第三話 本は人間となっていた
あれからどれだけの時間が経ったのだろうか。
時間なんて分からないが今こうして考えれてるって事は確実に意識が戻り始めているということだ。
最初に感覚が戻ってきていることが分かったのは皮膚だった。
頭と首の辺りにかけて柔らかい感触がある。
少し頭が浮いてる?
どっかで触れたことがある感触…あっ、人の肌だ。でも家には俺しかいないはず。
そんなことを頭の中で話していると徐々に身体中の関節に力が入り始めるのが分かった。
まず、手足、次に腰首、最後に全ての感覚神経。
「ぁ…」
試しに声を出して口に力が入ることを確認すると、目を開く。
最初に目に飛び込んできたのは電気の光だった。
「なんで電気がついてっ!」
眩しさに反射的に腕が目を塞ぐ。
少しずつ腕をずらしていくと、俺をのぞきこむ女の姿があった。
「おぉ、起きたぁ?おはよー」
「うわぁ?!」驚いて飛び起きて声の主を見ると、全体が白く長い髪、そして前髪の一部に固まって赤い髪が混じるソファシーツを体に巻いた女が正座していた。
「なんでそんなにビビってるのさ!よいしょっ、イタタタ。足びりびりして立てないや、えへへ」
立ち上がろうとした女は足の痺れを訴えてぺたんと床に座り込んだ。
「だ、誰なんだよ!不法侵入か?!警察に連絡……」
動揺が隠せない俺はスマホを慌ててポケットから出す。
だけど、指の細かい動きがままならない。意識が戻ったばかりだからだ。そうタジタジしていると女が「話を聞いて!」と床を這ってきて俺の足を握った。
蹴って払ってやろうと思ったがなぜか自然と気分が落ち着き、軽くなった。
「え、お前、何やったんだ。急に気持ちが楽になって……」
ふぅ、と女は安心した様な息を吐いて、座ってと俺に指示した。
「なんかしたら速攻で警察に連絡だぞ」
そう警告するとその女の前に座る。
「というかご主人様はなんでそんなに警戒してるの?意図的に私と契約したわけじゃないの?」
かなり困惑した顔をして質問してくる。
だが困惑しているのはむしろ俺の方だ。この数秒間で俺の知らない単語が二つも出た訳だし。
「まず契約ってなんだ?そしてお前は誰だ」
「あー。本当に何も知らないで私と契約したんだね。じゃあ自己紹介からするね!私の名前はbook No.4具現化の書。正式名称は対終焉用具現化の書だよ。で、契約っていうのは……」
「ちょっと待て!」
長々しい名前に加え、自分を本と言うこの女に話を割ってツッコミを入れた。
「それって人の名前じゃ無いよな?……ん、待てよ。本ってまさか俺が拾ってきた本がお前だなんて言わないよな?!」
まじか。正解だったようだ。頭を縦にブンブン動かして、笑顔でこっち見てくる。
「名推理だね!そっかぁ!拾われたんだ私〜!そりゃご主人様が何も知らない訳だ!」
一人で納得して頷いているが俺には状況が全く掴めない。
「なぁ、その、俺には何も全く分かんないんだけど教えてくれるか?」
「えっとね、簡単に言うとその拾った本が私で、ただただ読むために私を開いたら、意図せずあなたと契約ささっちゃったってこと!」
分かりやすく簡単にまとめて、笑顔を絶やさず説明してくれた。
心中複雑である。
「な、なるほど。って!そんなの信じると思うか?!証拠がないだろ証拠が!」
少し声を荒げながらツッコみ、勢いで立ち上がった。
「証拠は簡単だよ!私と契約したって事はあなたは具現化の力を使えるはずだよ!!」
「具現化の力?」
俺は首を傾げた。
「あのね、私たち本は本来、人間の欲のために作られた、ただの便利な道具なんだよ。全100冊、著者は初代が一通り100冊の物語構成ノートを作り生涯かけて20冊を書き上げ、残りは子孫が受け継ぎ、3代かかって100冊書き上げた。私たちは契約者を主人とし、主人に自分の能力が選ばれた事を誇りに思い、お役御免になるまで尽くすのが使命なんだ。で、私は具現化の書。能力は主人が望むもの、ことを作り出すことができる能力。」
真剣な顔つきで俺に説明しきると、はぁ〜と息を吐き、切り替えた笑顔で「さぁ!やってみよう!」と痺れのなくなった足で立ち上がり、レクチャーを始めた。
かなりしっかりとした長い説明を受けたが不法侵入の疑いがある奴を信じれるか?
……だがこう、ずっと頑なに言う事を聞かないのも違うので半信半疑で言うことに従ってみる。
嘘だったら警察に突き出せば良いだけだしな。
「まずは肩の高さまで利き手をパーにして上げて!」
言われた通り、右手を手をパーにして肩の高さまで上げる。
「そうそう!で、次はもう具現化をするんだけど……うーんじゃあ、私このシーツの下、裸なんだ!だから服を具現化して貰おうかな!」
「え……痴女かなんかなのか……?」
普通に引き気味な顔を見せた。
そうすると自称本は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「なんでそうなるのぉっ!?ん〜もうっ!じゃあやり方にいくよっ!後はその状態で服をイメージしながら“具現化、服!”って言うだけだから!言ったら私のエネルギーが手のひらの前に集まるから指示したら思い切り握って!」
照れ怒りながらもしっかりとやり方を説明してくれた。でも大切なのはここからだ。
「いくぞ?具現化!」
女性物の服をイメージしながらそう言い放つと自称本の全身から青白いオーラみたいなものが出てきて、俺の突き出してる右の手のひらの前に集まってくる。
そればだんだん大きくなっていき、俺はその美しい青白さに見とれてしまった。
だが野球ボールぐらいの大きさになったところでそれは熱を発し始める。
耐えられない熱さではないのだが、熱々の鉄板から少し離れたところに手を当てているぐらいには熱かった。
そんなことを感じていると、目の前に立っていた自称本がふらついて床に崩れ落ちた。
「はっ…はぁ…ぁぁ。はやくぅ…具現化する物を言って…。久しぶりにやるから…エネルギーの消費を抑えれないっ!」
自称本はとても苦しそうな顔で、まるで有酸素運動をしている時ぐらいの息切れをしている。
とても見ていられない。
なので言われた通りにステップを進めた。
「お、おう。“服!”」
そう言い放つと同時に青白い、野球ボールよりも少し大きくなったその玉を力強く握った。
握った瞬間にとても気持ちの良い破裂音と、直視できない眩い光を放ってそれは散っていった。
俺は音と光どっちにもびびってしまいとっさに目を瞑った。
破裂音の余韻がまだ部屋の中に残っているが、俺は恐る恐る目を開ける。
そして自分の右手を確認すると自分がイメージした通りの洋服を握っていた。
「んな……まじか」
「はぁ、はぁ……。ふぅー。おぉ……上手くできたね。着てくるから貸して?」
驚きを隠せていない俺に、自称本は疲れ切っている顔を無理やり笑顔にして手を差し出してきた。
「お、おう。じゃあ、これ、ソファの後ろで着ろ。」
「うん。ありがとう」
自称本は俺から服を受け取ると、ソファの手を置くところを掴んでなんとか立ち上がりソファの後ろに回った。
俺は床に座り、下を向きスマホに目をやった。
正直、本当にできるなんて思ってもいなかった。
確かによく考えてみれば気を失っていた俺を膝枕してわざわざ警察に通報される不法侵入者なんているわけないのだ。
あいつは本当に俺が拾ってきた本だったわけだ。よく思い出せば表紙もなんだか分かんない文字が書いてあったし、実際具現化っていう技も使えた。嘘は一つもなく、全て真実だったということだ。
不思議な気持ちだった。
そして、なんだか申し訳ない気持ちになった。
そんなことを思いながらスマホの電源を押すと、その事実すらも超えるような衝撃の出来事がまた俺を襲った。
「なんだ……これ。」
さっきは焦っていて通知をしっかり見れていなかったが、今改めて確認するとすごい量の通知が画面を埋め尽くしていた。
「俺は一体何日間気を失ってんだ!?」
入学式が4月6日。
今日は……
「4月13日……?!」
スマホの画面を見て驚いている俺にソファ越しで自称本が話す。
「今頃気づいたの?ご主人は今日でちょうど一週間、ずーっと意識不明のまま寝てたんだよ?」
荒かった息は整い、平然とした口調で衝撃の事実を打ち明けた。
「一週間も俺は……。まて、その間のお前と俺の栄養補給はどうなってたんだ?!」
下向きのまま、声を荒げて質問した。
「まぁまぁ落ち着いて落ち着いて」
ソファの後ろから足音が近づいて、そして俺の背中をさすり始めた。
さすられると同時に動揺と荒ぶる気持ちが落ち着いていく。
「安心するでしょ?私に触れられるの。これはね、私からご主人にエネルギーを送っているからなの。契約した私達には同じエネルギーが流れてるの。ご主人が気を失った理由はね、私を実体化するためにご主人の生体エネルギーを大量に取っちゃったからなんだ。そして私が実体化さえしちゃえば、後は生命維持に必要な量のエネルギーを寝ているご主人に送り続けるだけ。私のエネルギーは大気から得ることもできるから半永久的に送れるってわけこれが栄養補給の方法だよ、OK?」
「OK。……悪かったな。なにも分からなかったとはいえ命の恩人を犯罪者扱いしてしまったわけだ。本当にごめん。あと、話は変わるんだが、服は着終わったのか?」
そう。なぜこの話に話題を変えたかというと、急にソファの後ろから出てきて俺のことをさすり始めるから着替え終わったのかも分からず、面と向かって謝らない状況だからだ。
「あぁ!ごめんね!着替えたからこっち見ても大丈夫だよ!」
そう言われて一安心。俺は頭を起こして彼女の方を向いた。
そして彼女の方を見るな否やすぐに土下座で謝った。
「本当にごめん」
「や、やめてよっ!主人が倒れてたら介抱するのが私の役目でもあるし!私のせいでご主人が倒れた訳だし……。」
しんみりとした空気が部屋に流れた。俺らはしばらく黙ってしまった。
「あのさ。これについてはおあいこってことにしない?」
「……そうしよう」
納得できない理由がないので俺はその提案に乗るそとにした。
俺がそう答えると具現化の書の少し強張っていた顔がほぐれて、でも次は真剣な顔になって話し始める。
「あのね。とっても大事な話をするよ?実は私がここの場所にいるのはとっても大変なことなの。」
「どういうことだ?」
俺は首を傾げた。
「さっき言った私達100冊の本ってね、とっても頑丈な扉の先の無駄に広い部屋の本棚に封印されているんだ。だけど私がここにいるってことはその金庫の扉が破られたってことなの。私の名前覚えてる?」
「えっと、対なんとか用具現化の書、だろ?」
うる覚えの名前をそのまま彼女に伝えると微笑された。
「はずれぇ。もうっ、私は“対終焉用”具現化の書だよ。どういうことか分かったかな?」
「対終焉用、つまりその終焉ってやつがなんかあんのか?」
適当に答えたんだが、案外当たるもんだな。具現化の書が体全部使って大きな丸を作って見せてきた。
「終焉の書。それはこの世の生き物を根絶やしにするために書かれた本。あの作者がなぜそれを作ろうとしたのかは分からないけど、危険というのは分かりきってる。昔ね、私たちがまだ書かれたばっかりの頃に終焉の書が一度人類を滅ぼしかけたんだ。それを食い止めるために私含め3冊が対終焉用の書として指名されたの。
もしかしたら、今回金庫を破られた理由も終焉の書を利用して何かしようとしてるからなのかもって。そうしたら私は終焉の書を止めに行かなきゃならない。あなたを道連れにして。
選んで。今すぐ契約解除するか、激しい、死ぬかもしれない戦闘を最前線でするか。」
なんとも難しい選択肢を迫られた。
俺は俯き加減で考える。
具現化の書は少し緊張した顔をしている。
どっちが正解なんてわかんねぇな。
俺は部屋の中に広がっている重い空気を感じながらも、答えを出した。
「じゃあ、契約解除の仕方を教えてもらいたい。」
俺のその一言で具現化の書は一瞬唖然とした顔になり、苦笑した。
「そうだよね。うん。ごめん。変な期待してた。」
彼女は残念そうに俯いて肘を寄せた。
「あ、いや、そういうんじゃないんだ。一応知っておきたいだけで……。お、俺は、恩をなかったことにするそんな最低な奴じゃないからな!俺にできることならやるつもりだ!最前線での戦闘だってやってやるよ!だから、そんな悲しそうな顔すんなよ。な?」
誠心誠意誤解を解こうと熱意を伝えた。
そうすると彼女は少し顔を上げて目を逸らす。
「信じていいんだね?」
「当たり前だ!」
大きく頷いた。
やったー!と叫んで彼女はソファにダイブする。これでようやく互いの心持ちも決まった。よか…ないな。待てよ、これからこいつはどうするんだ?そしてなんて呼べばいいんだ?!具現化の書か?いや無理だろぉ。
「おい」
ソファの上でバタバタしている具現化の書に声をかけた。
「ん?なぁに?」
「お前、人間の名前はないのか?流石に具現化の書っては長いし」
その質問に頭に両手の人差し指を押し付けて考える。
そして閃いたように俺を指差した。
「私、緑川水希!」
「おいどこから出てきたんだその名前」
間髪入れずに真顔でツッコむ。
「私は本だよ!簡単に読むことはできないけど一応純情青春ものの物語が書かれてるのだ!で、その主人公の女の子が緑川水希ってわけ!」
何故か誇らしげに俺にそういうのだった。
「あともう一つ、お前これからどうするんだ?」
本、いや。水希はなぜかニヤついている。そしてソファから立ち上がり、俺の手を握って口のあたりまで持っていく。
「一生お世話するよ?ご主人様っ」
満面の笑だ。可愛い。
いや、そうじゃない!つまり、この言動から察するに水希は俺と一緒に住むということだ。まぁ確かに契約してるのにお前はどっか行っとけ。は、おかしな話だ。ちょうど寂しかった所だ。ちょうどいい。ん〜、いいのか?よくはないか。
自問自答を心の中で繰り返した。
「よし、風呂入ってくるかな。」
結局どう返事していいか分からなくなった。
だから逃げることにした。握られてた手も振り払う。
「ちょぉぉい!聞いといて返事なし?!ねぇぇぇ!早歩きでお風呂に行かないでよぉぉ!」
後ろで俺を引き留めようとする水希を無視して洗面所のドアを閉めた。
「ふぅ。あいつと話してるとなんか疲れるような気がするな。てか流石に汚ねぇよな、さっさと入っちゃお」
家から出ていないとはいえ倒れている間汗とかかいてたはずだ、というか一週間も入ってないのは不快すぎる。
服を脱いで風呂場の扉を開けた。
浴槽の広さは銭湯の半分ぐらいの大きさで、洗面場は大人3人入っても余裕なぐらいだ。
ちなみにシャワーは一つしかないので3人入れても入りたくない。
俺はシャンプーを手に出して髪を洗う。
「いやぁ、気持ちいいわぁ」
大きな独り言が勝手に漏れた。
無我夢中で髪を洗っていると洗面所のドアが開く音がした。
「ご主人、タオルと着替えカゴに入れておくから」
「おぉサンキュ……え?お前なんでタオルとか衣類がしまってるとこ分かるんだ?」
「倒れている間ずっと看病だけしてたわけないじゃん、家の中の埃の場所まで覚えたよ!」
衝撃告白すぎる。別に部屋に見られたくないものはないが。
微妙に心臓がゾワゾワするなか髪にお湯をかける。
髪の泡が落ちて排水溝に流れていく。
ようやく髪のぬめりが全て落ちかけたそのときだった。
「お邪魔しまぁす!」
風呂場の扉が急に開くとタオルを巻いた水希が入ってきた。
「うぉぉ?!なんで入ってくるんだよ!俺入ってるの見えてねぇのか?!」
下に目を逸らして大声で怒鳴る。それでも水希は冷静に当たり前のように扉を閉めた。
「もちろん入ってるのは分かってるよ?だけど身の回りのお世話をするのも契約本の仕事だから、ね。背中を流させてもらおうと……」
俺の座っている後ろに水希が座った。
「い、いいから。自分でできるしさ……」
そんな俺の言葉は聞こえていないのか水希はボディタオルを棒からとって水につけた。
「ご主人、石鹸とって」
スッと右手が真横から出てきた。
「………あぁ、もう!はい!」
言われるがままその手に石鹸を置く。
その手が引っ込むとボディタオルとこすり合せる音が聞こえだす。
「じゃあ擦るよ」
そう宣言してまもなく俺の背中に心地いい感触が上下する。
「かゆいところはない??」
「大丈夫……」
そう返すと背中全体をゴシゴシと擦る。
少し沈黙が続いたが俺が話を振った。
「なぁ、その、ご主人って言うのやめないか?」
微妙に気になっていたのだ。というか普段からそう言われるとおかしな人たちに見られる。
「え、じゃあ……おにい、ちゃん?」
何故そうなった。ある一部の人たちにはいいかも知れないがご主人よりも確実に危険度が上がる。
「いや、琉夏でいいよ。というかそう呼んでくれ!」
何故か少し困った声を出しているが、なんとか納得したようだ。
「分かった。主人には失礼だけど、それが望みなら。さて、じゃあ次前ね」
自然な流れで話は進む。うん、と言って前を任せようとしたがそれはやばいだろ。いろんな意味で。
「ストップっ!前はいいから!背中ありがとうっ!」
水希の手から無理やりタオルを取って自分で前を擦る。
「ちぇ。流れに任せればいいのに」
「いやいや、いいから自分の頭でも洗ってろ」
そういってシャンプーを渡した。
「あれ?追い出さないんだ」
シャンプーのポンプを押しながら聞いてくる。
「言ってもどうせ出ないだろ。良くはないけど諦めた」
下を向くのを意識しつつ前をゴシゴシと擦る。
「分かってるねぇ、いい判断だよ」
ちょっと嬉しそうにそう言うと髪を洗う音が聞こえ始める。
少し経って俺は体の泡を流すと湯船に浸かる。
「ふぅ、あぁいい」
おっさんのように声が漏れてしまった。
湯船に入ってしばらく天井を見ていたがチラッと洗い場の方を見る。
水希がちょうど髪を洗い終わって流してるところだった。そして流し終わると勢いよく体を反って髪を後ろにやる。
「あー、今琉夏こっち見てたでしょ〜?エッチ〜」
「たまたまだよ!そしてそう言いながらニヤニヤすんな!」
「ニヤニヤなんてしてないよぉ。ワクワクしてるんだよぉ?」
俺をにやけた顔で見つめたまま水希は湯船に浸かった。
そして俺の方に寄ってくる。
「こっちくんなよ!広い風呂なんだから端に行け!」
俺は赤くなる顔を天井にやって追い払おうとする。
だがまたからかっているのか右手をガシッと掴まれた。
「何やってんだよ、話聞いてたのか?!」
「ねぇ、琉夏」
さっきの時とは違う低いトーンで話しかけてくる。
「な、なんだよ。」
「この腕の傷跡ってどこでつけたの。いつついたの。」
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