奇跡知らずのメリオ

I/O

奇跡知らずのメリオ

 冒険者ギルドの中をうろうろ彷徨う一人の青年。

 身の丈以上の長い棒クオータースタッフを抱えて冒険者のパーティに声をかけている。


「あの、聖職者のメンバー募集はありませんか?」


「ウチは間に合ってるよ。悪いね」


 声をかけられたパーティのリーダーであろう戦士は申し訳なさそうに返事をする。

 青年はそうですかと頭を下げ、他のパーティに話しかけるが色よい返事はもらえていないようだ。


「アンタ知ってるよ。メリオだろ?」


「えっ?」


 声をかけた4つ目のパーティで初めて断り以外の言葉を得て青年はぱっと顔を上げる。


「栗色の髪で青い帯、そして長い棒を持つ聖職者メリオ。」


 目つきの鋭い赤い髪の女冒険者が青年の各所を指差しながら特徴を並べていく。


「またの名を『奇跡知らずのメリオ』。

 アンタここらじゃちょっとした有名人だよ。聖職者なのに癒しも使えない役立たずってんでね。これ以上変に名前が売れる前に街を離れた方がいい。」


 女冒険者は親切で言っているのであろうが、目つきが鋭いため脅しているように見える。

 女冒険者の背後にはクスクスと嘲笑を浮かべる冒険者の姿も目に入る。


「す、すみません……」


 メリオと呼ばれた青年はへらっと愛想笑いを浮かべて女冒険者に頭を下げると、誰もいないギルドの端の席に腰を下ろす。


「はぁ……今日も厳しいみたいですね。これも神の試練なのでしょう」


 メリオは毎日ギルドで仲間を募集しているが未だにパーティを組めていない。

 パーティが組めないときは一人ソロで薬草集めなどの依頼クエストをこなして糊口をしのいでいた。


「おいおまえ!」


 メリオは窓から外を眺め、一度神殿に戻るのもいいかもしれないとぼんやりと考えていると二人組の少年少女に声を掛けられる。


「はい?」


「俺様は英雄になる男ポッチだ! こっちはライラ。お前パーティを探してるんだろ? 俺様が組んでやるからありがたく思え!」


 威勢のいい金髪の少年はまだ12、3歳ぐらいだろうか。冒険者というには幼い。

 茶色というよりは艶のある銅色の髪の少女ライラはポッチ少年の腕をひっぱりながらペコペコと頭を下げる。


「ごめんなさい。こいつ口が悪くって。許してやってください。ほら、行くよ!」


「何言ってるんだ。お前だって聖職者が欲しいって言ってただろ?」


「いや、それはそうだけどこの人はその……」


 ポッチ少年に迫られると少女ライラはメリオをちらりと見やり、言いにくそうに口ごもる。

 メリオの悪評はこんな子供達にも伝わっているようだ。


「ポンコツ聖職者でも使いこなすのが真の英雄ってもんだ! 違うか?」


「本人の前で言いますかねそれ」


 メリオは二人のやり取りを苦笑しながら眺めている。

 少年の装備はショートソード。少女は矢筒を背負っているので弓を使うのだろう。


「それで、何を倒すのですか?」


「ゴブリンだ!」


 ゴブリンは弱いけど数が多くてめんどくさい魔物の筆頭だ。

 危険は少ないが進んで倒す者も少ないので初級者が担当する事が多い。

「襲ってくる魔物」「人型の魔物」を殺す事に慣れるための通過儀礼とも言える。


「ゴブリンなら私でもなんとかなるでしょう。お供しますよ」


 ギルドから出るときには『大口叩き』には『奇跡知らず』がお似合いだと揶揄されたりはしたが、準備を整えてポッチとライラとメリオの三人は街の外にある雑木林に向かっていた。


「で、メリオだっけ? 奇跡が使えないってのは本当なのか?」


 ポッチが歩きながら声を掛ける。

 ショートソードの他には少しだけ中身が入った革袋を肩から下げただけの簡単な装備だ。

 メリオはフフフと微笑んで答える。


「とんでもありません。祝福の奇跡ぐらいは使えますよ。何と言っても聖職者ですから」


「それで他には?」


 口を挟んだライラにじっと見つめられてメリオは視線を逸らす。


「まだ信心が足りないのでしょう。いずれ授けられる事になるはずです」


 メリオは天に向けて祈りを捧げる。

 その表情に疑いの色はない。


「つまり、他には使えないのね。ひとつしか使えない奇跡をとは言わないものよ?」


 ライラはため息をつきながら、私がしっかりしないとと思いを新たにする。




「いたわ」


 しばらく雑木林を進むとライラが足を止めた。

 身を伏せるように指示を出す。


「目がいいのですね」


 メリオは感心する。


「ライラは村でも一番の弓使いだ。これぐらいは当然だぜ」


 ポッチが得意げに鼻を鳴らしつつショートソードを抜く。


「それで、何匹ぐらいいるんだ?」


「3匹ね」


「よし。もう少し近づいて一気に倒そう。仲間を呼ばれると厄介だ」


「ではわたしは祝福を」


 メリオが神に祈りを捧げると三人をうっすらと光が包み込み、消える。


「うわ、うっす! あっ……」


 ライラは思わず声に出し慌てて口を押える。

 一般的な聖職者の祝福はもっと強い光を放つからだ。


「わたしもまだ信心が足りないようですね」


 メリオはしょんぼりしながらも神に祈りを捧げる。

 熱心な信徒っぽいのに不思議な事もあるものねとライラがフォローを入れた。


「まぁ、ゴブリン相手だ。なんとかなるさ! 行くぞ!」


 三人は身を低くして木の陰を使いながらゴブリンに近づき、ライラとポッチがアイコンタクトを交わすとライラは弓を構え、ポッチが剣を構えて飛び出す。

 やや遅れてポッチにメリオも続いた。


 突然現れた人間に驚いたゴブリンがポッチに向き直ると同時に1匹のゴブリンの頭に矢が突き刺さりギャっと呻いて崩れ落ちる。


「いいぞライラ!」


 ポッチは飛び出した勢いのまま残ったゴブリン2匹に斬りかかる。

 ゴブリンの武器は粗末なナイフ。


 ボッチはゴブリンが突き出したナイフを横っ飛びで避けるとショートソードを振り下ろす。

 かわし損ねたゴブリンの脇腹に血の線が浮かぶ。


「チッ、浅いか!」


 ポッチはもう1匹のゴブリンが振り回すナイフをバックステップで避け再度斬りかかる。

 ゴブリン相手とはいえなかなかに経験を積んでいるようだ。

 メリオはポッチの後ろでその様子を見ている。


「ちょっとメリオ! あなたも何かしなさいよ!」


「え? わたし聖職者ですよ? 後衛ですよ後衛。それに祝福があるから大丈夫です。神のご加護があります!」


 特に何もしないメリオにいらだったライラが声を上げるがメリオはどこ吹く風だ。


「あんなペラペラの祝福でよくそこまで自信満々に言えるわね……」


 呆れてものも言えないとはこの事だ。

 確かにゴブリンの2匹程度ならポッチでもなんとかなるとは思うが、だからと言って何もしなくていいというわけではないだろう。


「大丈夫だ! これぐらい俺様の敵じゃない!」


 ポッチはゴブリン2匹の攻撃を避けつつ剣を振るって手傷を追わせていくが、ゴブリンも必死だ。1匹の攻撃に合わせてもう1匹が捨て身のタックルを仕掛ける。


「あっ! ポッチ危ない!」


 思わずライラが声を上げたその時、タックルを仕掛けたゴブリンが足を滑らせて転倒する。


「今です!」


 メリオが声を上げるとポッチはすっ転んだゴブリンに剣を突き立てる。

 残ったゴブリンは劣勢を悟って逃げ出したがライラの矢が背中に刺さると断末魔をあげて息絶えた。


「さすが未来の英雄ですね。いい戦いっぷりでしたよ。わたしの祝福も役に立ちましたし」


 メリオは満足そうにうんうんと頷く。

 ゴブリンが転んだのは神のご加護だと言わんばかりだ。


「まぁな。俺様も2匹相手に無傷で倒せるようになったのは嬉しいぜ」


 ポッチも満足がいく戦いだったようだが、ライラはパンパンと手を叩いて悦に浸ってる男共に厳しく促す。


「はいはい、ゴブリンの悲鳴で仲間が来るかもしれないから早く魔石を取ってここを離れるわよ」


 魔石は魔物の討伐証であり、冒険者の主な収入源だ。

 ライラはポッチが倒したゴブリンの胸を切り裂き小さな魔石を取り出す。

 ポッチとメリオもそれぞれ弓で倒れたゴブリンから魔石を取り出している。


「あら?」


 ライラは倒れたゴブリンの足の指が妙な方向に曲がっているのに気が付いた。

 戦闘中にポッチがたまたま踏んだのだろうか。


「確かに神の加護かもしれないわね」


 ライラは苦笑するとナイフについた血を木の葉で落とし、布で拭いた。


「ライラ、終わったぞ」

「こっちも終わりました」


 ポットとメリオも作業を終え集まってきた。


「じゃあ移動しましょう。ポッチ、安全な場所で一度休憩するのはどう?」


 もう少しゴブリンを倒したいが休憩してポッチの体力を回復させた方が安心だとライラが提案するとポッチは頷いて雑木林の外に向かって歩き出す。


「待ってください」


 メリオが足を止めると二人が驚いて振り返る。


「何かいます」


 ライラはいぶかしげにメリオを見ると集中して周囲の様子を探る。


「囲まれてる!?」


「なんだって!?」


「まずいですね。賢い個体がいるのかもしれません。」


 焦りの表情を見せるポッチとライラ。

 一方メリオは比較的落ち着いている。


「アンタよく気が付いたわね」


 知覚能力で劣っているとは思いたくないライラである。


「神のお告げがありましたので」


「来るぞ。構えろ」


 ポッチは低い声で呟くと、周囲の茂みからゴブリンが現れる。

 その数は5匹だが……


「ゴブリンファイター!」


 ライラが苦虫をつぶしたような表情で声を上げる。

 1匹だけ大きな剣を持っている人間の大人サイズのゴブリンがゴブリンファイター。

 その強さは普通のゴブリンとは比較にならない。ポッチでは力不足だ。


「ポッチ、無理だよ。逃げよう」


「逃げるのは無理だ、やるしかねぇ。俺様がデカイのを抑える間になんとか数を減らしてくれ」


 ライラが青い顔でポッチの袖を引っ張ると、引きつりながらもニヤリとポッチが笑う。


「なあに、英雄になる男がこの程度の相手に負けるわけがねぇ」



「そうです。ポッチの力にわたしの祝福が合わされば勝てます。」


 降ってわいた考えてもいない言葉にポッチとライラは顔を見合わせ、自信満々に言い切るポンコツ聖職者に視線を向ける。


「何を根拠にそんなこと言えるわけ?」


 絶体絶命の危機にもかかわらず言動がゆるい。

 頭もゆるいのかもしれない。

 やはりこんな聖職者をパーティに入れるんじゃなかったとライラは悔やむ。


「ハッ。勝てるってんなら勝って見せようじゃねぇか」


 ポッチは腰のショートソードを抜く。

 メリオの突拍子もない発言で少し力みが抜けたようだった。


「来るぞ!」


 ゴブリン達は包囲の輪をじわじわと狭めてくるのに対抗してゴブリンファイターの前にはポッチが、そして背中を合わせるようにライラとメリオが武器を構える。


 グギャーと雄たけびをあげてゴブリンが一斉に襲い掛かる。手には棍棒やナイフだ。

 メリオに飛びかかろうとしたゴブリンが足を滑らせて転び、ゴブリンファイターの渾身の袈裟斬りはポッチが華麗にかわしショートソードで牽制する。

 ライラは即座に弓を引き絞り正面のゴブリンに向けて放ち胸に矢を生えさせると飛びかかってくる別のゴブリンに対応するため弓を捨て短剣に持ち替える。


「くっ……」


 間に合わない! 目ではゴブリンの攻撃が見えているが受けるのが間に合わない。

 覚悟を決めてライラが歯を食いしばるとゴブリンの短剣が何かにはじかれるように脇に逸れた。ライラは一瞬驚いたもののすぐさまゴブリンに膝蹴りを入れ軸足を入れ替えて蹴り飛ばし距離を取って短剣を構える。


「??」


 何が起きたのかはわからないが助かったのは確かだ。


「大丈夫ですか?」


 背後からメリオの声がかかる。


「え、ええ」


 チラリと見るとメリオの前には変わらずゴブリンが2匹いるがもつれて転んだのか動きが鈍い。まさかこれが祝福の効果? とライラは考えるものの今までそんな祝福など聞いたことがない。


 ライラに襲い掛かったゴブリンはナイフを逆の手に持ち替え振り回しながら襲ってくる。

 しかし明らかに動きが鈍い。ライラは軽く攻撃をかわすと踏み込んでゴブリンの胸に短剣を突き立てた。


「拍子抜けね。なんなのかしら」


 ライラはゴブリンから短剣を抜くと、妙な丸いアザがゴブリンの手の甲と足の甲にあるのに気が付いた。大きさは5センチ程度。まるで何ががぶつかったような真新しいアザだ。


「ライラさん! 早く援護を!」


 メリオの声にはっと我に返り弓を拾い上げ矢をつがえる。

 メリオが相手にいているゴブリンはメリオに棒でつつかれ逃げ出すところだった。

 残る敵はゴブリンファイターのみ。3体1なら勝算はあるはずだ。


 両手剣を振り回すゴブリンファイターの攻撃を必死でかわすポッチは傍目に見ても健闘しているが、無傷で済む相手ではないはずだ。

 ライラは矢を放つタイミングを計りながら様子を伺う。


 ゴブリンファイターの剣技もなかなかのもので、何度も危ない攻撃がポッチに届きそうになる。しかし、そのたびに微妙に剣筋が変化しポッチに当たらない。

 明らかにゴブリンファイターはイラついていて、ポッチをうっとおしく追い払おうとしているようだ。

 というか、ゴブリンファイターの目線がメリオに向いている。


「メリオを、警戒している?」


 何故? とメリオの方を見るが半身で長い棒クオータースタッフを構えたまま特に動いている様子はない。一方でゴブリンファイターを注視すると、肩や脇腹、内ももなどにアザができている。倒したゴブリンにもあった丸いアザだ。

 よく見ればアザの大きさとメリオが持つ棒の太さは同じぐらい。


「まさか……」


 ライラはメリオを注視する。ゴブリンファイターが危険な一撃を放つとわずかにメリオが動くのがわかった。そのたびにゴブリンファイターは顔をしかめ、剣筋が逸れる。


 ライラにが見えるわけではない。

 だが、状況がそうだと言っている。


 メリオが棒でゴブリンファイターをつついてポッチを守っているのだ。

 それも目にも止まらぬ速さで。


「メリオ、アンタが全部やってたのね……」


「いいえ、全て祝福の力です」


 視線はゴブリンファイターに向けたままいけしゃあしゃあとメリオは言ってのける。


「祝福(物理)なんて聞いたこともないわ」

 ライラは小さくつぶやくと改めて矢を引き絞る。

 メリオが動くタイミングで隙ができるはずだ。


 ゴブリンファイターは突然雄たけびを上げポッチに体当たりを入れ吹き飛ばした。

 その隙を見逃さずライラは矢を放つがゴブリンファイターはいともたやすく剣で弾く。

 やはり本来の実力は高いのだと改めて思い知らされる。


 ゴブリンファイターはポッチの方は一顧だにせず、唸り、吠えながらメリオに斬りかかる。

 メリオは剣を眺めたまま動く様子は見せず袈裟斬りにされた、かに見えたが斬られていない。ライラの目ではよくわからないが見切ったという事だろう。


「ポッチ! まだ動けるでしょう! 倒してください!」


 ゴブリンファイターに向き合ったままメリオの声が飛ぶ。

 ポッチは吹き飛ばされたダメージから回復し起き上がった所だった。


「すまねぇ! まだちょっと足にきてる! 粘ってくれ」


 ポッチが拳で腿を叩いて痺れをほぐそうとしているところにライラが声をかける。


「アイツなら多分大丈夫よ。他に怪我はない?」


「ああ、ほとんどまともに食らってない。ライラは大丈夫か?」


「ええまぁ、祝福のおかげかしらね」


 ライラは苦笑いするしかない。

 実際の祝福の効果がいかほどあるかはわからないがゴブリンの不自然な動きが全部メリオが原因とすれば相当助けられている事になる。


 一方ゴブリンファイターは逃げ出そうとしていた。

 しかし、じわじわ下がれば回り込まれ、背を向けようと思った瞬間に殺気が放たれ動けなくなるのを繰り返している。さらに言えば足腰はメリオの打突によるダメージが酷く、立っているのも厳しい状況になっていた。


 そこへ回復したポッチが戦列に復帰する。


「待たせたな! あとは俺様に任せてもらおう!」


「わたしの祝福で動きがゆっくりに見えますが油断は禁物ですよ」


 ポッチがゴブリンファイターの前に躍り出ると、メリオは少し下がり目の位置を取る。

 ライラが隙を見て脇から矢を射かけると、ゴブリンファイターの反応に最初のころのキレがなく、大きく避ける事しかできなくなっていて、かなり消耗していることがうかがえる。


 ポッチは油断なく攻撃をかわすとひざを中心に何度も切り付け足を止め、ついにゴブリンファイターの息の根を止めた。


「やった、やったぜ! ゴブリンファイターを倒したぜ!」


 疲労にひざをつきながらもポッチはガッツポーズを決めてみせる。

 ライラもにっこり笑って応える。


「やったわね。強くなってるわ」


「やりましたねポッチ。英雄も遠くはないかもしれません」


 メリオもポッチを称え、手を差し伸べるとポッチはやや照れくさそうにその手を取り立ち上がる。


「さあ、戦利品を回収したら帰ろうぜ。今日はもう十分だ」




 ギルドに戻り報告すれば、初級者のポッチがゴブリンファイターを倒したと騒ぎになった。

 期待の新人の登場はギルドにとって、町にとっても嬉しいものだ。


 『大口叩き』もたまにはやるじゃねーかとギルドの先輩達にもみくちゃにされて戻ってきたポッチがメリオに銀貨を3枚と銅貨を3枚渡す。


「こんなにですか!?」


 メリオは手の上の銀貨に驚く。

 ゴブリン退治の報酬はせいぜい一人銅貨3枚だ。


「ライラに聞いたよ。あんたのおかげで勝てたみたいだからな。受け取ってくれ」


「倒したのはポッチです。この銀貨はポッチのものです」


「馬鹿野郎! 俺様は英雄になる男だ! みみっちい事できるか!」


 メリオは銀貨を返そうとするがポッチは断固として手を出さない。


「じゃあさ、この銀貨でメリオに稽古つけてもらえばいいじゃない」


 ライラの提案にポッチは目を輝かす。


「そいつはいいな! そうしよう!」


 しかしメリオは首を振る。


「それはできません。私は聖職者ですから」


 ええーカタブツ過ぎだろーと二人から抗議の声が上がる。


「ですが、パーティを組んでいる時なら少しぐらいは教えられるかもしれませんね」


 メリオはうまい事を言ったつもりでドヤ顔だがポッチとライラは顔を見合わせ


「いやいや、パーティは無理でしょ」

「奇跡を覚えたら考えないこともないかな?」


「ええー?」


 そして3人で顔を見合わせると誰からともなく笑い出す。



 これが後に『英雄ポッチ』、『神眼ライラ』、『奇跡要らずのメリオ』と呼ばれる3人の最初の出会いであった。

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