280 ほこらの真実
それからしばらく経って、飛竜が飛んできて上空を旋回を開始した。
「ついてこいってことだな」
俺はピイを肩に乗せたまま、ヒッポリアスの背中に乗った。
すると、飛竜は移動を始める。
「ヒッポリアス、飛竜を追いかけるぞ」
「きゅおきゅお!」
ヒッポリアスは地上を駆けていく。
「もう、秋だなぁ」
『きいろい!』
「そうだな、木々の葉っぱが黄色くなり始めたな」
『びょうき?』
「秋になると葉っぱの色が黄色くなったり赤くなったりする木があるんだ」
『そっかー』
「ヒッポリアス、これからどんどん寒くなるぞ」
「きゅお!」
五分ほど走ると、飛竜が地上へと降りてくる。
飛竜の背にはジゼラとイジェが乗っていた。
うっそうと茂る木々に隠される形で、ほこらがあった。
ほこらは石で作られており、中には地下に続く階段がある。
「悪魔たちはここを根城にしいてたわけか」
「そう、この辺り見て。壊されているでしょう?」
「そうだな、巨人型が入るためか?」
「多分ね」
ほこらの入り口は壊されていた。
元々、俺たちが人一人でギリギリの大きさの入り口だったらしいが、今は破壊されて広げられている。
飛竜が中に入るのは難しいが、メエメエなら入れそうだ。
「テオさん、イジェ、ほこらの中に案内するよ。危険は無いから安心して」
そして、ジゼラは飛竜に言う。
「飛竜、ごめんね。ほこらが小さいから入れないんだ」
「がう」
「中は広いから、もっと壊せば入れるけど、壊すわけにはいかないから」
「があう」
飛竜は「気にするな。それより気をつけるのだぞ」と言ってくれている。
話を聞いていたヒッポリアスが小さくなって、俺の足に前足を掛けた。
中に一緒に連れて行って欲しいらしい。
「わかっているよ、ヒッポリアス、ピイ。一緒に行こうな」
「きゅお」「ぴい」
俺はヒッポリアスを抱き上げた。
「じゃあ、ついてきてね」
ジゼラはほこらの中へと進んでいく。
「岩山に横穴を掘って、その前にほこらを作ったのかな?」
「そうかも。横穴というか、地下への階段の方がながいのだけど」
入り口こそ狭いが、崖に掘った横穴も階段も充分に広い。
入り口さえ無理に通れば、ボアボアも通れそうだ。
しばらく、階段を降りて地中へと降りていく。
そこにたどり着くと、扉があった。
「この中のものを、イジェに見て欲しくて」
「ナニがアルの?」
「言葉では説明が難しいんだ」
そういって、ジゼラは扉を開ける。
「おお?」
中は飛竜が入っても充分余裕があるぐらい広い部屋になっていた。
奥にはなにやら祭壇のようなものが有り、手前には生活の痕跡がある。
「この肉の食べ残しは、悪魔のものか?」
「たぶんそう。しばらくの間、ここで悪魔は暮らしていたみたい」
「奥にある祭壇みたいなものは、悪魔のものか?」
「それは違う。だけど、悪魔はあの祭壇を手に入れたかったみたいだけど」
「どういうことだ?」
ジゼラは答えずに、イジェの手を引いて祭壇の前まで移動する。
「ここにきて、これが気になったから手を触れたんだ。そしたら……」
ジゼラは祭壇に手を触れる。
すると祭壇の上に絵が浮かび上がった。
ジゼラとそっくりな、だが、ジゼラより大人の写実的な絵だ。
しかもその絵が動いている。
「どういう仕組み――」「きゅお!」
「しっ、静かに」
ジゼラが真剣な顔で言ったので、俺とヒッポリアスは口を閉じる。
『ソナタはワガイチゾクのモノデハナイヨウデスネ。ココはアナタのヤクニタテマセン』
そういって、その絵は消えた。
「イジェ。知っている人?」
「シラナイヒト。デモ、オナジイチゾクだとオモウ」
「やっぱりそっか。何度触れても、同じ絵が出てきて、同じことを話すんだ。会話はできなくて一方的に話す感じ」
そして、ジゼラはイジェをみた。
「我が一族の者でないならば、役に立たないなら、イジェの役には立つんじゃない?」
「ソウかも?」
「イジェ、触れてみて」
「ワカッタ」
イジェが祭壇に手を触れる。
すると、再び同じ絵が現われた。
「オサナきモノよ。ナニユエ、ソナタがココにキタ? オトナのメをアザムイタノカ? ソレトモ、オオクのオトナがシヌナド、イチゾクのソンボウのキキゆえか?」
「オトナはミナシニマシタ!」
イジェの言葉が聞こえているのか、その絵は大きく頷いた。
「コノヘヤニイルスベテノモノよ。サイダンにテヲフレルガヨイ」
俺とジゼラは顔を見合わせた。
だが、言うとおりにする方が良かろう。
俺とジゼラ、ピイとヒッポリアスは祭壇に手を触れる。
「イチゾクのモノデハナイガ、アクマデモナイか。オサナキモノよ。ナカマナノカ?」
「ハイ!」
「イチゾクソンボウのキキならば、オサナキモノよ。ソナタはココがナニかシラヌデアロウ」
そういって、絵は説明を始めた。
絵は名も無き元王を名乗った。
悪魔に滅ぼされた亡国の王であり、イジェたちの一族、その初代村長とのことだ。
「コノサイダンは、オウコクのヒホウ。ネガッタヒトにスキルをサズケル、マドウグだ」
それを聞いて、俺とジゼラは無言で顔を見合わせた。
誰にスキルが授けられるかは、神のみぞ知ること。
それを願って授けることができるとなると、魔道具というより神具である。
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