最終話 心得その199

「もう疲れたよ、別れたい」


 本当は別れたいとまでは思って無いけど、疲れたのは本当だ。ここでピシッと言ってやる。もし別れることになっても構うもんか。


「え?海翔かいと、何を言ってるの?」

「だいたい交際届ってなんなんだよ?」

「ずっと待ってたのにアンタが全然告ってくれないからでしょっ。仕方ないから私から告ったけど、不安だから…アンタをがっちりと掴んどくための交際届よっ」

「どんだけ俺のこと好きなの?」

「はあ?ア、アンタ馬鹿じゃないの?口を慎みなさいよっ」

「その上から目線の喋り方も嫌だ、そんなの敬子じゃないよ」

「ご、ごめん」

「もう嫌だ、別れる」

「待ってよ、ごめんね海翔かいと、交際届を出したせいでこんなことに…」

「ねえ、今から生徒会室に行って交際届を取り消して貰おうよ!」

「ごめんね」

「うん、もう良いよ、大丈夫。生徒会室行こう!取り消してもらって普通に付き合おうよ!」

「だから…」

「うん?」

「ごめんね」


 謝り続ける敬子。取り消して貰えば大丈夫なんだけど?


「違うの、交際届なんだけどね…」

「うん?」

「取り消せないの」

「はい?」


 取り消せないとはどう言うことだ?


「心得の最後を読んで…」


「心得その199 交際届の有効期間は本校在籍中とする。なお、ひとたび届け出た者はこれを取り消すことは出来ない…」

「交際届の取り消しどころか、交際自体を取り消せないの…つまりね、この学校に在籍中は別れることは出来ないのよ!」


 急に元気になる敬子。


「ふふん、仕方ないわよね!署名捺印したんだから!同意したものと見なされるんだから!海翔、卒業するまで心得をしっかり遵守してよ!私好みの旦那さんにしつけてあげるわ。私はアンタを絶対離さないんだからねっ」


  おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

初めての男女交際でこんなにしつけられるとは 柏堂一(かやんどうはじめ) @teto1967

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ