339.思いがけずに多忙だった。
ここ二日間、無雲は忙しかった。思いもよらず降って来た多忙でありました。
事の始まりは、母側の親戚が亡くなった事に始まります。
母の親戚ゆえ、母だけが葬儀に参列しに行きました。葬儀は午前七時半集合という何という早朝。母は朝一番のバスに乗って、どんぶらこと私鉄に揺られて葬儀場まで向かって行きました。
「お母さんはさ、火葬場まで連行されるだろうから何か食べるよね」
と、疑わなかった私と父。
私は父と自分の分の昼ご飯のうどん(わかめとしいたけを大量に投入)を作り、もしゃもしゃ食べながらそんな話をしていました。
母は疲れて帰って来るだろうから、その日はカレーを私が作る約束をしていました。既製品の肉団子をぶっこんだ肉団子カレー。それとスープをちゃちゃっとね。
そんなのを作って待っていたら、十三時半頃、玄関の扉が勢いよく開きました。
「あ、お母さんお帰り~」
「……ぜぇ……ぜぇ……」
「!? お母さん……お昼ご飯食べた???」
「……食べてないわよっ!!! おせんべいの一枚も出なかったっ!!!」
母は汗だくで顔色も悪く、タクシーで帰って来たとは思えない鬼のような形相でした。
話を聞きますと、飲み物なんかも自分で買ってくれみたいな感じだったので、出店のコーヒーを買って飲んだら、それがとても濃くて胃に合わず、胃もたれしていたと。そして、空腹があまりに酷くて疲労と相まって鬼のような形相になっていたと。
母はコンビニで買ってきたおにぎりを二個食べていましたが、その日、夕ご飯のカレーをがっつり食べるまで回復する事はありませんでした。
翌日は、私の退院後初乳腺外科外来の日でした。
十時からだったので、朝は余裕がありました。おいたんはお休みの日で、四回目のワクチンに出かけていきました。
乳腺外科では、胸と脇の下に溜まっていた水を抜いてもらいました。
これねぇ、脇のリンパ取った所に水が溜まって、ボコってなっていて、擦れて凄く痛いんですよ。擦れただけの痛みじゃなくて、本当に痛くて痛くて毎日痛み止めとお友達だったんですよ。
胸の水溜まりはあんまり痛くないんですけどね。
水を抜いてもらうと、脇の下がちょっとスッキリしました。やったぜ! 軽快だ! と喜んでおりました。痛み止めも、三十錠処方してもらいましたので、しばらく買わなくて済みそうです。
それからスーパーで買い物をして帰りました。おいたんがモ〇バーガーを買ってくるというので、前日に皆で話してコ〇・コーラの赤いやつを買って帰りました。
そうして帰宅しましたら、何故かでかいペットボトルのコ〇・コーラが買ってあるではないですか。
「これは……おいたんの仕業だな。あのとんちんかんめ!」
というわけで、うちには現在七百ペットのコ〇・コーラと、三百五十ペットのコ〇・コーラが余っています。普段はカロリーゼロタイプを飲む両親と私。これどうしろっちゅーねん(笑)。
おいたんの言い分はこうです。
「コーラの話してたからさ。買って来ちゃった☆」
「だから私が買ってくるって言っただろうがぁぁぁ!!!」
平和ですね……。
その日も母は「疲れが抜けない」と言って午後からは横になっていました。そうしましたら、十四時頃急にまた家の近くのスーパーに行くとか言うではありませんか。
無雲もちょっと欲しいものがあったので、一緒に行く事にしました。
そうしましたら、母はスーパーでこんな念仏を唱え始めました。
「お父さんさぁ、はちみつくらい自分で買いに行けってのよ。お母さん疲れてるって言ってんじゃないの。何がドラッグストアなら安いよ、よ。面倒なのよ二軒も行くの。ふざけんじゃないわよ」
ヤバい。母が闇落ちし始めてる。
無雲は、おどけながら母を盛り上げようとしていました。そして、その日の夕ご飯は魚と冷ややっこでいいやね、みたいな話をしていましたら……
「お母さんは焼肉丼が食べたい」
と急にリクエストが。先日の残りの肉を使っての焼肉丼です。無雲は色々考えて、それにオクラと温泉卵を乗せて作ろうと思いました。だから、この日も夕ご飯は無雲が担当しました。母はストレスMAXで家事をさせてはいけない状態です。こういう時は休ませてあげるに限るのです。
母は、前日の過度の空腹と栄養不足による貧血っぽい症状もあったので、無雲は味を濃い目にその日の夕ご飯を作りました。母が『芋がら』(里芋の茎)を買っていいよ、と言ったので、大好きな芋がらのみそ汁を作って、無雲はおやつと夕ご飯で三杯もみそ汁を堪能しました。
母は、焼肉丼を美味しい美味しいと言って掻っ込んでいました。母には秘密ですが、少し米の盛りを多くしていたのですが、ペロッと平らげてましたね。栄養って大切ですね。
夜は、この日から無雲が酒解禁になったので、母にもビールを勧めて二人で呑んでました。おいたんはワクチンを打ったので麦茶です。ノンアルビール飲めばいいのに。
そんなわけで、二日間カクヨムを放り出し、自サイトも放り出し、自分の体力を温存(昼寝)しながら家事をこなしていた次第であります。昨日は午後から掃除もしたんですよね。だから余計疲れて今日は午前中寝ておりました。
主婦って、休みが無いって本当ですよね。入院って食事が不味かったりはするけど、なーんもしなくてもご飯出て来るから楽。掃除もしてくれるし、至れり尽くせり。
まぁ、病気になるのは嫌だから、本来なら温泉旅館でも行って、上げ膳据え膳して欲しいですね(笑)。
こういう時に、助け舟を出せる旦那様かどうかで、妻の機嫌というのは変わってくると思います。うちの父の様に、自分は動かずに「あれが無いこれが無い」というタイプは妻のメンタルを確実に鬼にしていきます。
おいたんは、頼めば色々やってくれる人です。「あれ買ってきてこれ買ってきて」と言えばフットワーク軽く買い物とか行ってきてくれます。掃除も一番面倒な掃除機を担当してくれますし。
ま、これ世代の差ってのもあるよね。団塊世代のおやぢ達は概してうちの父みたいなタイプが多い。
おいたん世代は、団塊世代の失敗を見ているので、それなりに妻に気を遣う。って、おいたんも認めてる。
「俺はあぁはなりたくない。家族に疎まれたくない」
それがおいたんの切実なる想いらしいです。
父の事が嫌いなわけではありません。某サイトに載せたエッセイに書いてありますが、父は『優しいけど思いやりが無い男』なのです。
今も、腕が上がらない無雲の代わりに洗濯物を畳んでいます。
その優しさを、もうちょっと広げて思いやりの心を持ってくれたら、母も救われるのですが……。
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