第3話 他愛ない依頼

「さぁ、お前さんに『解体バラシ屋』としての依頼だ」


「……俺は冒険者稼業は引退した身ですが?」


「本来ならまだまだ現役で働けるだろうに。まぁそんなことより、ゴブリンエンペラーが誕生した」


その一言に思わず瞳孔が開く。ゴブリンエンペラーとは、ゴブリンと呼ばれる小鬼の魔物の頂点に君臨する存在。ゴブリンはその雑食性と節操のなさから忌避されている。繁殖力が高く、成長も早い。見つけたら殲滅をするように冒険者ギルドも推奨している。

ゴブリンエンペラーが居るとなると、おそらく万単位でゴブリンが居ると推測される。しかし……


「エンペラーなら討伐できる冒険者もいるだろう?なんならあんたが狩ってきてもいいだろうし」


「今はランクSの冒険者は一人もいない。俺は正直鈍っていてとても倒せるとは思えん。」


このゴリ「おい、今失礼なこと「考えてません!」ギルマスは元ランクSの冒険者で『制裁』の異名で世に知られていた。いくら現役を退いたといっても問題はないと思うがな。


ちなみに冒険者はG~Sまでランク付けされており、ランクSが最高ランクとされる。逆にランクGは駆け出しと見なされ、彼らが受けられる依頼は雑用ばかりとなる。


「いくら鈍っていてもギルマスならエンペラーくらいどうとでもなるだろう?」


「本当にどうしようもないならまだしも、組織の長が意気揚々と前線に出るわけにはいかないだろ」


……それは否定できないかもな。


「とにかく!頼んだぞ。この依頼を終えたら明日一日休みにしてやる」


「よし、受けよう」


即決だった。明日の自由のために、俺はゴブリンエンペラーを踏み台にする。


「依頼は受けてやるが、俺が殺るのはエンペラーだけだぞ」


「わかった、それでいい。ちなみにゴブリンエンペラーたちを討伐するのは五分後だ。準備しておけよ」


……すぐじゃねーか!そう詰め寄ろうとしたがしれっと逃げやがった。


「はぁ、仕方ない。殺るか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る