392.割られそうになっていたバカラのグラス、生き延びる

 昨日は母の誕生日会でした。


 無雲は歯医者のために駅前に行ったので、そこでお寿司やケーキを購入。さらに、おいたんが「小さい。見えない」と難癖をつけて来たダイソーのカレンダーを大きなものに変えるために、やっぱりダイソーで買い物したり、カルディでワインを買ったりしておりました。


 その結果、物凄い大荷物に。


 ケーキを水平に保つ事がかなり難しいけど、水平を保たねば。っていうかお寿司もがさばっててめっちゃ持ちずらいし、そもそもカルディとダイソーの分が入ったエコバックもかなり膨れている。


 そうだ、ウニバターや『私のフランス料理』(調味バター)も買ってしまった私が悪い。それよりも、「本日二千五百円以上ご購入されますと、非売品エコバックを差し上げております」に釣られてワインを二本も買った己が悪い。


「うおおおお、これは絶対バスには乗れないやつ!!」


 一直線でタクシーへGO!


 ああ、曇天の日曜日だというのに大手会社のタクシーもいる。助かった!


 そうして、無雲がもたもたしていたら、この日の運ちゃんがナイスガイ。


「慌てなくて良いですよ~。誰も並んでないから。ゆっくりでいいですよ~」


 神か!?


「ケーキ持ってるみたいですからね、ゆっくり走らせますからね~」


 こんな良い運ちゃん久々に会ったぞ!?


 降り際には……


「僕、個人的にマスクと飴を配ってるんです~」


 と、個包装のマスク一枚とコーヒー飴を三玉くれました。


 で、何かの拍子に今日が母の誕生日だというと……


「それはおめでたいですね! なら、マスクさらに差し上げます♬」


 と、追加で二枚。


 いやぁ、久々に良い人過ぎる運ちゃんに出会ってしまった。ナイスだぜ!


 あの運ちゃんなら個人タクシーになってもやっていけそうな気がするな。うん。


「今日はおじさんみたいな良い人の車に乗れたからもう良い日です♬」


 と言ってさようなら。お互いwinwinで良い気分っすね!


 で、夕方までだらだら。だって、お吸い物を作ってお寿司を皿に盛り直せばいいだけだから。おいたんの今日の分のお弁当であるおにぎりは作ったけど。


 夕方、まずパーティー第一部両親の部開催。


 父ちゃんが飲酒するだろう、とバカラのグラスを用意しました。私もご相伴に預かるか……ともうひとつあった同グラスも用意。


 このバカラのグラス。かつては「割ってしまえ」と言われた曰く付きの物。


 父が二度目に倒れて会社を辞めて欲しいってなった時に、送別でもらったのがこのバカラのグラスでした。


 勤続五十年の父に訪れたあっけない終わりに、母はその怒りと悲しみを頂き物のバカラのグラスにぶつけました。


「あんなもの要らない。使いたくない」

「あ? じゃぁいっそ割っちゃえば?」

「あんた売ってきてよ」

「箱無いからダメなんじゃないのー?」


 と、長年使われずに、かろうじて割られないで置いておかれたバカラのグラス。


 お高いのを知っていたので、割るのはちょっと心苦しい。箱さえあれば売れたのに。


 が、去年の年末に父が高級スコッチを買った際に、「良いお酒だからバカラで飲めば?」という母の提案に、父は乗った。


 これで、バカラのグラスは割られる運命を回避したのです。


 母の怒りや悲しみも、時間と共に風化してきたのもあるのでしょう。いつの間にか、『高級酒には高級なグラス』という扱いを受ける事になったバカラのグラス。


 良かったね、ワレモノとしてゴミに出されなくて。


 父は昨日は上機嫌で高級スコッチを二杯飲んでいました。母の誕生日が嬉しいんだろうし、お寿司とケーキも好物だからな、あの人。


 私はスコッチは一杯だけもらって、後はカルディで買った白ワインでだらだら。


 おいたんが帰宅した頃にはほろ酔いになっておりました。いや、それは毎日か……。


 私、お風呂上りはおいたんの帰宅関係無しに飲酒してしまうので、おいたんが帰宅する頃には毎日酒気帯びです。


 だから、朝の眠くてグロッキーになっている私と、夜のほろ酔いの私を週五でおいたんは見ているのですよね。


「こいつ、眠くてフラフラしてるか酒気帯びかどっちかだ」


 と思われてたらどうしよう、と思うのですが、「休みの日は素面のあんたも見てるじゃない」と母が言うので、もうこれはこれでOKって事にしておきます。いや、いいんかそれで……。


 誕生日パーティー第二部は私とおいたんで。母は麦茶飲んでたな。この日は飲む気分じゃなかったのね、母よ。


 母は昨日で七十四歳。まだまだ頭もはっきりしているし体も元気です。っていうか、我が家では一番の健康体です。


 ほんと、頼むから長生きして下さい。母が居なくなったら私は途方に暮れるし生きていく事が困難だと思います。っていうか、それをM先生も認めています。


 いつまでも母に依存している私ですが、もうそれはそれでいいやって思ってるので、ずっと生きていてください。妖怪でも魔女でも仙人でもなんでもいいので、生きていて下さい。頼みます。


 私も、八十歳とか九十歳まで生きてたら親から自立心が生まれるかもしれないけど、とりあえずしばらく無理! と、高らかに情けない宣言をして本日のエピソードを締めますね(笑)。 

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