第18話
この世界のテント事情は予想以上に凄かった。
組み立ても簡単で、ポール一本とあとは地面に打ち付ける大きな釘? ペグと言うらしいんだけど、それで固定するだけ。
形は三角錐とでもいうのかな。
ひとり用は100ルブ。三人用が220ルブ。
二人用ってのはなかったので、ひとり用と三人用を購入した。
他にもランタンや寝袋、野外用の簡易テーブルだの調理器具セットだのいろいろ買って、それでも使ったお金が500ルブ程度だ。
買った物は俺のリュックに入れ、それから町をぶらぶら。
建物の高さはせいぜい三階建てほどしかなく、だけど統一感のあるデザインで見ていて綺麗な街並みだと思えた。
ある通りは店が立ち並び、別の通りは屋台がぎっしり。
見てて楽しいのは屋台かな。主に食べ物屋。
だけどリシェルとシェリルは装飾品の並ぶ屋台や洋服店がいいようだ。
「お金も随分余ったし、着替えをいくつか買って帰るか?」
「「え? いいの?」ですか?」
声をハモらせる二人の目はキラッキラで、ついこっちの顔が緩んでしまう。
まるで子犬のようだ。
とはいえ、言ってから少しだけ後悔することになった。
この世界の店は大きくはなく、服や下着を取り扱う店は男女別に存在。
そうと知らず入っていくと、店内にいた従業員、他の客が一斉に振り向いて注目の的に。
理由をしって慌てて外に出るが、出入りする客にはくすくすと笑われる始末だった。
そして長い。
店の壁に寄りかかって待つこと1時間。
まだ終わらない。
あんまり暇だったから、空気操作のレベル上げに励んだ。
効果範囲、これを自在に操作できないものかと思って。
いや、広くは出来ないだろうけど、狭くもできないのかなぁと。
単純にレベル1で1メートル範囲が広がるなら、レベルカンストすると99メートル四方になる。
ピンポイントで狙いたい場合、これじゃあ無理だ。
スキルを唱えブルーの立方体が現れる。
この立方体のキューブみたいなのを、小さく出来れば。こう、スマホ画面をピンチするよう……に……あれぇ?
視界に浮かぶブルーのキューブ。
その端と端にそれぞれ親指と中指を合わせすすーっと縮めると、キューブがそれに合わせて変形した。
できるじゃん。
それからいろいろ試してみたけど、範囲を示すキューブの形は四角形であれば正方形でも長方形にでもできるようだ。
ただ最大範囲である『3メートル』より広げることはできない。
面積ではなく、縦横高さの長さで判定されているみたいだ。
こっちは1メートル短くしたから、あっちを伸ばすことができる──なんてこともない。
一辺が最大3メートル。
あと指でピンチするのも、特に片手でなくてもよかった。
左右の手を使ってもいい。
片手しか適用されなかったら、最大範囲数十メートルでもう指が届かなくなってるところだっただろうな。
そんな実験をしている間にもスキルのレベルがあがり、5になった。
「お待たせしました空さん」
「お待たせ空。さ、次はあなたの服を選びましょう」
「ふふ。どんなお洋服があるのかしらねぇ」
店から出てきたリシェルとシェリル。
二人は大きな風呂敷を大事そうに抱えてやってきた。
リシェルとシェリルの服選びに何時間かかったんだろう。
俺は服を上下で二着とパンツを数枚。あとマントも買ってみた。カッコいい。
店に入ってから出るまで、だいたい15分。
入る前から外は暗く、さっさと買い物を済ませて宿を探した。
手ごろな値段の宿を見つけ部屋へと入った頃には、お腹が悲鳴を上げていた。
「二人ともー、ご飯食べに下に行こうよ」
「「は~い」」
部屋を二つ、隣り合わせになるようにして借りてある。
隣の部屋に行って二人を呼ぶと、ほどなくしてドアが開いた。
「ねぇねぇ、どう?」
「に、似合いますでしょうか?」
着替えてる!?
飯食って風呂入って寝るだけだってのに、着替えてるよこの二人!?
さっきまで着ていたのは、若草色のワンピースに腰紐をきゅっと結んだもの。その上にベストを羽織った感じだった。
それが今はガラっと印象の違う、まるでファンタジー系美少女ゲームに登場するようなキャラ衣装だ。
リシェルは白と濃いめのピンクを基調とした、ヒラヒラとした服。天女の羽衣みたいな半透明のリボンが、動くたびに揺れる。
シェリルは青と黒。動きやすさを考えてなのか、それともサービスなのか。とにかくスカート丈が短い。
「ねぇ?」
「変、ですか?」
ぐいっと二人が迫って来る。
そ、そんな顔で攻められると、攻略していいですかって尋ねたくなるじゃん!
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