259 ボアボアの家の暖炉
俺とケリーが保護者たちに、預かっていた間の子供たちの様子を話していると、
「がう」
「ゎぅ!」「ぁぅ」「ゎぅ」
飛竜に子魔狼たちがじゃれつきにいっていた。
飛竜は子魔狼たちに比べて体がずっと大きいので、撫でたりしにくいのだろう。
じゃれつかれるままになっている。
少し鼻の先で、匂いを嗅ぐ程度だ。
「飛竜、すまないな」
俺が謝ると、
「すまない!」
フィオも、子魔狼たちの姉としてちょこんと頭を下げる。
「がう~」
飛竜は気にするなと言ってくれる。
飛竜の子供たちはこんなものでは無かったと、懐かしそうに言う。
「ひりゅうのこども、げんき?」
この場合の「げんき?」は、いま壮健に過ごしているのかという問いではなく、赤ちゃんの頃暴れまくっていたのかという問いだ。
「が~う」
「そかー」
飛竜が、いかに竜の子供は元気いっぱいかを教えてくれる。
駆け回って、石と金属でできた頑丈な住処を壊したりすることは日常らしい。
止めようとして飛竜自身も怪我をすることもあったと言う。
「ひりゅが? すごい」
飛竜の鱗は硬い。
フル装備の冒険者の渾身の一撃でも、そう簡単には傷が付かないほどだ。
「がう~」
「あかちゃんでもりゅうかー」
フィオが感心したようにうんうん頷いている。
「がう~」
赤ちゃん竜は体力が有り余っているので落ち着けと言っても、言うことを聞かないらしい。
一頭ならまだしも、複数いると、もう手に負えない。
「……がう」
大変だといいながら、子供たちについて話す飛竜は幸せそうだった。
「そかー」
フィオは、子魔狼たちを鼻の先でツンツンしている飛竜のことを撫でた。
俺もしばらく陸ザメたちを撫でた後、魔法の鞄から暖炉を取り出した。
「べむ?」「べむべむ?」
陸ザメたちは一斉に暖炉を取り囲む。
「みんな聞いてくれ。これは暖炉といって――」
ボアボアと陸ザメたちに暖炉の説明を丁寧にする。
「ぶい~」「べむ」
「魔力の注ぎ方か。そうだな。あとで一回やってみよう」
「ぶぶい」「べむべむ!」
今、暖炉を使ってやるのが一番わかりやすい。
だが、まだ冬ではない。
それなのに、ボアボアの家で暖炉を稼働させたら、寝苦しい夜が来てしまう。
「あとで、そうだな。中庭で赤い石の使い方を練習しようか」
「ぶい」「べむう!」「べむべむ」
そして、俺はボアボア、飛竜、陸ザメたちに見守られながら、暖炉と柵を設置する。
「柵は子供たちとか、あとは、大人も寝返りを打ったときとかにぶつからないようにするためのものかな」
「ぶい!」「べむ!」
「とはいえ、陸ザメはともかく、ボアボアと飛竜の体重は、柵では支えきれないから注意してくれ」
「ぶぶい!」「がお!」
もう一度、注意点を説明した後、俺はボアボアの家の風呂場に向かう。
ボアボアの家と風呂場は隣接している。
扉をあければ、そこはもうお風呂場なのだ。
扉を開けると、もあっと暖かい湯気が流れてくる。
「ボアボアの家とヤギたちの家はお風呂場があるから、暖炉が無くても冬もあまり寒くないかもな」
「そうだね。ピイの臣下スライムがカビを食べてくれるから安心だし」
それどころか臣下スライムやピイは湿気も適度に調節してくれるのだ。
本当にスライムたちは有能である。
俺たちは風呂場を通過して、ヤギたちの家に入る。
俺とケリー、フィオ、それに子魔狼たちが付いてきた。
ボエボエとベムベムは保護者と話しているので、別行動だ。
ヤギたちの家に入ると、
「ほっほう!」
ストラスが止まり木から降りてきた。
「暖炉の設置にきたよ」
「ほう!」
続々とフクロウたちが止まり木から降りてくる。
あっというまに囲まれた。
だが、ヤギたちとカヤネズミたちがいない。
「ヤギたちとカヤネズミたちは?」
「ほっほう」
「そうか、ご飯か」
「ヤギは常にもぐもぐしているからなぁ。旧大陸のヤギはそうだったが、新大陸のヤギもそうなのだろう」
ケリーは素早くメモをしていた。
どんな小さな気づきも逃さないという強い意志を感じる。
「じゃあ、ちょっとヤギを呼んでくるよ」
「ほっほう!」
俺はフクロウたちを置いて、家の外に向かう。
「よーしよしよし」
「ほっほほう」
フィオがフクロウたちを撫でまくり、
「ぁぅぁぅ!」
子魔狼たちがフクロウたちにじゃれついている。
俺は外に出て、ヤギたちを探す。
ヤギたちは家から少し離れたところで、雑草をむしゃむしゃしていた。
「ヤギたち!」
「めえ!」「めぇぇぇ~」「ちゅちゅ」
カヤネズミたちを背に乗せたヤギたちがが走ってくる
「暖炉を設置するから見ていて欲しいんだが……メエメエはどうした?」
ヤギたちのリーダー、メエメエの姿が見えない。
「めえ~」
まだ戻ってきていないという。
メエメエはジゼラと一緒に赤ちゃんヤギを迎えに行ったのだ。
「子ヤギは随分と遠くにいたのかな」
「めええ~?」
そんなことはないんだけどとヤギたちは言って首をかしげていた。
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