252 イジェの村の暖炉
俺とヒッポリアスが椅子に座っていると、
「ぴい~」
俺の肩から、ピイが机の上に飛び降りた。
「どうした? ピイ」
「きゅお?」
俺の隣の椅子の座面にお尻を乗せて、背もたれに背中を預けているヒッポリスが首をかしげる。
ヒッポリアスが人みたいな体勢で座るのは無理がある。
後ろ足はピンと伸ばし、前足を机の上に乗せて、体重を支えていた。
「ヒッポリアス……」
「きゅお?」
ヒッポリアスは楽に座りたいのではなく、俺の真似がしたいのかもしれない。
「なんでもない。それで、ピイはどうした?」
『そうじする?』
「掃除か、少し待ってくれ」
俺は大きな声で家のどこかにいるイジェに尋ねる。
「イジェ、ピイが掃除してくれるみたいなんだが、構わないか?」
もしかしたら、掃除することで、思い出まで消えてしまうと、イジェが思わないか心配したのだ。
「アリガトー。タスカルー」
少し離れたところから、イジェの声が聞こえた。
「ぴい~」
その返事をきいて、ピイが掃除を開始する。
平べったくなり、高速で動きはじめた。
ピイは自分の体が触れた汚れを全て食べているのだ。
カビや虫の卵なども食べていく。
「相変わらず凄いな」
「ぴい!」
『きれいになってる! きゅおー』
俺の真似をして座るのに疲れたのか、ヒッポリアスは俺のひざの上に移動した。
そんなヒッポリアスを抱っこする。
「ワッキレイ!」
戻ってきたイジェも驚いている。
「ぴい~」
「アリガト、ピイ」
「ぴい~~」
お礼を言われて、ピイは嬉しそうだった。
机の上に戻ってきたピイのことを撫でてから、イジェは机の上に
「テオさん、コレがダンロ」
といって、金属製の箱のような物を置いた。
「これが、イジェたちの暖炉か」
「ソウ!」
「やっぱり、俺たちの暖炉とは全然違うな」
「ウン」
イジェの村の暖炉は縦横高さが二分の一メトルの立方体だ。
立方体の一面は、細い金属が縦に並んでいる。
目の粗い檻のような感じだ。
そして、背面の上部に耳のように二つ穴の開いた金属が飛び出している。
きっと、その部分に釘を打って、壁に固定するのだろう。
檻は開閉が可能になっている。
「ヒバシで、オリをアケテ、アカイイシをダシイレする」
「ヒバシってなんだ?」
「コレ」
イジェは魔法の鞄からヒバシを取りだした。
しっかりとした金属で作られた二本の棒だ。
「コウスル」
イジェはヒバシを使って器用に留め金を外して檻を開けた。
「アカイイシはコウヤッテイレル」
実際に、ヒバシで掴んだ赤い石を暖炉の中央に入れる。
「赤い石の頂点にあった輪っかは、そうやって使うのか」
「ソウ」
イジェは正四面体の赤い石の上部の頂点にある小さな輪に金属の棒を差し込んでいた。
その輪があることで、金属の棒で簡単に扱えるようになっているようだ。
「赤い石は二個使うんだよな」
「ソウ。アサとユウガタにマリョクをコメテ、コウカンする。ジッサイにミセルね」
「きゅお!」
イジェは赤い石を取り出すと、
「マズアサ、アカイイシにマリョクをコメテ、ダンロのナカにおく」
「ふむふむ」「きゅおきゅお」
ヒッポリアスが目を輝かせて説明を聞いている。
ヒッポリアスはヒバシを使えないと思うのだが、気にしていないようだ。
「ユウガタ、マリョクヲコメテ、モウイッコ、オク」
イジェは二個目の赤い石を暖炉の中に置いた。
二個の赤い石は、少し離して、横に並べて置くらしい。
「ふむふむ」「きゅおきゅお」
「ツギのヒのアサ。キノウのアサにマリョクをコメタアカイイシがツメタクなっているから、トリダス」
イジェは最初に暖炉に入れた赤い石を取り出した。
「ソシテ、マリョクをコメテモドス」
もう一度、赤い石を暖炉の中に入れる。
「なるほど、そうやって一基の暖炉に二個の赤い石で回すのか」
「そう」
「取り出したとき、隣の赤い石は熱いだろう?」
「ウン」
「取り出した赤い石は熱くないのか?」
「アツクナイヨ」
「そうなのか。それなら大丈夫か」
「ウン。サメタアカイイシ、アカクなってるからマチガエナイヨ」
「なるほど。それは便利だ。あとで皆にも説明してやってくれ」
「マカセテ!」
実際の暖炉の使い方はわかった。
次は暖炉の構造を調べなければならない。
檻のようになっている部分と天井以外の内側は鏡のようにキラキラしている。
「天井部分は……キラキラしていないんだな」
「ウエホウコウもアッタメルカラ」
「なるほど。床部分は?」
「イエのユカがモエナイように」
「ほほう」
赤い石は全方位に熱を輻射する。
下に向かう輻射熱を防がなければ、建物の床が燃えてしまうと言うことだろう。
「檻部分の反対側鏡側を、壁にくっつけるわけだな」
「ソウ」
「なるほど。構造はわかった」
立方体の内側六面の内、正面と上面を除く四面を鏡のようにするのだ。
それで熱を前方へ輻射させる。
「側面の鏡の角度も計算されているんだよな」
「ウン、タブンソウ」
側面の角度は少し斜めになっており、より前方に熱を輻射しやすいようになっていた。
「材質を調べたいな、。鑑定スキルを使っていいか?」
「モチロン」
「ありがとう」
イジェから了解をもらったので、暖炉に鑑定スキルをかけることにした。
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