金の魚

増田朋美

金の魚

金の魚

その日はよく晴れていて、綺麗に太陽が出ていた。寒い季節ではあるけれど、そういう時こそきれいに太陽が出てくるのかとも思われる。誰でもそうだけど、こういう日は、明るく日の指す庭に並び立ち、のんびりと過ごせるような、そんな時間が欲しいなと思う。少し若い人であれば、一寸、お外へ出て、出かけてみようかなとも思うかもしれない。

そんな日であるが、製鉄所の中では重苦しい雰囲気が流れていた。時折、四畳半から水穂さんが、時折せき込みながら、絵本を読んでやっている声と、もう一回、もう一回とせがむ武史君の声が聞こえてくるのであった。

「一体何ですか、僕に、相談事って。」

ジョチさんは、応接室に、浜島咲と田沼ジャックさんを招き入れ、とりあえず椅子に座らせた。

「ええ、ちょっと、お願いがございまして。最初に浜島さんに相談に行ったら、浜島さんが、理事長さんの方が、わかるのではないかというものですから、来させてもらいました。」

と、ジャックさんは、椅子に座ってそんな事を言い始めた。さすがに外国人らしく、身長こそあるが、さんざん悩んでいることが、顔に出ている。咲は、そんな彼を心配そうに見つめていた。

「はあ、そうですか。一体何なんでしょうか。」

と、ジョチさんが言うと、

「はい、武史の事について、ちょっと学校から呼び出されまして、、、。」

まだ、ジャックさんは、話していいものかどうか、迷っているらしい。咲は、そんなジャックさんに、いいじゃない、言っちゃいなさい、と促した。確かに他人に相談するのは、ちょっと恥ずかしいことでもある。だけど、そうしなければいつまでたっても解決しないわよ、と、咲は、彼に助言して、ジャックさんは、やっと話を切り出した。

「実はですね。昨日、武史の学校で、高齢の方と触れ合おうという行事があったそうなんです。学校と、提携している老人施設がありましてね。そこの利用者さんと、うちの学校の生徒が、触れ合おうという企画が、昨日行われたそうなんですが、、、。」

確かに、お年寄りと触れ合おうとか、ボランティアで老人ホームを学生が訪問するという事は、時々行われている。中には、学校と老人施設が同居していることもある。

「はあ。そうですか。では、お年寄りに何か悪いことをしたというか、そういう事ですか?」

と、ジョチさんが、ジャックさんに聞く。

「嫌、そういう事じゃありません。そうではなくて、武史が遊ばないというんです。利用者の高齢の方が、指摘して下さったそうですが、武史ときたら、高齢の方が、相撲を取ろうとか、チャンバラごっこをしようとか、いろいろ声をかけてくれたのに、全部無視して、一人で絵を描くことに没頭していたようで。それで、学校の先生が心配して、また呼び出されたんですよ。また、変な絵ばっかり描いて、ちゃんと人のいう事を聞くようにしていただかないと困りますと、、、。」

ジャックさんは、いかにも悩んでいるという顔をして、頭をかじった。そんな彼を、咲は、また心配そうに見た。

「そうですか。確かに、子供さんというものは遊ぶものですからね。武史君だって、まだ小学校一年生ですから、まだまだ遊びたいでしょうね。それをしないというのは、先生がおっしゃる通り、問題ですね。」

ジョチさんも、そう認めざるを得なかった。誰でもわかっていると思うけど、子どもは遊ぶものだ。勿論勉強もするけれど、基本的には、まだ小学生となれば、鬼ごっこしたり、はないちもんめをしたりして遊ぶものである。それが子供らしさというものだ。それをしないとなれば、確かに心配されても不思議ではない。

「武史君は、学校でどんな風に過ごしているんですかね?」

と、咲は、ジャックさんに聞いてみた。

「ええ、学校の先生の話によれば、誰ともかかわろうともしないで、休み時間中は、絵を描くことに没頭しているようです。」

「そうですか。先生の話はよく聞いているんですかね?」

ジョチさんも、ジャックさんに聞いた。

「ええ、それは問題ないようです。よく挙手をして授業を盛り上げてくれているようですし、ほかの子が苦手としている敬語の使いかたも、間違いがないそうなんですよ。ですが、同級生と遊ぶという事は、全くないそうで。確かに、学校が終わった後も、まっすぐ家に帰ってきて、宿題はするんですが、お友達と遊ぶという事は、全くないですからね。勉強は真面目にやるけど、そういうことはないので、心配でしょうがないんですよ。」

「つまり、がり勉タイプってことですかね。」

と、咲は、ジャックさんの話を聞いて、一つため息をついた。

「がり勉というか、友達と遊ぶ楽しさというのかな、それを知らないんでしょうかね。」

と、ジョチさんが言う。

「家に帰れば、お父様と、あ、別にお宅の家族構成を悪く言っているわけではありませんよ、家政婦さんくらいしか、話をする人もいないわけですから、すぐに自分の世界に没頭するしか、楽しみもないんでしょう。大人は、子どもさんをサポートすることはできますが、直接的に成長させることは、なかなかできないでしょう。本当は、子どもの世界に参加させなきゃいけないんですよ。誰か、お友達になれそうな、生徒さんは、居ないのですか?」

「そうですね、周りの生徒さんは、女の子が多くて、なかなか、男子生徒は少ない方でしてね。どうしても、うちの学校は、事情がある子ばかりですから、女の子の方が、多いんですよ。」

ジャックさんは、また頭をかじった。

「そうですか。でも、友達は、男女関係なく作るもんじゃありませんか。」

咲が口をはさむと、

「まあそうですけど、なかなか子供さんの場合、異性と友達になるってのは難しいですよ。異性と仲良くなるのは、思春期以降でしょう。勿論、例外もありますけどね。」

と、ジョチさんが言った。まあ、小学生というと、大体はそうである。男子は男子、女子は女子でよく遊ぶようになることが多い。

「それでは、武史くんはどうしたらいいんですか。このままだと、学校で、友達が一人も作れないまま、永久に孤独になっちゃいますよ。」

咲は、ジョチさんの話に、一寸反発するように言った。確かに、学校を出てしまうと、友達を作るきっかけは、非常に減る。例えばインターネットに頼るとか、そういう危険な手段に頼らなければならないことの方が多い。

「そうですねエ。でも、武史君、あんなに楽しそうにしていると、大人がそれを盗ってしまうのは、いけないと思うんですよね。ほら、あんなに楽しそうじゃないですか。」

ジョチさんが言う通り、四畳半の方から、お話を読んでやっている水穂さんの声が聞こえてくるのだ。武史君は、読み終わると、もう一回、もう一回、と楽しそうにせがむのだ。

「なんでも、願いをかなえてくれる金の魚かあ。僕達の願いもかなえてくれたらいいのになあ。」

と、ジャックさんが言う。確かに武史君は、ロシア民話として知られている、「金の魚」の絵本を読んでもらっていた。おじいさんが、偶然釣り上げた金の魚を海へ逃がしてやると、金の魚が何でも願いをかなえてくれるという内容である。しかし、それを悪用したおばあさんが、王様になりたい、皇帝になりたいと、願い事をエスカレートさせ、金の魚はそれをかなえてくれるが、海の女王様になりたいというと、もとの水ぼらしい生活に戻ってしまうという話だった。

「しっかし、水穂さんにはあんなに懐くのに、なんで友達は一人もいないんですかねエ。」

「まあ、誰かが現れるのを待つしかないかもしれないですよね。まあ、今の学校は、そういう事情がある子を受け入れているそうですから、頻繁に転校生が来ることもあるでしょう。そういう子の中で、誰か、武史君と感性が似ている子が、見つかるかもしれませんよ。」

ジャックさんがそういうと、ジョチさんがそう返した。咲は、早く何とかしなきゃいけないのではと思ったが、でも、ジョチさんの話が一番現実的かなとも考えなおした。まあ、人間誰でも、順風満帆に逝くとは限らない。何か変化が起きるのを待つしかできないという事も、必ずある。

「そうですね。いつ来るかわかりませんが、友達になれそうな、人物を探すしか、ないってことですかな。」

「ええ、その時に、注意しなければならないことは、友達を作ることが、一人で絵を描くことよりすごいメリットがある事を、強調させることですよ。絵を描くことを盗ったら、武史君は、自分の最大の楽しみを奪われてしまうことになりますからね。それだけはどうか、勘違いをしないでくださいませ。」

ジャックさんがそういうと、ジョチさんがそういうことを言った。確かにそれはしてはいけない。時々大人はそういうことを勘違いしてしまうが、それは、必ず頭に入れておかなければならなかった。成長する途中の子供に、楽しみを奪ってしまうのはいけないことだ。

「そうですね。わかりました。まったく、ライオンとネズミの次は金の魚の本にはまりだして、舞い位日毎日あの本を読まされて、困ってますよ。」

ジャックさんが、四畳半から聞こえてくる声を聞きながら、そんな事を言った。武史君は、教訓的な本が好きらしい。その本を知った経歴も、道徳の授業で先生が読んでくれたからだというのだ。本当にどうして、今時の子供がするようなことを、何もしてくれないんだろうな、と、ジャックさんは、ため息をついていた。咲は、そんなジャックさんを眺めながら、本当に子供を育てるって、なかなか難しいなと思いながら、四畳半から聞こえてくる、金の魚のお話を聞いていた。本当に、何でも叶えてくれる魚がいてくれたらいいのになあ。

「あ、おじさん!」

不意に、武史君の鋭い声がした。ジョチさんが咲に、一寸見てやってきて、というので、咲はいったん席を外して、四畳半に行った。行ってみると、水穂さんは、布団のうえで咳き込んでいた。咲はすぐ、水穂さんにチリ紙を渡した。

「右城君が、本当は武史君とおんなじ位の大きさだったらいいのに。もう、会議は、いつまでたっても、平行線のままよ。」

思わず、咲はそういうことを言ってしまう。

「武史君も、伯父さんじゃなくて、同級生と仲良く成ろうっていう気持ちはないの?」

「だって、みんな笑うんだもん。武史君はいつも変な絵ばかり描いているって。みんな、僕のところには近づかないんだ。」

武史君は、ぼそりと答えた。そうなると、やっぱり、ジョチさんの言った通りにするしかないのかなあと、咲は思うのだった。

その数日後の事である。咲は、お箏教室の生徒さんから、大量にミカンをもらった。もらいすぎてしまったので、武史君なら喜ぶかなと思い、ジャックさんと武史君の家に行く。

「こんにちは。」

インターフォンを押すと、ハイハイ、すぐ行きますと声がして、ジャックさんが玄関先に出てきた。その顔は、西洋人らしく、何とも言えない嬉しいことがあったことを示している。日本人と違って、自分の感情を頭の中にしまい込んでしまうという事は、非常に少ないのだ。

「あら、ジャックさん、どうしたんですか。何かうれしいことでもあったんですか?」

と、咲が聞くと、ジャックさんは、誰かに話したかったようで、すぐこう話し出した。

「いやあ、武史のクラスに転校生が来たそうです。何でも、森下君という男の子だそうで。」

まあ、と咲も驚いた。そんな事がすぐに起こってしまうものだろうか。

「で、武史君は、お友達になれそうって言っていたの?」

「ええ、先生が、ちょうど武史の隣の席が空席になっていたので、彼をその隣に座らせたそうで、一寸僕も期待しています。」

嬉しそうに言うジャックさんは、武史君以上に嬉しそうだ。咲も、なんだか、うれしくなって、

「それじゃあ、ぜひ、咲おばさんにも会わせてと言って頂戴。」

と言ってしまった。

すると、近くから誰かが歩いてくる音がした。誰だろうと思って咲が外を見ると、ひとりの男性と、小さな男の子がそこに立っていた。

「あ、あの、田沼武史君のお宅は、こちらでしょうか。」

と、聞いてくるその男性。

「ええ、そうですが。」

とジャックさんが答えると、

「武史君が連絡袋を教室に置いたままかえってしまったそうなので、届けに参りました。」

と、彼は答えた。ジャックさんが、おい、武史、と中へ呼びかけると、武史くんがすぐに出てきて、

「僕の連絡袋!」

と、小さな男の子から、連絡袋を受け取った。

「武史、人からものをもらった時には何て言うんだっけ?」

ジャックさんが言うと、

「うん、有難う、森下一也君!」

と、武史君は答えた。つまり彼が、転校生の森下君だったのである。咲は彼を観察した。何となく、のんびりした雰囲気を与えるタイプの子供だった。身長は武史君と同じくらいだが、いつもにこやかな笑顔でいることが不思議だった。

「あの、どうせなら、一寸お茶でもしていきませんか。浜島さんも来てくれたことだし、せっかく持ってきてくれたので、お礼に軽いものでも召し上がってください。」

ジャックさんがそういうので、全員、家の中に入った。全員テーブルに座って、ジャックさんの入れてくれた、紅茶を飲んだ。咲が、つかぬことをお聞きしますが、と、森下さんの職業を聞いてみると、錦鯉や金魚の販売をしているという。息子の一也君は、いつも笑っているが、普通学級に入って、同級生とテンポが合わない少年だったらしく、武史君の学校に転校したらしい。

「でも、金魚の販売なんて、珍しい仕事をなさっているんですね。今、ペットブームだから、金魚や鯉を欲しがる人も多いのでは?」

と、咲が聞くと、

「いや、たいしたことありません。金魚を飼うのは年寄りばかりで、老けた商売と言われております。」

と、森下さんは、照れくさそうに答えた。

「老けた商売じゃないですよ。可愛い金魚に囲まれて、幸せでしょうね。」

「いやあ、どうでしょうか。金魚は確かにかわいらしいですが、余り充実した生活とは言えませんな。」

咲の質問に森下さんは、そう話した。

「ねえ、一也君のお宅って、お魚を売っているところなんだよね。」

と、武史君が、一也君に話しかけた。一也君も、話してもらってうれしいのだろうか、うんとにこやかに答える。

「でも、食べるためのお魚じゃないよ。家で飼うためのお魚だよ。」

と、一也君はのんびりと答えた。

「そうなんだね。どんなお魚を売っているの?」

武史君がそう聞くと、一也君は、錦鯉の品種の名前を次々に挙げた。お父さんが心配そうな顔をしている。でも、武史君は、嫌がらずに、その話を聞いている。時には、どんな魚なのか、質問したりする。それがまた楽しいんだろうか。一也君は、楽しそうに魚の名前を挙げるのだった。

「一也君のおうちって、金の魚も売っている?」

ふいに、武史君が、一也君に聞く。

「うん、金の錦鯉もたくさん売ってるよ。山吹はりわけとかね。」

一也君が答えると、

「そうか、何でも願いをかなえてくれる金の魚さんがたくさんいて、一也君は幸せだね。」

と、武史君は、不思議な言葉を言った。咲は、一也君がどんな反応をするか心配だったが、一也君は、うんと言ってにこやかに笑った。

「いやあ、夢のようです。一也が魚の事で、ほかの友達と話をしたのは、生まれて初めてでした。うちも、大した学歴があるわけではないので、魚の話くらいしか、できなかったのですが、その魚の話を誰かにすると、みんな一也から離れてしまって、どうしようもなかったんです。」

一也くんのお父さんはそういうことを言っていた。

「もし、宜しければ、お友達ができた記念に、錦鯉を一匹譲りましょうか?鯉を飼うのは、教育的にも、宜しいかと思いますよ。如何でしょうか?」

そんな事を言われて、ジャックさんは、ああ、ありがとうございます、と照れくさそうに言っていた。一也君のお父さんは、わかりました、今度水槽に入れて持ってきます、とにこやかに笑った。

丁度時計が五時を鳴らしたため、一也君とお父さんは帰ることになった。一也君たちは、歩いて帰ると言っていたが、咲の住所と近いところだったため、一緒に帰ることになった。

「本当に、ありがとうございます。武史君と仲良くしてくれたなんて。あたしも、うれしいです。」

と、咲は、一也君のお父さんにそういってお礼をする。

「いいえ、こちらもうれしいですよ。うちの一也も、商売のせいか、魚にしか興味を示さないで、前の学校では、誰とも仲良くできなかったんです。」

と、一也くんのお父さんは言った。

「魚の知識だけは人よりあるだけで、ほかになにもないんですけど、それを続けていくしかないだろうな、と学校の先生からも言われていました。もう、人間の友達を作るのは無理じゃないかと、正直思っていたんです。」

こういう人が、ほかにもいた何て、咲はおどろいてしまう。先日、ジョチさんの下で、話し合った時も、おなじような人が現れるのを待つしかないと、いう結論しかでなかった。でも、おなじような悩みを抱えている人は、こんな風に身近に現れるのだろうか。

「いいえ、同じように悩んでいる人が、こうして身近にいてくれたなんて、私もうれしかったです。きっとジャックさんもうれしいと思います。武史君に、一也君というお友達ができたら、涙を流して喜ぶんじゃないかしら。」

咲が素直にそう感想を漏らすと、一也君のお父さんは、にこやかに嬉しそうな顔をした。もうしばらく道路を歩くと、「森下金魚店」と看板のある家についた。

「ここです。ありがとうございます。」

「ありがとうございます。」

森下さんと一也君は、そういって、店の入り口から、中へ入っていった。咲も、思わず店の中を見てしまう。可愛い金魚や鯉が、たくさん売られていた。その中には、確かに、金の錦鯉も売られていた。

その中で、鯉を一匹譲り渡したいというお父さんの声が聞こえてきた。一也が初めてお友達を作ったので、記念に一匹あげたいと説明している声が聞こえてくる。たぶん、お母さんは、良かったわね、と喜んですぐに同意すると思ったが、咲に聞こえてきたのは、こんな言葉だった。

「何を言っているの!錦鯉は、大事な商品でしょ!それを、ただ友達になったからって、一匹譲り渡せっていうの!何を考えているのかしら!」

「でも、一也が、せっかく新しい学校で、友達という者を初めて知ったんだ。俺たちは、そのことでさんざん苦労してきたのに、お礼もしないでいられないじゃないか!」

そんな風に、いいあらそう声が聞こえてきたのである。その中で、一也君がしくしく泣いている声も聞こえてきた。つまり、彼のお父さんとお母さんは、しょっちゅう喧嘩ばかりしているんだ。可哀そうに、一也くんは、そこから逃れたくて、魚の世界に入ってしまったのかもしれない。

お互い罵声を浴びせ続ける大人たち二人に、咲は、止め無ければならないな、と思った。

「ちょっと待ってください。」

無断とは分かっているが、咲は、店の中に入ってしまった。店の中では、先ほどの一也君のお父さんと、中年の女性がいた。たぶん一也君のおかあさんだ。

「ぜひ、お父さんのいう事を実行させてあげてくれませんか。相手の武史君も、友達がなくて、困っていたんですから。」

と、咲はにこやかに言った。そのあたり、ちゃんと伝わっているかどうかわからなかったけど、とりあえず言ってしまう。

「子供さんが、お友達を初めて作ったというのは、ほんとうに記念碑的なことだと思うんです。ほら、金の魚が、このうちにはたくさんいるでしょう。金の魚が願いをかなえてくれたんじゃありませんか?」

一也君のお父さんとお母さんは黙っていた。一方の一也君は、金魚の図鑑を、真剣に眺めていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

金の魚 増田朋美 @masubuchi4996

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る