第14話 チナ王国
人気のない場所に降り立つと、街へと足を運んでいく。
空を飛んで入国するのはもちろん密入国で違法。湧き出てくる罪悪感を抑え込んで、僕は生きることを選んだ。
とはいってもまあ、僕はもう既に罪を犯している。
人を殺し、人を救うためだったとはいえ、何人もの未来を奪った。これからあったかもしれない楽しい未来を奪い、そして彼ら彼女らの家族までもを悲しませてしまっただろう。
それに比べれば取るに足らないような罪だった。
しかし、やはり人を殺したんだと考えると自己嫌悪に苛まれる。
もうあの場所で死んでいればよかったとか、そうすれば楽だったのにとか、そんなネガティブな思考が頭を過ってしまう。
生き延びた分、彼ら彼女らの分まで生きなければならないのに、何て言うのは気をごまかすためのお為ごかしなのだろうか。
「おーい。いぶくん、大丈夫?」
「っ……うん、大丈夫だよ」
脳内に囚われていた僕の意識を、慣れない呼称でエリシアに呼び戻される。
ちなみに、エリシアが僕をこの呼称で呼び始めたのはついさっき。
僕がエリシアさんを美人と言ってから、恥ずかしがりつつも実は妙に機嫌がよかったりする。そんなに喜んでもらったら、こっちも嬉しい。
中国の街は、壮大だった。
所狭しと並ぶビルからは滝のように人が溢れ出し、ここに来る前までの大草原と同じ国だと思えないような感じだ。
っていうか、ここは中国じゃなくてチナ王国だったな。多分中国に当たるんだろうけど。
「何でもあるねー」
「うん。日本……じゃなくてジパング帝国も凄かったけどチナ王国はまた別ベクトルで凄い感じがする」
この世界に来て思うのは、魔術があるせいか、この世界は前にいた世界よりも進んでいる。
なんて、前の世界のことを考えると家族の顔が思い浮かんで泣きそうになってしまうのだけれど。
「ねえ、日本に帰る方法って、あるの?」
「んー、まああるにはあるよ。何々、家族が恋しくなっちゃったの?」
「ま、まあちょっとだけ……」
「何それかわいー!」
前の世界でも女子高生に何度もかけられた言葉だった。
でも、この世界は違う。何が違うって、生き物が違う。
生易しい動物なんかじゃない。毒をもつ動物なんかよりもずっと強力な生物がいる。
特に、チナ王国は人が多いため、魔物が餌を求めて集まりやすい。
その証拠に、ほら。
————僕たちの目の前に、巨大な怪物が現れていた。
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