第2話 十で神童、十五で凡人

 私の変人ぶりをお話しする前に、まず、変人になる前の平凡なお子様時代の話をしましょう!


 今では自分自身でも変人の自覚は十分に持っていますが、前書きにも書いたように、幼いころから変人街道を突っ走ってきたわけではありません。むしろ、小学校、中学校のころは目立たない地味な人でした。

 引っ込み思案の人見知り、間違ってもクラスの中心になるような存在ではなく、理不尽なことを言われても言い返すなんてことはできなくて、いつしか人目ばかり気にするようになりました。勉強ができて運動もできて放課後には友達とドッジボールや鬼ごっこ。どこにでもいる普通の子を目指しました。教育熱心な両親のおかげで自分で言うもの変ですが、学校の成績はかなり良い方だったと思います。幸い、友達にも恵まれ、運動神経もどちらかと言えば良かったので、体育祭で予期せず目立ってしまうこともありました。たまに注目を浴びることに悪い気は起きなかったけれど、区の陸上大会に学校代表で出ることになったときは、一緒に出場する同級生たちと上手くコミュニケーションが取れなくて、練習中は地獄のようでしたね。笑


 良い成績を取って周りに迷惑をかけなければ誰からも文句を言われない ......そう思っていたからこそ、自分の意見を否定されるのが怖かったのでしょう。授業には積極的に参加する方ではなかったし、毎日「先生、頼む!当てないでくれ!」と思っていました。別に問題が解けないとか宿題を忘れてきたわけでもないのに。間違えたり笑われたら恥ずかしい、そう思っていたんです。自分に自信が無かったんですね。

 ただ、レクリエーションの時間や親友たち(中学を卒業して十ウン年経ちますが、今でも定期的に会っています!)と漫画やアニメの話をしたり遊ぶ時はノリノリで参加していたので、自分が心から楽しいと思えるものには積極的でした。自分を否定されたくない、裏を返せば物凄く見栄っ張りだったので、自分が知っていて周りが知らない知識を披露したりするときは子供ながらに鼻が高かったのを覚えています。自己顕示欲を満たすために誉めてもらったり周りから賞賛されることを求めていたんだと思います。


 こうして私は、見た目は素直だけど、裏では素直の“す”の字もない本性を隠し持ったまま、都内最高峰の進学校へ進みました。当時、高校一年生、15歳。中学では特別な努力をせずとも望む地位にいられたので高校でもそこそこやっていけるだろう、中学の担任にも「お前は少し真面目すぎるところがあるから、もう少し息を抜いて生活しろ。」と言われたし、生真面目すぎるのも良くないなと、何の準備もしないまま高校生活をスタートさせてしまいました。中学の先生が言っていたのは、時には大らかな目で物事を見よ、ということで決してさぼれと言っていたわけではないのですが、その年代特有の頑張るのはカッコ悪いと思っていたこともあって、予習復習はおろか、授業中もしょっちゅう居眠りをしていました。しかし、そこは都内最高峰。周りはそれこそ、東大や医学部を目指す人たちばかりで、早稲田、慶応は受かって当たり前という環境でした。もちろん、自頭も良く勉強に対して前向きな人たちばかりだったので、あっという間に下から数えた方は早い位置にまで落ちてしまったのです。

 そこで私が思ったのは、


「この人ら、何が楽しくてそんなに勉強してんだか。理解できん!」


でした。どこで道を外れたのか、今までのような周りと一緒でありたい、置いていかれたくない、という思いは一切起きなかったのです。何故か「やったところで分らんし、周りの奴らは大して勉強してなさそうなのにテストではいい点数取るし、どうせ頑張ったとこであいつらには追い付けんから、頑張らなくていいや」と思ってしまったんですね。挫折と言えば挫折なのでしょうが(挫折するほど努力してなかったとは思うけど ...笑)、私にとってはどちらかというと開き直りに近い感覚だったと思います。そうすると不思議なもので、お勉強レースから外れた者には誰も何も干渉してこなくなりました。


退屈な授業に付き合うのは面倒だけど、誰にも邪魔されないのは天国!


当時の私はそう思っていました。話したい友達と好きなことを話し、行きたいところに行き、見たいものを見て、やりたいことをやる。私が、その他大勢から抜け出した瞬間でした。そして、私のマインドはどんどん人と180度反対の方向へ向いていくことになるのです。

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