第3話 初対面のリアクションはだいたいそんなもん
俺の言葉にノアはモニターの画像の目元をズームした。
そこには、確かに俺と酷似した顔がある。特徴的な三白眼も同じだ。だが、俺と頼人の違いはそこにある。
「ほら、こいつのほうが俺より黒目が大きいだろ。それに、こいつの右目の下には泣きぼくろがあるが、俺にはねえ」
黒目が大きいことであいつのほうが顔が整っているのは悔しいが、ここが俺と頼人の決定的な違いだから仕方がない。
それでも信じられないのか、ノアは口をあんぐりと開けながら、震えた手で俺を指した。
「馬鹿な……だって俺があの世界を探した時はお前しか……」
そこまで言いかけたところでやっと理解したのか、ノアは持ち前の切れ長の目を見開く。
そんな彼に俺は呆れた表情で答えた。
「俺は
「双子……だと……」
余程衝撃的だったのか、ノアは血の引けた青白い顔になり、崩れるように両膝ついてうなだれた。
「……確かにお前を見た時、上司が言うほど優れた奴にも見えなかったが……そういうことだったのか……」
「おいコラ。全部聞こえてるぞこの野郎」
ブツブツと呟くノアに思わずツッコミを入れる。
しかし、ノアはそれどころではないようで、自分の失態に肩を落としていた。
そう思ったのも束の間、ノアはガバッと顔を上げ、ギラギラとした目で俺を見てきた。
「もうこの際お前でいい。おい、魔王をぶっ飛ばすぞ」
「どんだけテキトウなんだよ! 嫌に決まってるだろ!」
「しゃーねえだろ他に手立てがねえんだし! それに普通双子だと思うかよ!」
「俺のせいかよ! どう考えてもお前の下調べ不足だろ!!」
お互い睨み合い、ワーギャーと叫び喚く。
正直俺は弟に間違えられた時点で魔王退治のやる気は削ぐなわれていた。
弟の優秀さは俺も身をもって知っている。成績優秀。運動神経抜群。大学も都内の国公立に行ったし、毎年学年首席を取っているらしい。
悔しいが、魔王退治に勇者としてスカウトされるのもわかる気がするのだ。
だが、ノアがこんなに必死なのにも理由があるらしかった。
「もう
「待て待て待て。俺がいつお前と契約したんだ」
「ここに来る前に話をつけただろ」
ノアに言われ、不審に思いながらも彼との会話を思い出す。
確か道端で突然猫のこいつに話しかけられたのだ。
確か……。
――お前、世界を変えたいか?
――まあ……変えられるものなら、変えたいけど……。
「あれかぁぁぁ!!」
ちょっと待て。あれが契約か?
あんな漠然としているうえに誘導じみた問いで契約が成り立つというのか。
「テメエ! 契約するならもっと丁寧に説明しろよ!」
「説明したところでお前は魔王を倒すことに同意したのかよ。こっちの作戦勝ちだ」
「もう詐欺じゃねえかよ! そんな契約破棄しろ、破棄!!」
喚く俺がうるさいのか、ノアは俺から目線を逸らし、面倒臭そうに息を吐いた。
「できることなら俺もしてえよ。でも、一度した契約は案内人からは破棄できねえし、お前も
「……は?」
あまりにもノアがさらりと言うものだから危うく聞き逃すところだった。
けれども、今彼ははっきりと言った――俺が、もう死んでいると。
「どういうことだよ……俺が死んだって」
ノアに詰め寄るように問うと、ノアはばつが悪そうに頬を掻いた。
「信じられないなら観せてやるよ」
そう言ってノアがモニターに手をかざすと、パッと映像が変わった。
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