第119話 神官様はえらい人
「まあ、企業秘密だな。こんな成りでも、一応『神官』なもので」
神官。つまり、神に仕える者。簡単にいうと「神様の代弁者」だ。
この神官の会合も言うなれば『神様の命によって集められた会議』であり、一般市民がその内容を知ることはできない。そういう意味での
「とにかく、神官は『神様に一番近い役職』と言われているくらいえらいの。そういう意味では国王よりも凄いと思っていいわ」
「そ、そうなんか?」
ということは、本来ならとても「さん付け」で呼んではいけないほどのえらい人ということ。他の神官だったら切腹物の案件らしい。
神官様のお言葉は神様のお言葉。
治癒魔法も神様のご加護だし、
そんな凄い人なのだが、当の本人は豪快に笑っている。
「神官といっても役職がそれなだけで、ただの人だ。堅苦しいのは嫌だから本当はムギトくらいの距離感がちょうどいいんだがな」
「もう……神官様ったら」
ミドリーさんの弾ける笑顔にアンジェは「やれやれ」と頬を引き攣らせる。ただ、こうして改めて神官のことを知ることで、ミドリーさんが『オルヴィルカ』の人にここまで慕われている理由がわかった気がする。
権力を持ちながらも横柄にならず、民を思う。彼こそが神官の鑑なのだろう。
――まあ、
「そういう訳だ。しばらく留守にするから、よろしく頼んだぞ」
ミドリーさんはニッと笑ってパシンっと俺の背中を叩く。彼は軽く叩いたつもりだろうが、これだけでめちゃくちゃ痛い。ただ、そんなことを言えるはずもなく、「了解っす……」と苦笑いで返した。
無論、どこへ行くだとか、何日空けるだとか、そういうのも言えない。俺たちは彼が無事に戻ってくるのを祈って待つだけだ。
「では、お気をつけて」
「いってらっしゃーい」
アンジェとリオンに見送られ、ミドリーさんは笑みを含めながら軽く手を掲げる。
――この旅立ちが、新たな事件の引き金になるとは知らずに。
それは、ミドリーさんは旅立って三日程経った日のことだ。
まだ完全に出来上がってはいないが、この日から閉鎖していたギルドの集会所も再開となった。
ようやく集会所付近にも活気が戻り、街の人やギルドの職員もホッと胸を撫で下ろしていた。
ギルドも再開し、
内容はクーラの水と薬草の回収。薬草を回収する分、初めて受けた
簡単な
そして俺たちの
すると、ちょうどセリナとリオンもたどり着いたところで俺たちの姿を見るとリオンは嬉しそうに手を振った。
「ムギト君! アンジェ君! 見て見て!」
そう言ってリオンが背中を向けると、木でできた杖が背負われていた。しかも背中で背負えるようにホルダーまで付いている。
「リオちゃん、この杖は?」
口に手を当てて驚くアンジェの隣で、セリナが「うふふ」と笑う。
「お礼の品です。リオン君、武器がないようだったので」
「え、これセリナが作ったのか?」
「はい。リハビリがてら、ですが」
目を細めるセリナの隣でリオンは得意気な表情を浮かべながら背負っていた杖を構えた。
杖はリオンの身長くらいの長さがあり、先端に緑色の宝玉が埋め込まれていた。
長さはあるが華奢なリオンでも振り回せるくらいの軽さで、
「きっとリオン君は近距離よりも遠距離のほうが向いてると思ったので、魔法特化の武器にしてみました」
「ありがとうセリちゃん。これで鬼に金棒ね」
パチンとウインクするアンジェにセリナは「それほどでも」と首を振る。
武器だけではない。リオンの衣類もたくさん買ってもらったようで、彼女が持つ買い物籠には衣類がいっぱい入っていた。
「病み上がりだったのに、大荷物で悪かったな」
頭を搔きながら申し訳なく言うが、セリナはにこやかな表情で「大丈夫です」と言い切る。
「ゴレちゃんとムンちゃんにも運ぶの手伝ってもらったので」
と、セリナが言うと、呼ばれたと思ったのか地面から二体のゴーレム……ゴレちゃんとムンちゃんが現れた。
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