マハラバード工廠


 ヴィーナスさんが作ったマハラバード工廠、やはりというか、テラの日本帝国の、大戦前の呉海軍工廠をモチーフとしています。


 満載七万トンクラスの大型ドッグ、満載二万五千トンクラスの中型ドッグを中心に、小型艦艇建造用の二つの小型ドックや製鋼部、造機部などのほかに、衣糧廠など一切合切完備しています。


 さらには航空機関係の工場もあり、工廠の周りには、飛行場や婦人海上戦闘団の実業学校や、海兵団宿舎など、執政官府の現地軍関係が集中しています。


 ただ主要資材は鉄ではなく、トウモロコシ油からつくバイオプラスチックを使用、この生産工場もマハラバード工廠の一部門で、直轄領で使用する民間用鋼材の代わりの資材として、規格品も製造しています。


 ついでといえば、コンクリートはローマン・コンクリートの改良、つまりジオポリマーとよばれる超コンクリートです。


 これはポルトランドセメントと違い、熱を出さない上にかなりの耐久性があります。

 さらにバイオプラスチックファイバーを混入した『ローマン・バイオプラスチックファイバー・コンクリート』。


 この略してRVPFRと呼ばれるものは、大規模な土木用コンクリートとして使いますが、引っ張り強度などもかなりあり、小規模構造の建物にも使えます。


 キブツなどではこれで建物を造っています。

 結構お手軽に耐震・耐火の住宅が建てられますので好評なのです。

 固まるまで、多少時間がかかるのが難点ですけどね、マハラバード・コンクリートなんて呼ばれています。


 マハラバード市は海に面している港湾都市、元々あった港はそのまま商港として再開発されており、軍港や工廠はその近く、といっても二十キロほど西へ行ったところにあった港を利用しています。


 西地区と呼ばれており、執政官府がある地区が東地区、その間には小さな漁港や果樹園などが散在し、それらを繋ぐ鉄道などが走っています。


 マハラバード工廠はほとんどロボットで運営されています。

 男がいない執政官府直轄領、何か製造しようとすれば、重工業や建設業はロボットが必要となります。


 専用の産業ロボットのほうが能率的ではありますが、ヒューマノイドタイプの保守管理ロボットを、デチューンして配属しているのです。

 何でもヴィーナスさんが、産業ロボットは『味気ない』といって、ヒューマノイドタイプにしたといわれています。


 このロボット群は、西地区のマハラバード工廠内だけを行動範囲としています。

 したがって工廠内の数々の軍需工場などには、膨大なヒューマノイドタイプのロボットが忙しそうに稼動しているのです。


 ロボットたちは、原始的なプログラムで動くような仕様で、高度の人工知能が使用されているわけではありません。

 あくまでも機械、アンドロイドタイプは『イレギュラー』の危険がありますので、このような用途に使用しないことになっているのです。


 執政官府の現地採用行政官さんたちのお仕事の一つに、ロボットの管理もあるのです。

  

 ヴィーナスさんは、とにかくこのマハラバード工廠を作り、幾隻かの水上艦艇を作っていきました。


 造られた水上艦艇は、新たに設立された婦人海上戦闘団の根幹となる艦艇。

 そして動き始めたマハラバード工廠は、膨大な補助艦艇の建造を始めたのです。

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