシャ、お前はまた今度ね」
そう言い鼻で軽く笑った後に早くお母様を眠らせてあげてとシャベルを指さすムームア様に、
ムームア様はヴィシュヌ女王様との戦いで少しお変わりになった。
「スターシャ!何ニヤニヤしてるんだよ!」
「は、はいっ、申し訳ございません!!」
そう謝る
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