197.無雲がひとりで外出できないワケ

 ここ最近、一連のおいたん事件のせいで鬱々と過ごしている無雲。皆様から散歩を勧められたし、自分としてもふらっと出掛けて気ままに過ごしたいのですが、実際にはそれは実現出来ていません。


 何故そんな簡単な事が出来ないのか。


 そこには、実は深刻な悩みが隠されていたのです! コメント欄では少し触れていたのですが、今日はこのエッセイにその事情を書こうと思います。


 無雲の家の前には、私有地の空き地があります。以前は家があって老夫婦が住んでいたのですが、色々あって家屋は取り壊され、今は空き地になっています。


 ただの空き地だったら害は無いのですが、その空き地、雑草が鬱蒼と茂っていて、数年前には毛虫が大発生して近隣住民に多大なる迷惑をかけ、住民(うちとか隣人)からの通報を受けた行政が、所有者に警告文を送ってやっと除草が来る、という事態が起きていたいわくつきの土地なのです。


 

 で、二年前くらいにも雑草が余りに酷く、目に余る状態だったので、隣人が市役所に通報し、やっと除草された状態で、それ以降は一切除草は来ていない状況でした。



 で、二週間前。ひとりで買い物に行って、マンガやお菓子を仕入れてルンルンで帰宅した無雲が見つけた一匹の毛虫。無雲はその瞬間、嫌な予感で背筋がゾッといたしました。



 そう、あいつです。数年前大発生した例の毛虫なのです。



 無雲はすぐに父親に家の周辺を見てくれるよう頼み、父も即座に動き、結局数匹を退治しました。



 その日、無雲はすぐ市役所に通報。担当者は、所有者に封書を送るとだけ言っていました。



 が、その三日後、事態は悪化します。母がかなりブチ切れて言うのです。



「毛虫が大発生した!!! 市役所せっつく電話しなさい!!!」



 無雲は再度市役所に連絡を入れました。担当者は、封書は確実に送りますので……と言ってましたが、それ以上の事は出来ないみたいなうやむやした言い方でした。



 して、それから十日が経ちました。



 除草、来ない……。



 毛虫、未だ大発生レベル……。



 無雲は、この世で一番毛虫が嫌いです。まじこの単語を目にするだけでも、うぎゃぁぁぁ!!! ってなるレベル。テレビで毛虫が映し出されようものなら、その後三十分はその番組に対する罵詈雑言を吐き続ける始末。


 なので、無雲は毛虫退治が出来ないので、出かける前と帰宅直前は、誰かに徹底的に退治をしてもらわないと、家を出る事も近付く事も出来ないのです。



 出かける前は、両親かおいたんに一匹残らず退治してもらうのは当たり前状態。帰宅した時も、無雲は家から離れた場所で待っていて、退治が完了すると合図してもらって、そそくさと家に近付く、という毎日なのです。



 無雲は毎日、空き地の所有者に対する罵詈雑言を吐いています。脳内でも土地の所有者に対する罵詈雑言を吐き続けています。もう、無雲の生霊が所有者の所に飛んで行っているのではないか? というレベルで恨んでます。



 ぶっちゃけね、管理できないんだったら土地を所有している資格なんて無いんです。除草なんて、業者に頼むだけで済むじゃないですか。マネーの問題? 知ったこっちゃねぇよ。土地所有するんだったらそのくらいの出費は必要経費なんだよ!! 嫌ならこまめに自分らで草刈りでもなんでもすりゃいいじゃないか。まじで、管理を一切しないで所有権だけ主張する土地所有者は害悪です。



 ちょっと言葉が強くなりました。でも、無雲は本当に怒っているんです。もちろん家族も隣人も滅茶苦茶怒ってます。



 これが、無雲がひとりで外出できない理由ワケなのです。

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