第13話 束の間の昔話
「俺元々、スキルに苦しめられた一人だった」
ミナが座っていた金属の椅子にミナと向かい合う形で座り、昔話を始める。ミナの横ではミナの父であるメルトが神妙な顔つきで座っていた。ちなみに今はミナの周囲を俺の解体スキルの応用で
「俺は七歳のとき、自分の故郷を滅ぼした」
その一言で二人の顔から血の気が引いたのがわかった。時系列に沿って話を進める。
俺が生まれたのはどこにでもある小さな村だった。特に記憶はないが、大事に育てられていたことはなんとなく覚えている。多分幸せだった。でも長くは続かなかった。
悲劇の始まりは俺の誕生日。村人同士仲が良かったためか、はたまた若者が少なかったためか、俺の誕生日を村総出で祝ってくれた。村人たちは皆思い思いに酒を煽り、食を楽しむ。
「誕生日おめでとう、エドモンド」
「あなたが生まれてきてくれて嬉しいわ」
両親が感謝の言葉をそれぞれ伝えてくれる。そのあと二人が両手を広げて、俺が飛び込んでくるのを待ち構える。そして飛び込んだ瞬間両親が消えた。これが俺が初めて『解体スキル』に目覚めた瞬間。俺が初めて『解体スキル』で解体したのは両親だった。
「へ?」
思わず声が漏れる。周りにいた村人も何が何だかわからない。当時三歳の俺は当たり前だが一瞬の悲劇を受け入れることはできなかった。気づけば村全体に響くほどの泣き声とともにスキルが暴走する。暴走範囲は村全てに至り、ひとしきり泣き終わったころには村人はおろか村人が住んでいた痕跡すら見事に解体、という名の消去をしていた。それは現在進行形で拡大していた。
七歳ながらも少しずつ自分のしたことを、今なお仕出かしていることを自分なりにかみ砕いて理解し始めていた。そして理解が深まるほど罪悪感は募っていく。その結果自分なりの答えを見出す。
「村のみんなを消したこの力を自分にぶつければ、俺もみんなと同じところに行けるかな」
気付けば右手は自分を捉えていた。大きく振りかぶって自分に触れようとする。
「それは良くない。前途ある子供の取る選択としては最悪の部類だよ」
気付けば振りかぶった右手首はフードを目深く被る謎の男に掴まれていた。
「な、何するんだよ!」
「おお、まさか自殺を止めただけで怒られるとは。まあとにかく落ち着きなさい。スキル暴走で被害がどんどん拡大しちゃってるから」
周囲を見渡してもよくわからないし、そもそも目の前の奴が誰なのかもわからない。
「てかなんであんたは何ともないんだよ」
「僕は『語り部』だ。登場人物じゃない。それよりその暴走、早く止めるよ」
そういって半ば強引に従わせてくる。
「いいかい?君のその
のちに俺の師匠となるその人物は、俺が自分の『解体』スキルを完璧に制御できるようになるまで親身になってくれた。
「まあ、そんな感じで俺は自分の力を制御できるようになったってわけだ」
なんか無駄な身の上話までしちまったな。まあいいや。
「とにかく。君のスキル暴走を制御するための力添えのためならば、俺は喜んで手を貸そう」
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