第10話 束の間の将来話
アルバニア王国の東端にある町、ヴァライズの冒険者ギルドのギルドマスターであるファングに無理やり連れてこられてから無理やり働かされることになった。
「よし、お前の給料は今日から無しだ」
嘘です。超働きたいです。ハタラクノダイスキ。というわけで次々と送り込まれてくる魔物の死体たちを次々に解体する。ちなみに俺が復帰するまでの間は臨時で複数人の解体職人たちを雇ったらしい。そのまま雇い続ければ俺が楽できるのにとファングに直談判してみた。
「お前さん一人雇うのとお前さん以外に複数人雇うのとで仕事量が同じならお前さん一人雇うだけで十分だろ。経費削減にもなるし。てかこの話何回目だよ」
ホントおっさんになると頑固になるから困る。俺もおっさんだけど。
俺の訴えも全く通らず、与えられた仕事をこなした復帰初日の勤務終了後、俺はファングにギルドマスターの部屋へと呼び出されていた。
「お前さんにここ、ヴァライズを治める領主が会いたがっている」
「そんなこったろうと思ったよ。もちろん会わないけど」
脊髄反射のように一瞬で断る。しかしファングも大方その反応を予想していたのか特別驚く様子はない。
「だろうと思ったよ。わかった。領主には俺のほうからその旨を伝えておく。だがわかってるだろ。最低でも一度は会ってしっかりと意思表示をするべき相手がいるのは」
「…王家、いや正確には王家の取り巻きか」
「ああ。今の代の王の側近たちは右腕である宰相以外にはお前さんとこの国との確執について知らない。ここらで釘を刺しておかないと、あの時のようなことが再び起きかねないぞ」
「わかってる。そのへんはあいつのほうからうまいことやってくれるだろう」
そういって俺は部屋を出る。そんな俺の背中を見るファングの顔が心なしか暗くなっていた。
「安心しろよ。今んとこ、ここから出てく予定はない。そして俺がここにいる以上、俺なりのやり方でこの町くらいは守ってやるよ。町一つ守ることなんて、あのころに比べりゃ楽なもんだ」
その言葉を残し、俺はドアを閉める。その場に一人残るファングは嬉しさと悔しさがないまぜになった顔で独り呟く。
「全く。全部お見通しかよ。やっぱあいつにはいつまでたっても敵わねーな。これはちょっと一泡吹かせてやりてーな」
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