第二章 艦隊

婦人海上戦闘団


 婦人海上戦闘団、マハラバード執政官府に所属する組織、いわゆる海軍です。

 いま、一人の婦人戦闘団員が、スジャータさんの前で敬礼をしています。


 三十歳近いでしょうね、虫の占領前に生まれ、十歳で虫の侵攻にあうも、虫の占領時代を生き残り、その後永く婦人戦闘団に所属、商船ギルドの船に乗り込む警備部隊隊員を経て、同隊隊長になっていた方で、階級は大佐です。


「ミーナ大佐、本日より准将に昇格、婦人海上戦闘団司令官に任ずる」

「謹んでお受けいたします」


 儀礼的な任命式が終わり、スジャータさんはミーナ准将をお茶に誘いました。


「お酒の方がいいかしら?」

「いえ、まだ公務中ですので」

「とにかくこれからの話をしましょう」


 スジャータさんに案内されて、執政官府の応接室へ、


 部屋にはパールヴァティが待っていました。


「紹介するわ、新任の婦人海上戦闘団司令官ミーナ准将、こちらはアプサラス・ハレムとラクシュミー・ハレムの責任者パールヴァティさん、マガダ王国の第一王女といえばいいかしらね」


「マガダ王国……」

 

「いまではパールヴァティさんはヴィーナス様の寵妃、理解しておいてね」


「……」


「貴女を呼んだのはほかでもないの、ヴィーナス様の女奴隷にならない?」


「私がですか?」


「そう、貴女」


「別にかまいませんが、私は軍人、この身もこの心も差し出しています、命じられたら死地にも赴く所存、命じていただければそれでいいのですが」


「ハレムに所属していただけかなければならないのよ、ヴィーナス様の夜に侍る覚悟が必要なの」


「私は正直、そんなに美しくありませんが……」

 スジャータさん、かなり笑いました。

 

「ヴィーナス様の女奴隷、つまり女官になればヴィーナス様の加護がかかる」

「それゆえ新陳代謝などが活発になり、身体はベストの状態になる」

「もって生まれた遺伝子の範囲内で、最大限の美しさになる」


「女官任官して、美しくならなかった女はほとんどいない、もしそれでもとなれば、希望すれば少しばかり手を入れることも可能だが、いままで例がないそうだ」


「そうですか、ヴィーナス様にご不快をかけないのならば、私はかまいません」


「貴女は最高級士官に当たるので、ヴィーナス様の女奴隷が資格の一つなの」

「その為には自発的な希望が必要なの、なってくれるなら、これに署名していただくのが、ネットワークのしきたりなのよ」

 自分自身の売買契約書で、買主はアールヴヘイムンの支配者、つまりヴィーナスさん。

 売主の欄に、自身で署名するわけです。

 売値もしっかり書かれており、購入と同時に自身の生存権も含めて、一切の権利の放棄、がうたわれております。

 

「この度、ラクシュミーの女たちのグループが認められたのよ、この地から女官として採用された方は、ラクシュミー・ハレムに所属することになる」

 こうしてミーナ准将は、ラクシュミー・ハレムに所属、『采女』としてリングを授かったのです。

 

「さて、ミーナ婦人海上戦闘団司令官、組織編制をお願いするわ、最低限の艦艇などは、建造が終わっています」

「多分、十四王国の艦艇よりも高性能です」

「操艦、戦闘などはロボットが行いますので、すぐに動かすことができますが、やはり乗組士官が必要なのです」


「その人員の手配もお願いします、軍政、軍令、教育についての組織もお願いします」

「ただ高級人事権と最高命令権は、執政官がヴィーナス様の代理として持ちます」


「ロボットは最終的に、この最高命令権に従いますが、当方より婦人海上戦闘団の階級序列に従うように命令を出しておきます」

「とりあえず新造艦艇を見に行きますか」

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