第14話

 どのくらいが経った頃だろうか。

 

 意識が曖昧になってきたとき、ふと頭の上の方から声が聞こえた。

 幻聴かと思ったが、直感でそれが本物の声だとわかり、私は咄嗟に防衛本能を発揮させて飛ぶように起き上がった。

 私の俊敏な動きに驚いたのか、声の主は尻餅をついていた。


 すぐ近くにいたのは、奇妙な格好をした人間だった。

 

 身体にピッタリとくっついたゴツゴツしたスーツは酷く動きづらそうだ。けどそれが身体を守る為だというのはすぐにわかった。

 物理的はもちろん、感染や大気による影響を懸念しているのだろう。ヘルメットのガラス越しに見える顔から男のようだ。


 彼は慌てながら、首元のボタンを押す。するとヘルメットだけが不可視化されて彼の頭部だけが露出されるようになった。男は何か言っているが聞き取れない。


 言語が、違う? 


 私が警戒し、睨み付けていると男は両手を挙げながらゆっくりと立ち上がって何かを話し始める。

 何を言っているかわからないというのは、これほど根源的な恐怖を生むのか。

 同じ人間のようだが、奇妙な点が多すぎる。彼はいったい。

 

 考えを巡らせると、私は目眩が襲ってその場で倒れてしまった。急に動いたせいで意識が追いつかなかったのだろう。全身が痙攣するように動かなくなる。


 ここで意識を失うのは。


 男が何かを言っているのがわかったが抗うことが出来ず、私は目を閉じた。

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