第2話

 そこには光の粉を塗したような星空模様があった。心が吸い込まれそうになって一瞬怖くなり、すぐにその美しさに何もかもを忘れさせた。


 やっと気付いたねと語りかけるように、流れ星が一つ空を駆けた。


「この空を見せたかったんだ」


 父は熱を帯びた口調で言うと、星空を見上げたまま「サフィニア」と私の名を呼んだ。


「僕はね、宇宙にはいろんな生物がいると思ってる。僕たち人間のような生命がいないなんて誰も証明出来ないんだから。僕は子どもの頃からずっと信じているんだ」


 何度も家で聞いた父の熱弁は、この満天の星空の下ではどこか新鮮に感じた。


「だから、サフィニア。これから君には色んなことがあると思うけど、自分が信じられるものを持って欲しい。信じるものがあるということは、きっと君を救うはずだから」


 父はそう言うと、私の頭に手を置いた。その手の温もりを感じながら私は思う。


 私が信じるものは何なのか、まだよくわからない。

 でも父が今日、私をここに連れてきた理由はわかった。私は隣で手を繋ぐ母を見る。母のお腹の中には私の弟が眠っていた。


 私は一つ、大人になる。

 そんな私が思うのは一つだけ、この世界が大好きだということだけだ。

 豊かな自然、輝く夜空、大好きな友達、そして、大切な家族。

 世の中は大好きなもので溢れてる。

 

 私はこの年、十歳になって、お姉ちゃんにもなった。


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