曾於川

「さ、寒い」


しかし、この寒い中を一人だけずんずんと歩いていく

イナーーそういう幻覚が見えるだけだ


「栗崎さん」


栗崎さんしっかりして、と肩をゆすられる栗崎


「あ、ああ、すまん、ごめん、ちょっと」

心配そうにする、緑



にしても、ここはどこなのだろうかーーいきなり「林道」から


瓦ぶき屋根の家に来たのだがーー空気が寒い


「ううぶるぶる、ぼくちゃんももどってもいいかな」

「だめです」

会長にそんなことを言って「あれれ~なんか温かいぞ~ってか、熱い」

「ちょっと、紫髪さん」

禁断症状を起こしている、紫髪を何とかしてーー「べた雪じゃない」



九州は比較的暖かく、雪は水じみた、触るって握ると水が染み出すような


そんな、車が通って行った際に、道路に残る水が溶けだした雪というか氷というかな感じなのだが


ーーー違う、これと同じ感覚を、どこかで知っている


この、ふわっとした、雪の感触、まるで粉のように、柔らかくて


それなのに、頬に当たる風は、痛いという感覚を与えるほど冷たくて


ーどこだったけなぁ、(でも、とりあえず、九州ではない)



栗崎は、幻覚を見るーー「あなた、いや、」


中年太りした、明らかにオタクのプロトタイプみたいな男性と、10歳くらいの

少女が並んで歩いてる光景を

赤い着物を着て、嬉しそうに舌を出して、つまんなそうに床にねそべって


楽しそうに笑う、「きっちゃん、、、、」


曾於川末吉そうかわすえよし

ああ、そうだあれは去年3人で、秋田のお祭りに行った時のことだ

その帰りに、勇気の祖母が好きな、スキー場でスキーをしようとして

その前に、、、


「、、、思い出した」


あの時、栗崎だけ雪の上を歩けなかった――コケて、転んでしまった

その時、倒れた栗崎に膝を曲げて、末𠮷は言ったのだ

「もう、「さきちゃん」、「ゆーゆー」から聞いてなかったの」



雪の上を歩いて渡る方法ーー、それは「北国」生まれの勇気が知っていた方法だ


「ゆーゆーのいうこと聞かなくちゃだめだよ、ねぇ、ゆーゆー、、、あれいない

ゆーゆーー、」

荷物の中から、かんじきを出すーー「勇気」が、こんなこともあろうかとと

用意してくれた「かんじき」


ーーっいていうか、本当に予知能力あるんじゃないか「ゆーくん」


「みんな、これをつけ、、、、」


首の取れた死体が出てくる

耐性のない4人(仁除く)が吐きそうになる


仁は、もともと、解剖の授業をとっていた、死体など見慣れてる


「仁」


首だけがはねて、仁を襲うーー何を言ってるかわからない


いきなり仁の足元を虫が覆う

「うわ、こいつ」

だが、周りの人間は、それに気づかない――幻覚か

仁はそう気づきーー「臨める兵皆陣裂きて前に在り」


という意味の「臨兵闘者皆陣裂在前りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜんと唱える


首だけが、嗤う――虫は消える

、、、、だが、首もすっと消える



ーーようこそ、おいでませ、、、「死の村へ」




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