第1話 楠木彩の初体験からのディタの思い
あれは大学一年の時だったと思う。
それまでも彼氏がいたことはあったけど、手を繋いだりキスしたり止まりのお子様レベルのお付き合いだった。恋人繋ぎするとドキドキしたし、身体を寄せ合うだけで嬉しかった。
初めてのデートでキスして、次のデートで求められた。
今までの彼氏は私が初めての彼女だったりで、今一手際が良くなくて最後まではしなかったけど、彼なら初めてでも大丈夫かも……なんて、さほどまだ彼のこと知らないうちにラブホに誘われるままに行ってしまった。
しかし、私は凄く甘かった。
人を見る目もなかった。
彼はいわゆる素人童貞だった。彼女が十人以上は嘘で、相手は全てその手の職業の人ばかり。自分は何もせずに、相手に頑張ってもらうスタイル。
「俺が上とか、かなりレアだから」
とか、意味わからない特別感だされて(初めての女に騎乗位を要求するな! )、さほど解されることなく挿入。もちろん私は最初から最後まで激痛で……。
でも知らないって恐ろしい。
Sexって、そんなもんだと思ってしまったのだ。
それからは、彼氏と会うのが苦痛でしょうがなく、毎回毎回痛いは切れるは……。
その彼氏と別れた後も、新しい彼氏ができても、あの時の痛みが頭から離れなくて、結局は誰としてもダメになってしまった。自分は不感症なんだ。だから濡れないし、痛いんだ……って思うようになった。
とにかく早く終わらせたくて……、それが悪循環だったって、私は全く気がついていなかった。
★★★
「では、ディタは兄様とはするつもりはないの? 」
アンネのキラキラする目に見つめられ、私はウッ……と言葉に詰まる。
「そりゃ……そういう訳にもいかないと思うけど……」
煮え切らないのは、あの痛みを知ってしまっているから。何が悲しくて、初体験の激痛を二度も経験しなきゃならないんだ。
キスしてイチャイチャして……それだけでなんとかならないもんだろうか?
「それに私はまだ初潮もきてないから、まずはそれからかと」
「えっ!? そうなの? 言われてみると、確かにまだお子様な体型だわね」
私は最後の砦、「だってまだ子供だから!! 」を振りかざす。
十四にもなって、そろそろ通らないとは思うけど、本当のことだから仕方がない。
それにしても、お子様な体型は酷すぎないだろうか?
私は自分のツルンペタンな体型を見下ろす。
これでも少しは膨らみだって……、探そうと思えば探せるんだから!
ああ、自分で言っていて虚しい、虚し過ぎる。
そんな会話をしていたら、扉が開いてジークがヒョッコリ顔をだした。
座学が終わり、いつまでたってもでとこない私達に業を煮やしたようだ。
「ディタ、終わったんじゃないの? 」
「兄様、今はまだ私と話しているのよ。兄様は後! 」
ジークは傷ついたような視線を私に向け、パタリと静かに扉を閉めた。
「私、今日はもう帰るよ」
さすがにジークが可哀想になり、私は席を立った。
「あら、兄様なんか少し待たせるくらいでちょうどいいのに。ほら、さっきの講義でも、男性は少し焦らすくらいが興奮するって」
それは……フ○ラの時の舌使いの話しですよね?
トンチンカンなことを言うアンネにお別れのハグをして、私は広間を出た。
扉の外で待っていると思っていたジークがいなかった為、私はジークのいそうな場所に足を向ける。といっても、ジークがいるとすれば裏庭の温室だだ一ヶ所で、予想通りジークは温室の中にたたずんでいた。
咲き誇る花々の中、その美しさにかすれることなく、赤みを帯びた金髪が一房顔を覆った。それをかきあげながら、上げた視界に私を捕らえ、ほころぶような笑顔を私に向けた。
いやいや、巨匠の描いた絵画よりも美し過ぎでしょ?
この場にスマホがないのが口惜しい!
まさに絶好のシャッターチャンス。できるなら一生物でとっておきたいくらい、回りの風景とマッチして芸術的ですらある一枚になったこと間違いない。
自分の彼氏が芸術的に美しいって、これって幸せなんだろうか?
私がジークに近寄ると、ジークは両手を開いてみせた。その中に飛び込んでおいでと……。
私はジークの一歩手前で立ち止まった。
ジークが一歩進んで私をハグする。
以前はかなりあった身長差だが、今は頭一つ分ちょいくらいには縮まった。ジークの胸にスッポリ包まれ、ジークの為に作った香水の匂いが優しく香る。
ジークもクンクンと私の頭の匂いを嗅いでいるが、待たせてしまったようだし、今日のところはスルーしてあげよう。
「癒される……」
こうやって甘い言葉を囁かれ、優しくハグされて、こんな幸せがくるなんて!
私はジークの胸に頬をスリスリする。
子供最高!
こうやって抱き合っても、Sexを求められるかもって、ドキドキ(期待ではない)しなくてもいいから。
「座ろっか」
ジークはベンチのところまで私の手を引いて歩いた。以前はここに小さなテーブルと椅子があった。ジークが一人で過ごすようだ。今は二人で過ごせるように二人掛けのベンチとサイドテーブルが置いてある。
ジークはそのベンチの真ん中に座ってしまう。そうすると、右も左も私が座れるスペースがない。
ジークは自分の膝をポンポンと叩いた。
座れと。
うーん……。
後ろ向きは好き勝手されちゃいそうだし、横抱っこも腹筋が辛そうだ。
私は一瞬悩んだ末、ジークのを跨ぐようにして向かい合って座る。
膝をつくと、ジークと同じ目線になる。
「まさかの真っ正面? 」
「ダメなの? 」
ジークは私の腰に両手をまわすと、力強く引き寄せた。身体がピッタリてくっつく。
これはこれで恥ずかしい。
「ディタ……可愛い。大好きだ。黒いサラサラな髪の毛も、クルクル表情が変わる瞳も、ツンと尖った鼻も、プックリして食べちゃいたい唇も、この細い肩も、控えめな胸も、細いウエストも、小さなお尻も、細くて長い足も……全部全部大好きだよ」
控えめな胸だけは余計だけど、こんなこと言われて、目がトロンとしない女はいないだろう。
ジークの顔が近づいてきて、私は自然と目を閉じる。
触れるだけのキスを繰り返し、唇を軽く吸われ、舌が優しく口内に侵入してくると、私はジークの上に座り込んでしまう。腰砕けた訳だけど、その時お尻の下に感じた異変に、私のトロンと蕩けていた意識が一瞬にして正常に戻る。
明らかに固い感触。
「……ジーク、ウ……ンッ、ちょっと下ろして。一回……落ち着こう! 」
ジーク本人だって、私のお尻に当たる物が自分のナニ(しかも元気になりつつある)だって理解している筈なのに、キスを止めることもなく、私の腰にまわした腕を弛めることもない。
「ヤダ」
「ヤ……ダって、………子供じゃ……ない……ん……だから」
「子供じゃないから……だよ」
確かに、正論です。
ジークの瞳は、潤んで無茶苦茶色っぽいことになってる。その瞳のさらに奥には、欲情の色が小さく灯っていた。
「もう、帰らないと! 」
「……帰したくない」
瞼に、頬に、顎に、首筋に、鎖骨にキスを落とされる。
その温かい感触に、意識せずに吐息がもれた。
「……フッ」
「ディタ、可愛い。」
腰を押さえていた手がゆっくりと下の方へ移動し……。
「……イチャイ……レス」
私はおもいっきりジークの頬っぺたをつねり上げた。
ジークの手が頬を押さえ、私は自由になって飛び下りる。
「ディタァ~」
切ない声を上げるジークに舌を出し、「またね」と手を振る。
いつか……いつか……やっぱりヤんなきゃダメかなァ?
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