最終解決案


 スジャータさんが、

「この地の女たちは、いかがいたしますか?」

「私たちに従ってくれるのでしょう、執政官府はこの地を切り離し守ればいいのよ」


 ……何もしないでよい……いざとなれば撤退ですか……ロブノールですか……

 ヴィーナス様はぶれない……でも、虫は壊滅させた……


 アールヴヘイムンは大した代価も支払わずに、虫の惨劇から逃れ、ネットワークも撤退させる……

 まあ、それでもいいのだろう……こんな星、どうでもいいのだから……


 スジャータさんがこのように考えていると、

 ヴィーナスさんが、

「ボルバキア・ウィルスって便利よね」

 突然いいました。


 ……虫がいなくても、虫の惨劇は再現できる……

 ……緩慢なジュノサイド……

 じりじりと迫る、破滅を眺めながら死んでいく……アスラ族女性体の、対男性体最終兵器……


 たしかヴァルホルでも使われたはず……

 その上で何もしない……ヴィーナス様ならやりかねない、ロプノールの出来事など、可愛いものなのだ……

 

「スジャータ執政官、この地は幸い海に囲まれている、ネットワークの力など借りなくても、この地の女性だけでも、十分守れるでしょう?」


「分かりました、マハラバード執政官府は、これより現地住民による、婦人海上戦闘団を編成します」


「さてスジャータさん、とにかく現地視察にかかりましょう、私、ここには三日しかいないのですからね」

「執政官領の美女さんを検分に行きましょう、この地の美女さんたちは、歓迎してくれるのでしょうね♪」


 顔を曇らせたのはスジャータさん、ここでヴィーナスさんが大量に女を拾うとどうなるか、これは誰でも想像できること、出来れば避けたい……


「お手はつけないようにしてくださいね、お噂は私の耳にもはいっていますから」


 そう、落ちている女を拾ってくる、悪いくせは有名です。


 このとき、ヴィーナスさんの側に付き従っていたパールヴァティさんが、助け舟をだすように、

「まずはご希望があれば、私においいつけください、私が責任もって引き取り、立派な女官にして見せます!」


 スジャータさん、少しばかり安堵の顔をします。

 ヴィーナスさんが、そこらの女に興味を示し、ものにしそうになったとしても、その前にパールヴァティが、ハウスキーパ事務局の後押しで、管理するするわけですから、執政官としては非難を受けなくてすむ。


 事務局預かりの女ですから、表立っての文句は出せない、その後の『百合の会議』対策は、パールヴァティが矢面に立つ。

 スジャータさん、このとき初めて、パールヴァティとならば今後の話が出来る、と認識したようです。


 とにかく視察が始まりました。

 でもその三日間、ヴィーナスさんは女を拾わなかったのです。

 忙しそうに魔力の大安売り、三日かけて海軍工廠と水上艦艇群を作っていましたね。


 でも酒池肉林はつづけていたのですよ、その日はスジャータさん、翌日にはパールヴァティさん、翌々日にはウルヴァシーさん、タフでしたね。


 勿論、ハレムの建物も造っていました。

 どうやらテラのマハラジャの宮殿、バンガロールにあるマイソールパレスのようです。

 きっとめんどくさかったのでしょうね。


 ここはニライカナイ内の三軍統合司令部……ミリタリー首脳が、会議なんてしています。


「やはりね、アナーヒターのことだから、こんなことを考えていると思っていました」

 スジャータさんの報告を、読みながらイシスさんです。


「しかしイシス様、ルシファー様のことですから、最終解決案など、スジャータを煙に巻くための、方便ではないでしょうか?」

「当然でしょう、暗殺など企てた惑星ですが、アナーヒターがかばったから、今まで無事なのよ!」


「せっかく、うまく処分できるような雰囲気が出てきたのよ、アナーヒターも行き着くところまでいけば、最終解決案もやむなしと、思っているのでしょう」

「だからフラフラと腰を上げたのよ、まあ私に任せてよ、最低でもあの星、懸念のない体制にして見せるわ」


「でも、上手くいくのですか?ルシファー様ですよ」

「もう一人、この話に噛んでもらうのよ」


 ……


「なるほど、それはいい、ではスジャータに逐次詳細な報告をするように、命じておきます」


 ミリタリー首脳の、ひそひそ話しは続いていました。


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