第4話 他愛ない決起

遡ることギルマスがエドモンドを呼びに行く前……



「た、大変だぁぁーーー!!!」


焦った様子で冒険者ギルドへと入ってくる一人の冒険者。


たまたま近くにいた冒険者が事情を聞くために話しかける。すると、


「ゴブリンが、はぁはぁ、魔窟の森で、はぁはぁはぁ、大量に現れて、俺の…俺の仲間が………うあぁぁぁぁぁ!!!」


この冒険者、もといその仲間たちはランクCである。本来ならばゴブリンごときにやられるようなものたちではない。

となると、なんらかの異常事態が発生している。


このことはすぐにギルドマスターへと知らされた。辺境であるために強い魔物が多いからこそ優れた冒険者であるランクAやBが多く存在する。そんな彼らの中から状況把握のための捜査隊がその場で組織、派遣された。

捜査隊が調べた結果によると、どうやらゴブリンエンペラーが存在するらしい。


「これは、あいつに依頼する必要がありそうだ」


そう言って解体部屋へと向かうギルドマスターを横目に普段は彼を補佐する立場の女性サブギルドマスター、サブリナが冒険者たちをまとめる。


「皆さん!緊急依頼です!!有資格者はランクC以上!!参加するものは東門の前に集まるように!!」



それからすぐに、アルバニア王国の東端にある町、ヴァライズの東の門の前では多くの冒険者が集まっていた。


「もうすぐゴブリンエンペラーの群れが攻めてくる。中にはゴブリンの上位種も間違いなく存在する。そういった強力な個体はランクA、Bの冒険者が中心となって討伐しろ!!ゴブリンエンペラー自体は解体バラシ屋に討伐依頼を出したから問題ない!!それ以外の奴等をとにかく狩りまくれ!!!」


そう言ってお立ち台の上で冒険者たちを煽るのはギルドマスターのファング。


解体バラシ屋って、あの解体バラシ屋か?」

「たしか引退したはずじゃ…」

「そもそも今どこにいるんだよ」


そんなひそひそ話が聞こえてくる。

そう、解体バラシ屋はもはや過去の人なのだ。何せ引退したのは十年前、今現役でバリバリ活躍する冒険者たちは解体屋の戦う姿どころかどんな見た目なのかも知らない。その実力がいまいちわからないのも、今どこで何しているのかも知らないのは仕方ないと言えるだろう。


「ちなみにお前らはよーく知っているやつだぞ。ほれ。」


そういって彼の右横へと引っ張り出してきたのは冴えないおっさん、エドモンドだった。



「「「「「えぇぇぇぇぇ!?!?!?」」」」」


そこに響き渡ったのは冒険者たちの驚きの声の多重奏だった。

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