第6話 他愛ない一対一
「さぁ、殺り合おうか。お山の大将」
口角を吊り上げて目の前の駄肉…じゃなかったゴブリンエンペラーに声をかける。俺の倍以上の体長で、真っ赤な皮膚のボテ腹、がちゃ歯、半目を持ったゴブリンエンペラー。久々のエモノだからか、若気の至りで暴れ回っていたときのことを思い出して、口調もついつい戻ってしまう。
「ニンゲン、ミナ、オレタチノ、エサ。ゼンブ、クライツクス」
》》ズガガァン《《
無価値な台詞を吐くしか能がない駄声製造機が何やらほざいているので、両手の二丁を頭に向けて銃弾を放つ。
「ユルサ、ナイ。ニンゲン、ユルサナイ」
頭に直撃を受けたにも関わらず、すぐに再生を始める駄肉の一言とともに右手の鋼鉄ハンマーが振り下ろされた。
一方その頃、
「おいおめぇらぁ!!もっと気張りやがれぇー!!」
そんな言葉でゴブリンたちと戦う冒険者たちの尻叩き、もとい鼓舞をしているのは、ギルドマスターのファング。今回、彼は参戦していない。理由は1つ、冒険者たちに少しでも戦闘経験を積ませるため。いざというときに強かになれなければギルドマスターなどやっていられないのだ。
「本当ならあいつがギルマスをやるべきなのだろうがなぁ」
そう呟きつつ思い浮かべるのは覇気がまるで感じられない一人のおっさんの顔。
「はぁ、あの方は権力なんてものに興味はないでしょう。ただの解体職人としてギルドに雇うだけでも一苦労だったんですから」
ギルマスの愚痴に対してサブマスはため息を吐きつつ冷静に答える。
「それに、仮にあの人がギルマスになったとしても真面目に仕事する姿が想像できません」
「違いない」
「はぁ、しぶてぇな」
そう言いたくなるのも仕方ないだろう。
頭を吹き飛ばしてもすぐに再生、腱を切ってもすぐに立ち上がり、関節を砕いてもすぐに復活。嫌気が差してくる。
「はぁ、久しぶりにあいつを使うか」
そう言って左手の銃鉈をしまい、右腕を大きく伸ばして銃口を地面へと向ける。
「久しぶりの出番だぜ、冥天」
すると着弾地点から漆黒に染まる光の柱が一本、天へと昇る。
招来したのはゴブリンエンペラーに勝るとも劣らない体格を誇る漆黒の和龍。
「久しぶりだな、冥天」
そう呼びかけるとこちらへと思いっきり顔を近づけて
「久しぶりだな、ではないわぁーーー!!!!」
思いっきりかぶりつかれた。
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