その涙さえ命の色

長月瓦礫

未来をかたるということは


訪れなかった未来を騙ること、それはもはや自殺に等しい。

過去を偽れないことを知りながら その口は止まることなく喋り続ける。

古傷が開いてもなお、繕うように自分は騙り続ける。


心がえぐられたような痛みを伴いながら

もう二度と手に入れられないものをねだる。


何度も何度も自分を傷つける。


どれだけ傷ついても知らぬフリをする。

そのたびに学習能力のない自分を呪う。


過去を語る。過去を騙る。

同じ行為なのに、その意味は大きく変わる。


私だってありえたはずの未来を歩みたかった。

私だってありふれた道を歩みたかった。


私にはそれができなかった。

どこでまちがえたのだろう。

後ろをふりかえっても分からない。


ちゃんとしていれば、かがやく将来を歩めのだろうか。

ふつうにしていれば、まばゆい未来を歩めたのだろうか。


なんかもう、どうでもいいや。


本音なんか興味ないくせに。

どうせ、好き勝手に言うんだろうな。


お前はもう死んだんだから、勝手にしゃべるなとでも?

生きている間も、発言権は得られなかったのに?


生きても死んでも理不尽な目にあう。

なら、一体どうしろと?


どうせ、考えても無駄なんだろうな。

こたえなんて、出やしない。


本音なんて誰も聞きやしない。


ああ、悪魔でも何でもいいから、誰か私を助けてください。

正義はきっと、助けてくれないだろうから。


踏み出した一歩の先は虚無。

伸ばした手の先は虚空。

目を閉じて、未来をシャットアウト。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る