第112話 設定詰め込みすぎじゃね?

「副属性に関しては階級クラスによるわね。魔法を主に使う階級クラスだと扱えることが多いけれど……」

「どっちかといえば副属性魔法って属性魔法と合わさった魔法のことをいうんだよな。ほら、お前だって氷と風が混ざった魔法を使えるだろ?」

「え? あ、『冷たい風コルド・ウィンド』ってそうなのか」



 フーリに言われるまで気づかなかったが、確かにあの魔法は「氷」と「風」が合わさっている。



 けれどもリオンの奴は「風」と「光」を両方扱えている。本当に魔法に関してはチート級だ。当の本人はその凄さがわかっておらず、目をぱちくりさせているけれども。



「こんな子供でもここまで魔法を扱えるというのなら、これこそがエルフの力なのか。それとも彼の遺伝子の中にとんでもない魔力マジックパワーを持つ者がいるのか……」



 ミドリーさんがリオンを見下ろしながら顎ひげに手を当てて考える。

 遺伝が魔法に顕著に表れるというのなら、一つ心当たりがあった。



「そういえば、リオンの母親は【創造者クリエイター】っすよ。オリビアっつうんすけど」

「オリビアだって!?」



 彼女の名前にミドリーさんだけでなく、フーリやセバスさんまで度肝を抜いた。



「知ってるのか?」

「知ってるも何も、ギルドで働いていたらその名前を知らない奴なんていないぜ」



 目を丸くするフーリの隣で、セバスさんが真顔でクイッと眼鏡を上げる。



「【創造者クリエイター】オリビア……若くしてギルドの【錬金術師アルケミスト】を取りまとめた君主なのですが、絶対的な地位にいながらある日突然ギルドを辞めて旅に出たという人でしてね……」

「要するに、ギルドのレジェンドだったってことか」



 しかし、ライザの話からすると天才的に魔力マジックパワーや能力値が高かったらしいから、ギルドでもその扱いになるのはわかる気がする。



 つまり、元から魔力マジックパワーの高い光属性のジャンさんと、人間の中ではぶっ飛んだ能力値のオリビアさんの両方の血を受け継いだ結果、こんなチートが生まれたという訳か。



「しかし、オリビアがギルドからいなくなったのは二十五年近く前の話だろう? それが、こんなにも幼い子がいるとは……」



「う~ん」と唸るミドリーさんだが、リオンは相変わらず目をパチクリさせている。オリビアのことを話しても、彼にとっては物心つく前の話だ。おそらくピンと来ていないのだろう。



 それにしても、オリビアさんがそこまで有名だったのは。世の中わからないものだ。



「でも、そこまで凄いのなら、この子の階級クラスっていったいなんなのかしらね」



 アンジェが腕を組み、人差し指を頬に当てながらふと尋ねる。



「ライザは【治療師ヒーラー】じゃないって言っていたけど、実際どうなんだろ」

「リオちゃん。自分の階級クラス知ってる?」



 アンジェはリオンに視線を合わせるようにしゃがんで訊いてみるが、リオンは不思議そうな顔で首を傾げる。

 このリアクションからすれば、階級クラスのこと自体あまりわかっていなさそうだ。



「というか、ミドリーさんって階級クラスわかるんじゃなかったでしたっけ? リオンのはどうなんすか?」



 思い返せば、前にここで魔力マジックパワーを探られた。

 俺の時は魔力マジックパワーが足りないと言って階級クラスがバレずに済んだが、リオンほど魔力マジックパワーがあるのならわかるのではないだろうか。



 と、訊いてはみたものの、ミドリーさんの表情は浮かない。



「できるかもしれないが、魔力マジックパワーは十五歳辺りでないと安定しない。いくらリオンの魔力マジックパワーが高かろうが、その年齢に達していない彼の魔力マジックパワーを擦れるだろうか」

「な、なるほど……リオンはせいぜい十歳くらいだもんな」



 となると、リオンの階級クラスを探るのは難しそうか。

 そう思っていた矢先、今まで黙っていたリオンの口が徐に開いた。



「僕、十八歳だよ?」

「はっ!?」



 この発言にその場にいた誰もが驚愕する。

 それもそのはずだ。こんな幼い姿をしているのに、そんな十八歳とか言われたって信じられない。



 見た目は子供。中身は大人ということか? いや、中身が大人にも見えないのだけれども。



 みんながみんな信じられないでいる最中、ミドリーさんだけが「そうか」と納得したように頷く。



「エルフは我々の人間の倍以上の寿命がある。もしかすると、体の老化、または成長も人間の半分のスピードなのかもしれない」

「つまるところ、人間でいうと九歳ってことか……ペットかよ」



 人間に「人間でいうと」なんて言葉初めて使ったわ。

 というか、こいつだけ設定詰めすぎじゃない? ハーフエルフというだけで相当だと思うのに、合法ロリかよ。



「あれ? つうことは、ライザの年齢って?」

「四十四」

「おっさんじゃねえかよ! ずっと同い年タメだと思ってたわ!」



 リオンの回答に頭を抱える。あ、でも、人間でいえば二十二歳だからやはり同い年タメか。ややこしいわ、もう。



 そんな喚いている中、ミドリーさんが切り替えさせるように「コホン」とわざとらしく咳をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る