2 いつも通り
▪️
「ただいま」
家に入り、玄関の寒さに、まだ外にいる感覚がある。靴を脱いでそろえ、少し汗で湿ったくつ下が、付いた床の冷たさを加速させる。
急いでリビングに向かい、タイマーをかけておいたストーブの前に行きたいと走った。結姫もそれに続き、二人でドタドタと派手な足音をたてた。
コートを脱いで、カバンと一緒にソファへ投げる。これは比喩的な表現ではなく、一女子高生が、ソファ目掛けてそのままぶん投げた。どっふと音がしたが、特に壊れて困るようなものは入れていないため、二人とも気にはしなかった。
ストーブの前につき、座布団を敷いて丸くなる。その時に、湿ったくつ下を脱いで、どこかへホイ。
二人で丸くなり、互いに抱きしめるようにしているそれは、まるで仲のいい飼い猫のようだ。
「なんで抱きついてくるし!」
「寒いからじゃん。というか結姫も抱きついてるし」
二人はしばらく抱き合った後、その場で制服を脱いで、カバンと同様にソファへ投げた。
雪希は朝、そこら辺に脱ぎ散らかしたジャージを着る。結姫は、雪希のジャージを部屋まで取りに行って、それを着ていた。
「雪希の服、めっちゃいい匂いするよね。なんの洗剤つかってんの?」
私の服に鼻を押し付けるようにして匂いを嗅ぎながら聞いてくる。別に構わないけど、その様子を見ていると、なんだか少しふわっとする。
「普通の洗剤だよ?その辺のスーパーで売ってる様なやつ」
そのまま答えるが、おそらくそれは洗剤だけではなく、自分の匂いも混ざっていることに気がついた雪希は、さっきの感覚が恥ずかしさであることに気がついた。
「ちょっと、あまり嗅がないで。あの、恥ずかしいから」
「大丈夫だよ。めっちゃいい匂いだから。というか、すんすん…はぁ、ずっと嗅いでてもいいかも…」
「結姫!恥ずいからやめて!」
結姫が新しい扉を開こうとしているが、その内容は一友達として止めておきたい。というか私で開いてほしくない。
「やだなぁ、いいじゃない別に。友達なんだから」
親しき仲にも礼儀ありとは言うものなのだが、この女にはどうやらその考えはないらしい。
「雪希、こたつってもう使える?」
言いながらこたつの中に入り込むので、別に肯定否定もしなかった。
結姫はこたつで丸くなる。
我ながらくだらないと、自分自身を嘲笑い、そのままこたつの中に入った。
本当にくだらない。
このくだらなさが、自分には似合っているのが分かっていたから、雪希はまた、いつも通りを過ごしていた。
これから ゆゆゆ @yuma1225
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