第12話 旅路

 脱獄して、旅を始めて、一週間がたった。

 一週間がたった今では脱獄犯が強力であるということが知れ渡っており、僕たち二人は今指名手配犯だ。

 もちろん覆面を付けて行動するしかないし、ある程度の資金を得たらこの国を出ていこうと思っている。


 今この国で目立った行動はできないし、資格がいらず誰でもなれる冒険者になるには顔を晒す必要がある。

 勿論そんなことはできないので、僕らは今馬車などの護衛として働いている。

 民間の馬車の護衛は資格もいらず、身分を晒す必要もないためやりやすいが、いかんせん給料が低い。


「国を出るのにあと一か月はかかるな……」

「いいんじゃないの? 私はこの生活、結構好きだよ。新鮮だし」


 王女様は案外安宿でもご満悦らしい。

 それは大層ありがたいことだが、このままだと見つかるリスクが高まってしまうのだ。今ではもう警察も動き出しているのだから。


「一番厄介なのは警察犬だね」

「うん……匂いまで追跡されたら流石に厳しいかも」


 僕らは一刻も早くこの国を出なければならない。

 この国を出て隣国のさらに隣国まで逃げるとすれば、かなりの距離があるため、車を使わなければいけないだろう。

 馬車は余りに高級すぎる。


 しかし自動車で隣国に行くためには自動車代、免許を得るための講習代などの様々な費用がかかる。

 まずはそれらを稼がねばならないが……


「その前に見つかるよなあ……」

「何かほかの方法を探さないとね……」


 二人して深く溜息を吐く。

 でも、こんな風にいつまでもうじうじ考えていたって仕方ない。

 だから。


「取り敢えず遊ぼーっ!」


 それが僕たちの唯一の楽しみ。辛く、いつ見つかるか分からない恐怖の生活の中での、数少ない楽しみの一つだった。


「将棋ってゲームをしたいんだけど……」

「あ、それならあるよ!」

「やっぱりあるんだ。もうここ日本だよね……」


 実はここ数日新しいゲームをしようとすると、それが必ずあるのである。もうここ日本じゃないかってくらいに。

 将棋もあったらしく、宿の受付で借りることができた。

 相当ぼろいが、遊ぶことはできる。


「桂馬で飛ぶーっ」


 物凄く楽しそうに遊ぶエリシアを見て、そしてその言葉に引っ掛かった。


「飛行機ってこの世界にもあるのか?」

「うーん。あるけど高いよ……」


 まあ、だよな……。思い付きで言ってみたが、やっぱり自動車で行く方が後々のことも考えるといいだろう。

 そもそもバスト化の公共交通機関での移動をしないのだって正体バレを防ぐためなんだし。


「じゃあ、黒魔術で空飛べないの?」

「……っ! もしかしたら……」


 僕たちはこうして、一縷の望みを得た。

 

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