第7話 他愛ない説教

遠くの方で一筋の黒い柱が見える。

冒険者たちやゴブリンたち、双方が同じ方向を見る。

その視線の先には一体の龍。


「あいつ、わざわざ呼びやがったのか。大勢の前であんなん披露したらその後どうなるかぐらいわかるだろうに」


額に手を当てながら思わずそう呟く。

それを隣で聞いていたサブギルマスのサブリナが冷静に分析しつつ答える。


「ギルマス、あの人がそんなことに思い至らないとは考えにくいと私は思います。。つまり、そこまでしてを隠したいということでしょう」


そんなことは俺だって分かっている。

だがなぁ、


「はぁ、あいつに頼めばこういう事態になりうることも想定しておくべきだったな」


「さすがにこの責任はあの人に全てとってもらいましょう。というかおそらくその腹づもりでしょうし」


「だな。仮にそうじゃなかったとしてもぜってぇ責任取らせる」


そう覚悟を決めた。






やぁどうも。こちらエドモンド。どこにでもいる普通のおっさんだ。

おっさんは今どんな状きょイダダダダダ


「何を一人でブツブツ言っておるのだーーー!!!」


「ごめんごめん、反省してるから!だからガブガブしないでぇー!!」


こんな感じで再会の挨拶(?)をしたところで、冥天のほうが話を振る。


「ところで、なぜ儂を呼んだのじゃ?貴様のことだからどうせ力を貸してくれとかそんなところか?」


「そんなところ。ほら、あそこで贅肉……じゃなかったゴブリンエンペラーが待ってるんだよ」


「お主なら儂の手を借りなくとも消し飛ばせるじゃろう?」


「いやー、腕が鈍っちゃって、思ったより時間がかかりそうなんで、じゃあ被害出る前にちゃっちゃと終わらせようかってことで力借りようと思ってさ」


すると、プルプルと震えだした。

進化前の演出か何かかな?


「そんなわけあるかぁーー!!!お主ともあろうものがたかだかゴブリンの長を潰せなくなるほど鈍ったじゃとう!?そこに直れぇぃ!!食い千切ってやる!!!」


心の声を聞かれたうえに怒られただとぅ!?!?


「て、ちょっ、待って、噛みつこうとしないで!!」


「こらっ!避けるでないわ!!こんなときばかり無駄な身体能力を発揮しおって!!!」


ここまで来ると誰が敵だかわからなくなってきた。


こうなったとき、手持ち無沙汰になるのはゴブリンエンペラーである。

見せられているほうからしたら勝手な一人芝居を見せられているだけだ。

いわばこれは挑発行為に等しい。


「ニンゲンノクセニ、オレヲムシスルナアァ!!」


そんな声とともに俺が左側からくる冥天の攻撃を右へと避けた先にハンマーが飛んでくる。


「ちょっ、これじゃさっきより状況が悪化してるじゃねーか!」


そう言いつつハンマーを銃弾で解体。それによって攻撃を無力化。


「お主があまりに腐っておるからここで鍛えてやっておるのじゃ。ありがたく思え!」


「絶対今じゃねーよ!修行ならあとにしてくれ。いくらでも付き合ってやるから!!」


そう言った途端、冥天からの攻撃がピタッと止まった。それと同時に冷や汗が流れる。


「よし!久々に霊峰ミッドガルドで鍛え直してやろう!その性根ごとな!!そのために今だけは力を貸してやる」


やっちまったー!!!!問題を先送りして首絞めちゃったーーー!!!!


だが、こういってしまった以上もうそれに従うしかない。


「わかった。だから力貸してくれ、冥天。『身の装』でいく」


そう冥天にお願いし、その場で垂直に高く跳ぶ。


「あいわかった」


そう言葉を返すと俺を中心として、球体状にとぐろを巻く。

するとそのまま球状に圧縮され、次の瞬間にはその球体が割れると、漆黒のローブを身に纏う一人の男がいた。

……まぁ俺なんだけどね。






ちょっと文が長くなった上に、vsゴブリンエンペラー編がまだ終わりませんでした。次回で終わらせる予定です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る